第223話 内緒の話
今日はマチャマチャ島で過ごす最終日だ
最終日は街で自由行動になっており
自由に食事をしたり買い物をする
私達は班の5人で行動最終日の街の散策をする
「ねぇ!見て!マチャマチャ島名物のパーチィ草の苗が売ってるわよ!」
と私が言う
「あの独特の匂いがする草ですか?」
とミメットが言う
「これを買って帰れば育てて食べることが出来るわよ!」
「パーチィ草そんなに気に入ったんですか?」
「美味しかったわよ!」
「たぶん人類の半数以上は好きじゃないと思いますけど。」
「あの癖の強さがいいのに。人類の半数以上は損な味覚してるわね。」
「この草を買って帰るのはマナ様だけですよ。」
「ほ…他にもなんか知らない薬草があるわ!これはミケお爺ちゃん絶対喜ぶわよ!!」
「そうでしょうか…?最強なら魔術師様は魔法にしか興味がないと聞きましたが…薬草が好きなんですか?」
「家庭菜園が趣味なのよ。」
「へぇ。意外ですね。」
「街に買い物に行くのが面倒くさいから家庭菜園を始めて自給自足して生きてきたらしいわよ。ますます魔塔から外に出なくなって引き篭もり生活に拍車がかかったとか。」
「なんだかミステリアスでかっこいいですね。」
「ただの偏屈なじじいだけどね。」
私は気に入った苗10個も買う
「マナ様これずっと持ち歩くつもりですか?」
「無理にきまってるじゃん。」
「じゃあどうするんですか?」
「レイ〜。なんとかして〜。」
私は護衛騎士のレイを呼び出して購入した苗を全て渡す
レイは苗を受け取りすぐにどこかにまた隠れてしまった
「じゃあ行こうか。」
「マナ様ってレイ様に対しては結構扱い雑ですね…。」
私達は別のお店へと移動する
「マナ!この店に入ろう!!」
とクリスが言う
「ジュエリーショップ?」
「俺がマナにプレゼントしたい!」
「えぇ…いらない…」
「何故!?俺は知ってるんだぞ!!その毎日つけている髪飾りはニックがプレゼントしたものだって!」
「そうだよ。可愛いでしょう?」
「可愛いけれどずるいよ!俺だってマナにプレゼントした物を身につけて欲しいよ!」
「そんなこと言ったって校則でジュエリーは禁止されているわよ?毎日つけられないわよ。」
「俺は副会長だ。そんな古い校則変えてやればいいのさ。」
「却下。それに私はジュエリーに興味ないから。嫌だ。」
「じゃあ何が欲しいものはないのか?」
「うーん…」
私は街を歩いて何か目ぼしいものがあるか探す
そして1つ気に入ったものがあったので
「じゃあこれにする。」
とクリスに言う
「え…これ?」
私が選んだのはマチャマチャ島で祀られている奇抜な姿をした守り神の置物だった
「うん。これが欲しい。」
「これが欲しい人いるんだね。」
「守り神に失礼なこと言わないでよ。このブサかわいいシルエットがいいんじゃない。」
「好きな人に贈るプレゼントじゃないと思うけど。」
「どうして?」
「あまりにもムードがないと言うか…」
「先見の明がないわね。クリス。」
「この置物になんの未来が見えるんだい?マナは。」
「置物はいいわよ。半永久的に残る物だからね。お婆ちゃんになっても思い出すのよ。この変な置物を見てあぁ…修学旅行でクリスから貰ったなぁって。それに…この守り神面白いから目に入るとちょっと笑っちゃう感じがいいのよ。水龍のかっこいいやつじゃなくて、この守り神だからいい味がしていいのよ。わかるかなぁ?この感覚。」
「この置物を見て半永久的に俺のことをマナは思い出してくれるってことか?」
「そうよ。」
「これにする!」
そう言ってクリスは私にマチャマチャ島のよくわからない守り神の置物をプレゼントしてくれた
「ありがとう。クリス。大事にするわね。」
「結婚したら2人の家に飾ろうな。」
「そんな未来はないけど。」
「先見の明がないなマナは。」
と冗談まじりにクリスが言う
「マナ様!俺からもプレゼントです!」
とシガーレッド・アレクサンダーが言う
「ペン?」
「はい!水龍のデザインも入っているんですよ!いいでしょう?」
「うん。とっても気に入ったわ。ありがとう。シガーレッド・アレクサンダー。」
「えへへ。実は俺も同じ物を買ったんですよ。お揃いのペンですね。」
「そうなの?じゃあ尚更大事に使わないとね。」
「おい!何勝手にお揃いのペンを買ってるんだ!」
とクリスが言う
「いいじゃないですか。クリス様も購入しますか?みんなでお揃いにしてもいいですよ。」
「な…なんか負けたような気になるから嫌だ…」
「何故買い物に勝ち負けがあるんですか…もっと気楽に生きましょうよ…」
「俺もマナとお揃いの物が欲しい!2人だけどお揃いの物が!!」
「じゃあさっきの守り神を購入すればいいじゃないですか。マナ様とお揃いになりますよ。」
「結婚したらあの守り神を2体も置くことになるぞ!!邪魔だろうが!!」
「番のようでいいじゃないですか。結婚して揃えば感慨深いですよ。」
「そ…そうかな?」
「はい。とてもいい思い出になりますよ。」
シガーレッド・アレクサンダーにのせられてクリスも守り神の置物を購入した
シガーレッド・アレクサンダーは新聞部で鍛えられたのか口が上手い
クリス様が丸め込まれてしまった
その後、女子組でお揃いの熱帯魚のキーホルダーを購入して自由行動は終わった
宿に帰り夕食を食べて就寝時間になり
明日、船に乗って帰るのでほとんどの生徒はすぐに眠りについた
そして私はクリスとの約束の為に宿を抜け出して
ビーチへと向かう
ビーチに行くとクリスが既に待っていた
「ごめんね?待った?」
「いや…今来た所だよ。」
「こんなに夜遅くにごめんね。」
「謝らないで。こんなの俺にとってはご褒美さ。」
「夜の海ってこわいんだね。真っ暗で飲み込まれそう。」
「手を繋ぐか?」
「うん。」
私はクリスと手を繋いで歩く
「…話があって呼び出したんだろう?」
「そう。2人きりで話したくてね。すみませーん!水龍さーーーん!!」
私が水龍を呼ぶとすぐに水龍が目の前に来てくれた
「誰にも見られない2人きりになれる場所に連れて言って欲しいの。」
私がそう言うと水龍は私とクリスを乗せて空高く登る
「天界まで案内します。さすがにこの世界の神様であるアルテミス様には見られますが…魔王様には見つかりません。」
と水龍が言う
「そうなの?凄いね。私はただついて来てるであろう私のストーカーのシガーレッド・アレクサンダーを撒ければよかったんだけど。」
「やめますか?」
「ううん。ありがとう。魔王に見られない方が都合がいいから。ありがとう。」
空高く登り、雲を突き抜けて
天界へとやって来た
「ここなら誰にも見られないです。」
「ありがとう。水龍さん。」
天界についたので私はクリスに話す
「…聞いて欲しいことがあるの。とても大事なこと。長くなるけれど聞きてくれる?」
「勿論さ。何時間だって話すといいよ。」
私は今の状態を話す
魔王が復活したこと
私と恋人になる為に1年間ドラゴンの姿になっていること
以前、スリー様と恋人になろうとしたときに
魔王が暴走して世界が崩壊するかもしれない事件になったこと
私はこの世何よりも魔王が大事であること
魔王と争いたくないこと
魔王の望みを叶えて
魔王の恋人になろうとしていること
「だから…クリスの気持ちには答えられない。ごめんなさい。」
「…。」
クリスは黙ったまま何も言わない
私に振られて落ち込んでいるのだろうか
「あのさ。」
とクリスが口火を切る
「何?」
「マナは魔王のことを恋愛対象じゃないんだろう?ずっと弟として大事にしていた存在なんだろう?」
「…弟としてもだけど恩人として。私をマナとして生きる覚悟をさせてくれたから。」
「それってマオと恋人になってもアルテミスが許さないんじゃないのか?そもそもマナの恋愛成就をしないとこの世界は崩壊するんだぞ?」
「…。」
「そんな義務だけの関係…」
「恋愛成就はもうするから。」
「え?」
私はクリスの口にキスをする
「大好きだよ。クリス。」
クリスは涙目になり私を抱きしめる
「本当に?俺のことを…?」
「クリスの全部が好きだよ。」
「俺も…俺もマナの全部が好きだ。」
「でも…1番大好きなクリスと一緒に歩む道を選ばなくてごめんなさい。せっかく私に恋を教えてくれたのに愛される幸せを感じることが出来たのに。…ごめんなさい。」
「いいんだよ。俺はマナに愛されているという事実だけで無敵になれるんだ。俺は魔王にマナを渡すつもりなんてないよ。」
「でもそんなことしたら…」
「魔王が世界を滅亡させるって?させないよ。絶対。マナを手に入れる為ならどんなことだってやり遂げてみせるさ。マナは自分の気持ちを後回しにしすぎなんだよ。もっと我儘言ってもいいんだよ。人の為じゃなくて自分の為に戦ってみようよ。」
「そんなの…マオが…可哀想…」
「マナにずっと我慢させてまで恋人になんかなりたくないと思うけどな。魔王も。もっと話し合うべきだよ。自分の気持ちを本音を。マオ君に。大丈夫さ。上手くいかなくてもなんとかなるよ。」
「計画性も何もないし、楽観的すぎない?」
「この世界は素晴らしいんだろう?マナ。信じろよ。自分が救ったこの素晴らしい世界をさ。」
私は涙が溢れる
根拠もない
この前向きな言葉で
私はどれだけ救われたか
クリスはわかってるだろうか
私はクリスの胸に顔を埋めて
「…クリスを好きになってよかった。」
と呟く
クリスは私の顔を上げさせて
そのままキスをした
「あぁ…そんな素直にキスなら応じたらダメだよ…このまま押し倒して襲ってしまうよ…」
私は笑って言う
「やってみる?」
私がそう言うとクリスは本当に押し倒してきたので
私は電撃でクリスを攻撃する
クリスはうめき声を上げてのたうち回ってしまった
「フフッ。私に簡単に負けてしまう程度で魔王に喧嘩を売るなんて死にに行くようなものよ?」
「…これから強くなるさ。」
「そう。私より強くならないとキス以上は絶対に出来ないしね。私は既に全ても魔法を習得してる万能型の魔法使いだけど大丈夫かしら?頑張ってね♡クリス♡」
「望む所だよ。魔王も聖女も全員蹴散らすぐらい強くなるからな。」