第222話 花火大会
夕食は民族ダンスのディナーショーを見ながら食事をした
マチャマチャ島の民族料理は独特な風味の食べ物が多く、食べ慣れない味で残してしまう生徒も多くいたが
私は全部美味しく食べることができた
未知の味だけれども癖になるというか
ここでしか食べられないのは残念だと思うぐらいに気に入った
また食べたいな…
ディナーショーの後は花火が上がりスカーレット学園の全員で眺めた
「花火なんて前世以来だわ。ねぇ日本を思い出すわね。ローズ様。」
「…そうね。知ってる?今年でもう前世と私達は同い年なのよ。」
「あ…そういえばそうですね。」
私達は高校2年生の時に遠足のバスの交通事故で亡くなった
「丁度今ぐらいの時期でしたね。」
「この世界に来てからの方が多く過ごすことになるわ。」
「時が過ぎるのは早いですね。」
「そうね。でも私は何も変わっていない。」
「そうですか?私達前世の時代より仲良くなりましたし、とても変わったと思いますけど。」
「あんたは別人のように変わったわ。でも私は違う。恋愛ジャンキーのままだわ。」
「別にいいじゃないですか。今の婚約者はいい人ですし。今度こそ恋して幸せになれるんだから。」
「そうね。今こうして花火を一緒に見る相手がマリオ様じゃなくてマナなことはとても残念だわ。」
「本当に残念なことを言わないでくださいよ。普通に傷つきますから!」
「バカね。冗談に決まってるでしょう?」
ローズ様は私の手を握って微笑む
「マナの隣で花火を見られるなんてこんな特等席他にないわ。」
パァン
パァンと
空には花火が連発で上がっている
花火の光に照らされたローズ様の顔は
愛しそうに切なそうに
私を見つめる
あまりの美しさに私はローズ様に目を奪われる
「…花火よりローズ様の方が綺麗だね。」
と、とてもベタな口説き文句を思わず口にしてしまう
ローズ様は嬉しそうに笑ってくれた
ローズ様の顔が近づいてきて
あ…これ…キスされる…
と思い思わず目を閉じる
目を閉じた瞬間
私の口は何者かに抑えられてしまった
驚いて目を開けると私の口を塞いでいたのはクリスだった
目の前のローズ様もマリオお兄様がついていて私達は引き裂かれていた
「俺の婚約者を誘惑するのはやめてくれるかな?マナ様。」
とマリオお兄様が私に対して怒気のこもった声で言われてしまった
何度も怒られているからわかる
これは本気で怒っていらっしゃる
「ちょっと…花火でテンション上がっちゃってムードがよかったのでつい…えへへ…」
と私が言うと
「本気で反省しているようには全く見えない。同じような状況になったらまた繰り返すだろう?」
「え…まぁ…たぶん?」
「ふざけるな。人の恋人に手を出すな。」
「わ…私だけじゃないですよ!?ローズ様だって!ねぇ?誘ってましたよね???」
「ローズ?どうなんだ?」
とマリオお兄様がローズ様に問うと
「あまりにも可愛かったからつい…マナの魔性の力に惑わされて…」
「ほらみろ!マナのせいだ!!」
「えぇー!!クリス裁判官!!私は無罪ですよね!?」
とクリスを味方につけようと話しかけると
「有罪。」
とクリスに言われてしまう
「クリスの裏切り者!!」
「マナはムードに流されやすすぎる。雰囲気でキスを許すな!!」
「失礼ね!ちゃんとローズ様が大好きだからキスしようとしたのよ!ムードは関係ないわ!」
「人のものを取ったら泥棒です。」
「うーん…共有しませんか?私とマリオお兄様でローズ様を…」
「有罪!!有罪!!有罪!!!泥棒猫として逮捕します!!」
そう言われながら私はずるずるとクリスに引きずられてローズ様から離される
「2度とローズに近づくな!!この魔性の魔女!!」
とマリオお兄様から怒りの怒号が断末魔として響いた
そんなことをしている間に花火大会は終了していて
私達は宿に帰る
「ねぇ。クリス。」
「何?」
「明日はマチャマチャ島で過ごす最後の日でしょう?」
「そうだな。」
「明日の夜、宿から抜け出して2人きりになれない?」
私の提案にクリスはとても驚いた顔をする
「…どうして?」
「2人きりで話したいことがあるから。」
「深夜に男女2人で逢瀬なんて…危ないよ?」
「嫌なの?」
「そんなわけない。会いたいよ。2人きりで。ただ…警告しただけ。俺だって健全な男子だ。暴走してしまうかもしれない。」
「じゃあ明日の夜の23時にビーチで待ち合わせね。」
「わかった。」
私はクリスと2人きりで会う約束をする
内緒の話をする為に
ケジメの話をする為に
愛する人との思い出を作る為に