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第22話 原田 愛美の前世

とても幸せな毎日だった。

初めての彼氏。

1つ上の山崎先輩。

毎日LINEでやりとりしていたし

キスだって、初体験だって先輩だった。

愛し、愛されて幸せだった。

このまま山崎先輩と付き合って結婚するんだって本気で思ってた。

だからこそ…許せなかった。

他の子を…佐々木華を好きになってしまったから別れて欲しいなんて。

なんで?どうして?どこが好きになったの?って聞いたら

図書委員の時に一緒になった時に消しゴム拾ってくれた時の笑顔に惚れたって

なにそれ…意味がわからないよ。

消しゴム拾っただけで?私は負けたの?

私達の付き合った一年間ってそんなに簡単に崩れる絆だった?

私達昨日まではラブラブのカップルだったよね!!

泣いて謝る彼にもう何も言えなくなってしまった。

愛していたから。彼は騙されただけなのだと思ってしまった。

私から山﨑先輩を奪った佐々木華が許せなかった。

友達に佐々木華は男を誑かして遊ぶ女だと風潮した。

花瓶の花の水を変える時に手が滑ったフリをして佐々木華の机を水浸しにした。

クラスの男子の正義マンが大騒ぎをして親まで呼び出された。

私は先生と親に説教をくらった。逆恨みもいいとこだと。何も罪のない佐々木さんをいじめるなんてひどいことをするなんてと。

じゃあ私のどうしようもない黒い禍々しい気持ちはどうすればよかったのか。

私だって辛かったのに。

誰も理解してくれない。


次の日、学校に行くと私の学校ヒエラルキーは最下位層まで落ちた。

何も悪くない佐々木さんを逆恨みでいじめをした最低なやつとしてレッテルを貼られて誰も私に話し掛けるやつなんていなかった。

何もかも終わった。私は高校生活孤独に生活するしかない。


「ねぇ。やめようよ。」

そう言葉にしたのは佐々木華だった。

「原田さんは手が滑ってたまたま私の机が汚れただけなんだから。」

「…。」

クラスが沈黙に包まれる。そんなわけないって誰もが思っていたからだ。

「私が気にしてないんだからさ。こういうの良くないよ。皆普通に接してあげてよ。」

「…まぁ。佐々木さんが許すなら…。」

クラスメイトがそう呟き私への態度は何事もなかったように元の状態に戻った。

惨めだった。

何もかも勝てない。

圧倒的な可愛さ、優しさ。

少女マンガに出てくるヒロインそのものだった。

一番憎い女に救われた。

佐々木華だけが私に優しくしてくれた。

私の気持ちをわかってくれていた。

憎くて、憎くて堪らないやつだけど


嫌いになれなかった。


ドス黒い感情に振り回されてどうしようもなくなった私に優しく笑いかけてくれたのは佐々木華だけだった。

世界中が敵に見えていた時に優しくされるなんて嫌いになれるわけないでしょう?

だからといって好きになったわけでもないけれど

仲良くしようなんて絶対思わなかったけど。

それは佐々木華の博愛主義が気持ち悪かったからだ。

親も

友達も

クラスメイトも

先生も

いじめっ子も

犯罪者も

彼女の中では平等に愛を与えている。

人のいいところも悪いところも全てを愛する佐々木華が気持ち悪かった。

人類の全てを平等に愛するヒロイン。

佐々木華の特別なんて夢のまた夢だ。


私の前世はこんなもん。

立派な負けヒロインでした。

ヒロインなんて名前をつけるなんておこがましいかな?

やっぱり相応しく名付けるなら

悪役令嬢?

前世は令嬢じゃないからただの悪役だね。

しょうもない人生だったな。

一時でも幸せを夢見させてくれたからそこまで悪くはなかったのかもしれないけれど。

今世は負ける気ないから。

佐々木華かどんなに可愛く優しいヒロインであっても勝機はある。

佐々木華の愛は平等。

誰でも愛せる彼女は

誰の特別でもない。

恋に堕ちるなんてことなんて想像がつかない。

恋に振り回されて醜い感情を抱く佐々木華は佐々木華ではない。

佐々木華は誰かを一番に愛することが出来ない。

そんなことをしたら愛されなかった人々が救えなくなるから。

佐々木華は恋人を愛することが出来ない。

だから私にもチャンスがある。

清廉潔白の圧倒的なヒロインにだって勝ってみせる。

恋をするなんてドロドロのぐちゃぐちゃになるんだから。

貴方にそんな感情抱けるの?

私はいつも醜い感情だから

それでも愛したいし、愛されたいと思ってしまうから

恋に生きてるから

私は悪役令嬢だから

貴方の恋敵になってぐちゃぐちゃになって

今度こそ勝ってみせる。

負け戦?関係ない。

私はこういう人間なの。

だって恋に堕ちるってどうしようもないことでしょう?

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