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第211話 優しい人


魔塔に帰りくたくたになったのですぐに寝てしまった

習慣とは恐ろしいもので朝5時に目が覚める

「マナ。おかえり。」

「ただいま。レックス。」

朝食を作りにレックスが魔塔に来る

「キッカ国の旅は楽しかった?」

「うん。とっても。カイザーさんのオーケストラを聴くことが出来たのよ。貴重な経験だったなぁ。」

「俺も行きたかったなぁ。」

「レックスも音楽に興味があるの?」

「いや。俺が興味があるのはマナだけど。」

「じゃあ今会えてるからいいじゃん。」

「わかってないなぁ。好きな子と旅行に行きたいんだよ。もっと長くマナと一緒に過ごす時間を増やしたいんだよ。そしたら俺に惚れさせられるから。」

「相変わらず凄い自信だね。」

「俺よりもいい男なんてこの世にいないよ。」

「謙虚を覚えた方がいい男になれるわよ。」

「マナは謙虚な男が好きなんだ。スリー様も謙虚だもんね。」

「偉大な人ほど謙虚なものだよって話。私の好みの話じゃないよ。それにどうしてスリー様?」

「だってマナの好きな男ってスリー様だろう?」

「黙秘します。」

「マナが自ら気を引こうとするのはスリー様だけだからな。」

「こっちから話さないと会話にならないんだもん。」

「ニックとキッカ旅行も楽しんだようで。」

「とっても楽しかったよ。」

「今度俺とも旅行に行ってよ。不公平だよ。平等主義のマナ様!!」

「ただの部活動だよ。不平等になんてしてませーん。」

「くそ!!学級委員旅行は何故ないんだ!!」

「そんなことしなくたってこうして毎日会ってるのはレックスだけじゃない。」

「嘘つけ。スリー様が毎日魔塔に通っていることは知ってるんだぞ。」

「スリー様は私に会いに来るんじゃなくて仕事で来てるのよ。こんな穏やかな雑談しないわ。」

「何を話しているの?」

「魔力量の上限を上げるには体と心を鍛えないといけないことがわかったから毎日の筋トレの成果を話したり…食べた食事の報告をしてもっとタンパク質を増やせとかそんな話を…」

「マナ。スリー様は絶対に脈ないから恋人になるのは諦めな?」

「だーかーらー!仕事しに来てるだけだから!スリー様は!!恋人の逢瀬に来てるんじゃないから普通の会話なの!!脈がないわけじゃないの!!」

「諦めろ!」

「うるさい!スリー様は私のこと好きだもん!!」

私が好きな人はクリスだが

スリー様に振られているような言い回しが癪に障ってつい言い返してしまった

いや…実際1回振られたようなものだけど

久しぶりにレックスと話しながら朝食を食べる

レックスは家へと帰り

スリー様が魔塔へと来た

「久しぶり。マナ。」

「お久しぶりです。スリー様。」

「キッカ国では大暴れしたようで。体重もかなり落ちて痩せ細ってしまったね。」

「え?そ…そんなたいしたことじゃないですよ?スノーに貰った薬を飲んだらすぐに回復しましたし…」

「2回も飲むことになったんだとか。」

「あ…あの…悪の組織を壊滅させる為に…」

「キッカ国に行くのはマナの安全が第一条件だったと思うけど。そんな悪の組織マナが手を下さなくても後から処理出来る。」

「早めに解決して良かったじゃない…」

「良くない。マナが倒れているんだ。薬が取られていたらどうするつもりだったんだ?スノーもいない土地で死なない保証なんてなかった。」

「薬は厳重に管理してたもん。万全の体勢で望んだから心配しなくても…」

「違うよ。マナ。マナはそんな雑魚の相手をすることはないんだ。マナじゃなくてもそんな奴らどうとでもなるんだから。」

「力試しにはいいと思って…」

「力試しをするなら必ずスノーがいる時だ。今の修行もスノーがいるだろう?遠い土地で万が一があれば助からない。リスクがデカすぎる。絶対に安全第一だよと俺は伝えたよね?」

「…はい。」

「それに…2回目は民衆相手に白魔法を暴走させて倒れたとか。」

「…。」

「絶対にもうしないとスノーと約束したはずだけど。」

「申し訳ございませんでした…」

「罰として暫く外出禁止令を出す。この魔塔から絶対に出てはいけない。」

「えっ…」

「何か問題でも?」

「いえ…何も。」

「マナは今、スカーレット学園に通う意味なんてないからね。今は寧ろ恋人が出来れば問題なんだ。学園に通う方がリスクがあるだろう?」

「…。」

「この魔塔でマオが帰るまで待つんだ。いいな。」

「…わかりました。」

スリー様は本気で怒っている

私が安全第一という約束を破ったからだ

この世界は私が中心で回っている

私が死ぬことは

この世界の崩壊を意味する

スリー様が怒って当たり前だ

その日から私はスリー様の約束通り魔塔から一切出ない生活をした

まだ夏休みなので学園に通うことはない

レックスと朝食を作って

ミケお爺ちゃんと修行をして

家事をして

寝る

このサイクルをひたすら続けた

1週間後、スリー様が私に言う

「どうして何も文句言わないの?」

私はキョトンとした顔でスリー様を見る

「だって…悪いことをしたから罰があるのは当たり前だし。」

「学園に通えなくなると言ったんだ。嫌じゃないのか?」

「嫌だけど。でも仕方ないじゃない。罰は受けないとね。」

「私の考えた身勝手な罰をおかしいと思わないのか?」

「思わない。」

「やりたいことがたくさんあるだろう?オーケストラ部で頑張っていたんだろう?2学期は修学旅行もあるんだろう?行きたくないのか?」

「行きたいけど…そんなの私が言う資格ないし。」

「…私のことを理不尽な嫌な奴だと思わないのか?」

「フフッ。そんなこと思うわけないじゃない!!」

「私は…マナの学園生活の青春を奪うと言ってるんだぞ?どうして私を責めない?」

「スリー様は優しい人だから。」

「はあ?こんな罰を与えているやつが優しい?」

「そうだよ。スリー様は1番優しい人。悪いことをしたら叱られないとらいけない。それなのに…私は可愛いことと聖女なせいで誰も彼もが私を許す。スリー様は私を叱って罰を与えるという損な役回りを自らやってくれた。そんなこと誰もしたくないのに。悪いことを叱れる人は優しい人だよ。私は謝らないといけない。スリー様に損な役回りをさせてしまったこと。そして感謝しないといけない。私の我儘を許してくれないことを。」

「…絶対にもう倒れるような無茶はさせたくないんだ。何を言ってもマナは聞いてくれない。だから…」

「うん。わかってる。私が全部悪いの。損な役回りをさせてごめんなさい。私はわかっているから。スリー様が誰よりも優しいって。私を叱ってくれてありがとう。」

「本当に2度と倒れるような無茶はしないと約束するか?」

「うん。今度こそ本当に約束する。」

「次裏切ったら牢屋に閉じ込めるから。」

「はい。」

こうして私の外出禁止令は解かれた

スリー様の目には少し涙が浮かんでいたので

私なスリー様の頭を撫でた

するとスリー様は私の手を払いのけて

「誰のせいで泣いていると思っているんだ?」

「私ですね。」

「ひどい女だよ。本当に。」

「ごめんなさい。」

スリー様は私に抱きつく

「自分を大切にしろって教えてくれたのはマナなのに…マナも自分を大事にしなよ…」

私はスリー様を抱きしめ返す

「約束破ってごめんなさい。スリー様がそんなに怒ってくれるなんて思わなかった。ありがとう。怒ってくれて。」


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