第206話 花祭り-2-
今日はキッカ国恒例の花祭りの日だ
昨年は私とマオがカルト団体を壊滅させた事件があったので
例年よりも警備が厳重であるものの無事に今年も開催されるようだ
私はニックと待ち合わせをして花祭りへと出掛ける
「マナ。水色のワンピースの服も似合ってるね。とても可愛らしいよ。」
「ありがとう。いつもは制服だから外に出る時に服を選ぶのが難しいね。」
「マナに似合わない服なんてあるの?」
「あるわよ。キャラTシャツなんて胸が大きいからキャラクターが伸びちゃって着れなかったんだから。」
「それは似合わないかもしれないけれど、男が喜ぶ服ではあると思うよ。」
「やだ。ニックでもそんなこと言うんだ。えっち。」
「今のはえっちな話題を振ったマナが悪い。どう返せばえっちにならないのかご教授願いたいね。」
「私が悪かったわよ。」
「わかればいいんだ。」
ニックは私にプレゼントを渡した
「これ。今年の花祭りのプレゼントだよ。」
「ありがとう!何かなー?」
私はプレゼントの中身を空ける
中にはひまわり柄の刺繍が入った財布が入っていた
「わぁ!とっても可愛い!ありがとう!!」
「気に入ってくれてよかった。また毎日愛用出来る物にしてみたんだ。昨年贈った髪飾りのプレゼントは毎日つけてくれているからね。」
「お財布も大事に使うね!」
私もニックへプレゼントを渡す
「私からもプレゼントだよ。」
「今年は花束じゃないんだね。」
「残念?」
「まさか。すごく嬉しいよ。」
ニックがプレゼントの中身を空ける
「これは…ひまわりのキーホルダー。」
「日常的に使える物の方がやっぱり喜ぶかなーと思って…どうかな?」
「ありがとう。死ぬ時に棺桶に入れて貰うよ。」
「普通に使ってよ…」
「毎日大切に使うよ。ありがとう。マナ。」
プレゼント交換を終えて私達は花祭りを楽しむ
花の形をしたわたあめや
花の形をしたりんごあめを買って食べて
射的やヨーヨーすくいも一緒に楽しんだ
2人とも正体を隠すことなく素顔で遊んでいたので
騎士団が人払いをしてくれながら楽しんだ
公園の広場にあるストリートピアノを見つけた
「ねえ!ニック弾いてよ!」
「俺が?」
「ニックのピアノ聴きたいなぁ〜。」
「俺は一応プロだから無料ライブをして安売りするわけにはいかないな。」
「いいじゃん。けち。」
「プロ意識が高いと言え。」
「じゃあ…やりますか。」
「こんなところで聖女がストリートピアノを弾いたら人が集まりすぎてパニックになるぞ?」
「なんとかしてもらう。」
「えぇ…」
私はストリートピアノに座る
私がピアノに座るとあっという間に人が集まってきた
「最高の花祭りになるように。愛を込めて花束を。」
私はストリートピアノを弾く
心を込めて
愛を込めて
私は歌う
幸福を
平和を願って
私が演奏を終えた後には
拍手喝采が鳴り止まなかった
耳の鼓膜が破けるのではないかというぐらい
拍手の振動で地面が揺れ動くほど
拍手喝采された
私は民衆に大きく手を振って答える
「マナ様ーーーーー!!」
「素敵ーーーーー!!!」
昨日とは違って私のピアノを純粋こんなにも大勢の人数に褒められたのは嬉しかった
私はまだまだ未熟で
プロとしてピアノを弾くことなんて
練習が足りないんだけど
今はまだこの成長過程の
ただただ一生懸命弾いている音色を届けたい
今の未熟な私にか出来ないことが
たくさんあるから
「どうだった?私の弾き語り。」
ニックは私の手の甲にキスをして言う
「このまま攫ってお嫁さんにしてしまいたいほどよかったよ。」
「大袈裟。」
「大袈裟なんかじゃない。本気さ。毎朝マナのピアノで起こして欲しいよ。」
「恋人にはなれないよ。」
「どうして?マナの本命は誰なの?どうして付き合わないの?」
「魔王様が見てるから。」
「マオ君が?マナが恋人と幸せになったら…世界崩壊するの?」
「だから待ってるの。マオが告白してくれる日を。私はそれまで本命と付き合うわけにはいかない。」
「…ハッピーエンドになるの?」
「ハッピーエンドになるようにみんな努力してる。特にミケお爺ちゃんとスリー様が。」
「俺に出来ることはある?」
「あるよ。」
「何?」
「プロのピアニストとして私を育てて。」
「世界平和に必要なの?」
「1番重要だよ?私の自己肯定感が上がるからね。私は努力して勝ち上がれる人間だと。信じさせて。」
この世に最高のハッピーエンドを迎えさせられると
信じさせて