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第205話 開演

今日はカイザー師匠のオーケストラに招待されているのでVIP席で観覧する

宿までニックが迎えに来てくれる予定だ

「やぁ。マナ。今日はドレスアップしていてとても素敵だね。」

せっかく敷居の高いオーケストラを見にいくので少しおめかしをしようとドレスを着て、髪の毛も巻いてみた

「たまにはいいかなって。どう?」

「とても似合っているよ。素敵だ。」

「えへへ。ありがとう。ニックのタキシードもかっこいいね。」

「マナの隣に立つにはまだまだ俺なんて若輩者だよ。」

「世界一のヴァイオリニストが何言ってんだか。私の方がどう考えても役不足なのに。」

「ヴァイオリンしか取り柄がないからね。」

「じゃあ十分魅力的よ。」

「それより…この誘拐犯とまだ一緒にいるの?」

私の隣にはルークがいてニックはルークのことを怪訝そうに見つめる

「ニックさん。お久しぶりです!どうですか!俺がドレスを選び、髪型をセットして作りたげた最高傑作のマナ様は!!」

「マナ…こんなやつにコーディネートさせたの?」

「自分じゃよくわからないからね。」

「はぁ…こんな犯罪者と仲良く出来るのはマナだけだよ。」

「安心してください!犯罪組織はマナ様が昨日殲滅させてくれましたから!俺はマナ様に寝返ったので逆転無罪です!!」

「そうなのか?」

「そんなわけないでしょ。バーバランド国に帰ったらすぐに牢屋行きだから。今は監視してるだけよ。」

「マナ様に監禁されるなら天国なんだけどなぁ〜。」

私達は3人馬車に乗り、カイザー師匠のオーケストラを聴きに会場へと向かった

裏口から入り、VIP席へと案内され開演を待つ

「楽しみだなぁ〜。練習風景は見たことあるけど本番の演奏は初めて聴くから。」

「俺も久しぶりに聴けるから楽しみだな。」

「俺も本格的なオーケストラは初めてで楽しみです!」

「…ねぇマナ。今更だけどなんでルークも連れてきたの?」

「まぁ…バーバランド国に帰ったら牢屋行きなわけだし、それまでは温情で好きなことさせてあげようかな…って。」

「マナ様は犯罪者にも寛容な素晴らしいお方です!!」

「ルークはマナを誘拐しようとした犯罪者だろう?」

「まぁ…本人は誘拐する気がなかったみたいだし、たまたま運悪く犯罪者になっただけだから。情状酌量といいますか…」

「無罪でも構わないんですよ!!」

「それは無理。このままルークを野放しにすると同じような犯罪に手を染めそうだから。ちゃんと改心してもらわないと。」

「改心してます!もうこんな目に遭うのは2度とごめんですから!!」

「信用出来ない…。ニックが嫌ならすぐにでもルーク追い出すけど…どうする?」

「えぇ!?そんなぁ!!俺だってキッカ国に音楽を聴きにきていて楽しみにしていたのに!!ここのオーケストラも前から予約して席を確保していたのに!!」

「じゃあルークはその前から取ってある席で聴いてきてね。」

「しまった!!余計なことを言ってしまった!!」

ルークはマリオお兄様に引きづられてVIP席から普通の席へと移動させられた

「犯罪者にも救いの手を伸ばすなんて無茶苦茶だよ。」

「人生に失敗はつきもの。その後どう生きるかいい方向に導くのは当たり前でしょう?」

「それでも犯罪に手を染めるのはやりすぎだよ。失敗の範疇を超えている。」

「ルークはたまたま犯罪者になったの。本来なら無罪にしてあげてもいいんだけど…あのまま放置するのは危険と判断したから。」

「改心できると思ってるの?」

「…わかんない。それはルーク次第だもん。それでも自分を見つめ直したりやり直すきっかけだけは与えてあげたいじゃない。」

「随分と大切にしてるんだね。ルークを。」

「フフッ。一応あんなやつでも友人だからね。」

開演のブザーが鳴り、カイザー師匠のオーケストラの演奏が始まる

時間を忘れてしまうほど一瞬で素敵な音楽野時間は過ぎていった

大きな拍手が鳴り止まず会場は大盛り上がりの中終演した

私達は楽屋へと挨拶に向かう

「マナ!!ニック!!よく来てくれたね!!」

カイザー師匠は私達2人に抱きつく

「とても素晴らしい演奏でした!カイザーさん!」

「カイザー師匠。素晴らしい演奏でした。」

「2人が見に来てくれるからいつも以上に気合い入れたからね!!どうだい?マナ!!キッカ国に留学する気になったかね?」

「はい。是非よろしくお願い致します。」

「え…えええええええ!!!本当かい!?ニック!!お前!!遂にマナを勝ち取ったんだな!!おめでとう!!」

「えっと…振られたんですけど…一緒に留学はしてくれるみたいです。」

「そうか!そうか!キッカ国に留学してくれるならそれでいい!!俺がマナを手塩かけて育ててあげるからな!」

「カイザーさんから教えを乞えるなんてとても光栄です。」

「今!ピアノ!!聴かせてくれよ!!」

「え?いいですけど…」

「ステージにまだピアノがあるから!」

私はカイザー師匠にステージのピアノまで案内される

「リクエストありますか?」

「プロコフィエフ:4つの練習曲 Op.2」

「なんでそんな難曲を…」

「リクエストするからだよ。」

「はぁ…仕方ない。」

大きく息を吸って呼吸を整える

この人の前では甘えた演奏なんて許されない

全て見透かされる

今の私の全力で挑むしかない

私は演奏をする

集中

集中

集中して

1音1音を無駄にするな

全ての音に意味がある

音を逃さないように…

私は今出来る全てをこのピアノに込めて弾いた

弾き終えた後、カイザー師匠を見つめる

「うん!!びっくりするほど下手くそだね!!育てがいがあるよ!!」

大きな拍手をしながら私の全力の演奏を貶してきた

なんて正直な人なんだ…

そして何故か客席にルークが残っていてルークも拍手しながら私を見ていた

「ルーク!!私の演奏どうだった?」

「素晴らしいよ!!マナ!!さすが俺が選んだドレスだ!!華やかなドレスだけど妖艶な雰囲気も感じられて凄く良かったよ!!巻き髪が汗で乱れる姿もぞくぞくして目が離せない!!マナの美貌は世界一だ!!」

私は演奏の感想を聞いたのに

私のピアノなんか聴いてない

相変わらず外見しかみてない

ピアノのことを少し褒めてくれたらそれだけでよかったのに

私の演奏なんてどうでもよかったかの言い方に

心が抉られて大ダメージを受けてしまった

「私の外見よりピアノの方がいいっていつか言わせてやるんだから…」

「うーん…あと40年経てばおばさんになるからその時にしか無理だと思うけど。」

なんて失礼なやつなんだ

40年後にこんな凄いピアノ弾いてたんだって

驚いてハゲろ



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