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第202話 努力の天才

概ね何事も問題なく私達は船旅を終えてキッカ国へと入国した

明日にはニックのヴァイオリンのコンクール本選だ

長い船旅を終えて宿に着き、明日の本番に備えて早く寝た


そして今日はニックのヴァイオリンコンクール本選だ

「ニックは大舞台で緊張とかしないの?」

「フフフ。俺はこう見えて誰よりも小心者でね。何回経験しても慣れないものだよ。毎回心臓が飛び出そうになる。」

「全然見えない。いつもと変わらないニックに見えるのに。」

「俺を支えているのは日々の練習。それだけさ。自分の音に自信を持って堂々と演奏したことなんてないんだ。」

「あんなに綺麗なのに?」

「…フフフ。マナが俺の演奏を綺麗だと感じてくれるだけでとてもやる気が出るよ。なんの変哲もなく、面白味もなく、ただ楽譜をなぞる俺の演奏をマナが肯定してくれるなら。俺がヴァイオリンを続けてきた意味は確かにあったんだ。」

「私の存在がニックの演奏を良くしているならこんなにも誇れることはないよ。」

「必ず優勝する。だから見守っていて。」


会場に到着してニックはコンクール参加者として先に会場入りをした

私はニックに手を振り見送った

一般の観客とは別に私にはVIP席を用意されていた

世界唯一の聖女様が一般観客席に座ると会場が混乱するからだ

豪華客船の旅で仲良くなったルークと待ち合わせをして

私とルークはVIP席で観覧することになった

「絶対王者なんて存在しないのにね。絶対王者の座を背負う運命なんてプレッシャーで死んじゃいそう。私なら逃げちゃうね。絶対。」

「ニックのことを言ってるのか?毎回ヴァイオリンのコンクールで優勝しているから。」

「そう。優勝して当たり前なんてそんなことないのに。ニックが優勝しているのは誰よりも努力しているから。誰よりも向上心が高いから。」

「誰よりも自分に厳しそうだよね。」

「そうなの。今日ね。ニックが言ってたんだ。自信を持って演奏なんかしたことないって。」

「ええ…意外ですね。」

「私なんて自己中だから自分で演奏してて、今日めっちゃ気分良く弾けていい音出せたなーー!!ってしょっちゅう思ってるのに。ニックは完璧主義な性格だから納得できる演奏がなかなか出来ないんだろうなぁ。」

「マナ様と違って繊細そうですからね。ニックは。」

「一言余計ね。ルーク。あ。始まるよ。」

いよいよヴァイオリンコンクールが始まった

次々とコンクール奏者が演奏を終えて

最後にニックが演奏する

…本当に綺麗だ

こんなにも透き通った綺麗な音色を出せるのは

ニックしかいない

ニックは自分の良さを全くわかってない

こんなにも圧倒的に

誰よりも美しく正確に

奏でることが出来るのに

絶対王者の名に相応しい

素晴らしい演奏だった

「うわぁ…。凄い感動しましたよ…。ディナーショーの時とは全く違いますね。」

「うん。改めて私って凄い人に教わってるんだなぁって噛み締めてる。ニックに音楽を教わるなんてとても贅沢よね。」

「自分の練習だけでなく、人の練習も教えるなんて超人ですね。ニックは。」

「そんなんじゃないよ。ニックは。」

誰よりも自分に厳しくて

誰よりも他人に優しくて

誰よりも音楽を愛している

「努力する天才なの。ニックは。」

だからこそ私はニックに憧れて

一生ついていきたいと

ニックのように

努力できるかっこいい人間になりたいと

かっこいい背中を追いかけているんだ


コンクールの結果が発表されてニックは見事に優勝した

「マナ!!」

ニックは私を見つけて抱きつく

私もニックの体を抱きしめて言う

「おめでとう。ニック。とっても素敵な演奏だった。」

「マナ。ありがとう。マナのおかげだよ。」

「とんでもない。ニックの努力の賜物よ。」

「マナ。マナは俺の演奏好き?」

「もちろん。大好きだよ。」

「一生俺の演奏聴きたい?」

「うん。」

ニックは私に跪き言う

「一生飽きさせない演奏をマナに捧げると誓うよ。卒業後

どうか俺と一緒にキッカ国で共に生きて欲しい。マナを愛している。俺を恋人にしてくれないか。」

私は笑顔で答える

「ごめんなさい。」

「…どうして?」

「私、他に好きな人がいるの。ごめんなさい。」

「そう…残念だ。」

「恋人にはなれないけど。卒業後はキッカ国でピアニストとして勝負しようとは思ってる。」

「…え!?…は!?…ほ…本当に!?」

「うん。せっかくニックが私をピアニストとして育ててくれたからね。私も本場でもっと音楽に触れて本格的にやりたくなっちゃった。」

「嘘だろ…!?本当に!?勝負に勝って試合に負けたようなものだよ!!」

「恋人としては無理だけど、私をピアニストとしてニックと一緒に生きて欲しいです。これからもよろしくお願いします。」

「マナと共に演奏して生きていけるならこれ以上は何も望まないよ。最高に嬉しい。これからも厳しくて逃げ出したくなるほど練習させるけど…誰の前に立っても恥ずかしくない立派なピアニストに育ててみせるよ。」



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