第201話 外見至上主義
次の日になり、朝食を食べる為にまたシャルルに変装をして私は豪華客船内のカフェへと向かう
「ハロー!グッドモーニング!素敵な朝ね!ルーク!」
「…俺を罪人にしておいてよく笑顔で声を掛けられるね。マナ様。」
カフェでルークに出会ったので、声を掛けると恨みの籠った声で返されてしまった
「やだなぁ。私のことはシャルルって呼んでくれないと困りますよぉ。」
「嫌がらせで言ってるからね。」
「仲良くする作戦じゃないですか。さぁさぁ仲良く朝食を食べましょうよ。」
「俺はマナ様と朝食が食べたいんだ。そんなもっさい髪のダサい女なんて興味ないね。」
「えぇ?人間の外見なんておまけみたいなものですよ?この格好でも私は私であることには変わりないんですから。」
「何を言っているんだ?全然違うよ。俺は人間の中身なんてどうでもいいんだ。俺は美人が好きなんだ。美人の人と一緒にいられるだけで幸せになれるんだ。」
「そんなんだから彼女に酷い扱いされるんじゃないの?」
「うるさいなぁ!俺のような平々凡々な男が美人の女の子のおねだりを断れるわけないだろうが!こんなに美人な女の子が俺を頼ってくれているんだ!!」
「面食いなんだね。」
「筋金入りのね。俺の癖だから。どうしようよないよ。相手が美人であればあるほどいい。俺がマナ様に寝返ったのだってマナ様の方が美人だからさ。」
「複雑だな…。」
「マナ様に騙された結果俺は牢屋行きだけどね。」
「だってそんなの牢屋で反省しないと一生美人局に騙される人生だよ?ちょっとは人の本質を見るようにしないとまた犯罪に手を染めるよ?」
「無理無理無理無理。俺の外見至上主義は絶対に変わらないよ。俺が俺であるアイデンティティなんだから。」
「そんな外見至上主義のルークは殺してしまって新しいルークに生まれ変わろうよ!内面は大事だよ?」
「どれだけ性格が悪くても美人ならそれでいい。それがいい。今マナ様が変装しているのはとても損した気分だよ。本当はもっと美人なのに美人な女の子と俺は食事をしたいのに。」
「昨日はシャルルに声かけてくれたのに?」
「あれは一生懸命本を選んで悩んでいたからおすすめを教えてあげただけだよ。恋人になろうとかナンパしようなんて下心なんて一切なかったからね。俺には彼女がいるし。」
「今もシャルルとして友人として楽しくお話しすればいいじゃない。」
「本当は美人なのにもったいない。こんな美人と2人きりで食事している優越感を味わいたい。」
「なんていうか…思考回路が俗っぽいね…。前世の言葉で言うなら女はアクセサリーみたいな。」
「前世?なんの話?女はアクセサリーってどう言う意味?」
「いや。なんでもない。気にしないで。」
「ねぇ。変装なしで食事しようよ。」
「カフェではダメ。騒ぎになるから。」
「騒がれたい。」
「だーめ!じゃあ朝食終わったらルークの部屋に行ってあげるからそこで素顔になるよ。」
「えぇ!!そんな大胆な!!」
「何を想像してるの?素顔になるだけなんだけど。」
「あぁー楽しみだなぁ!!早く食べようよ!早く部屋に戻ろう!!」
「私が私であることに変わりないのに…。」
ルークはカフェで注文したモーニングセットのトーストとコーヒーを一瞬で食べ終えて
私が食べ終わるのをまだかまだかと待っていた
カフェで一緒に朝食食べてゆっくり一緒に本でも読みたかったのに…
仕方がないので私も早めにモーニングセットを食べ終えてルークの部屋へと向かった
「さぁさぁ!どうぞ!素顔になってください!」
ルークは自室の扉を閉めてすぐに私の素顔を催促してきた
私はウィッグを取り、素顔を晒す
「わあああああああ!本当に顔面国宝!!美人でもあり、可愛くもある黄金比の顔をしていらっしゃる!ビジュ強!!」
「どうもありがとう。」
「あれれ?お顔を褒められるのは好きじゃないのかな?憂いを帯びたお顔も最高に重宝しちゃうけどね!!」
「ねぇ…もう外見の評価はいいよ。」
「はわわわ!!すみませんでした!あまりの美しさに我を忘れて興奮して口走ってしまい!!不愉快でしたよね!!こんなブ男の戯言なんて聞かせてしまってすみません!!ふへへ…」
「ルークのことブ男なんて思ったことないよ。」
「ああああああああああああ!!!お世辞でも嬉しいですうううううううう!!ありがたき幸せ!!!!こんな俺にも慈悲深いマナ様はまさに天使!!天使は実在したんだ!!」
「シャルルの時と態度違わない?」
「美人なだけで!美人と話すとこうなってしまうんです!!」
「恐ろしい癖だね…」
「そんなことないです!俺は俺であることが幸せ!!もう1度生まれ変わっても俺でありたいです!!」
「幸せそうではあるけどさ…それルークの癖と一緒で一時的な幸せでしかなくない?美人は3日で飽きるって言うし。」
「俺は絶対一緒飽きない!一生美人を愛する自信がある!!」
「美人の恋人が歳をとって皺くちゃになっちゃった時それでも愛せる?」
「浮気する自信がある!!」
「まじで最低のクズ野郎じゃん…」
「わかっている!だから結婚は絶対にしない!!」
「そこの線引きはわかってるんだ…」
「マナ様が美人の女の子を紹介してくれるんだろう?とても楽しみにしているよ!」
「うわぁ…言うんじゃなかった…」
「あ…あのこれ…ルームサービスで一緒に飲みたいなー…なんて…」
ルームサービスのメニュー表を私に見せてルークが言う
「これ?別にいいよ。」
「ええ!?さすがマナ様!!噂には聞いていましたが本当に懐がでかいですね!!俺のような男にも優しい!!」
「私は人類のほとんどを愛せる特性があるからね。」
「さすが聖女様!!母なる大地!!」
よくわからないヨイショをされて私達はルームサービスを頼んだ
そして従業員の方が届けてくれた
ルークが頼んだのはカップル専用のドリンク
とても大きなグラスにメロンソーダがたっぷり入っていて
2つのストローで飲むものだ
「あっ…あの…本当にいいんですか?俺なんかとこんなことしちゃって…」
「全然いいよ。」
「ひぇ…マナ様の恋愛鈍感力に乾杯!!宇宙に万歳!!ありがたき幸せ!!」
ルークは天を仰いで感謝し始めた
恋愛鈍感力ってなんだよ
普通にディスられてる
「いいから早く飲もうよ…」
「待って!バルコニー!バルコニーで一緒に飲みましょう!!」
海風に当たって気持ちの良いバルコニーに移動する
「あぁ…最高…黒髪がなびいて…永久に保存版…」
あまりにも外見のことをずっと言われてムカついたので変顔をしてやった
「わっ!なんですか!?ファンサ!?変顔もキュートすぎ!!!」
ダメだ全然効果ないや
もう1回シャルルのウィッグ被りたい
「別に私美人じゃないもん。」
「うわぁ!全世界の女性を敵に回す魔法の言葉ですよ!」
「私より美人な女の子なんていっぱいいるし。」
「嫌味にしか聞こえないですよ!やめた方がいいです!」
「うるさいなぁ!ほら!早く飲むわよ!!」
「はい!!」
私達はバルコニーで一緒にメロンソーダを飲む
「あぁ…めっちゃかわいい…幸せ…彼女裏切って罪人になっても悔いはないです…」
「こんなことで…?」
「最高の時間ですよ。」
「…私も人のこと言えないかもしれないけどね。」
「え?マナ様も面食いなんですか?」
「わからない。でも私の好きな人はモテるしかっこいい人だよ。」
「ほら!綺麗事言っても人は結局外見が良くないと惚れないんですよ!」
「そうなのかな…?私は初恋だからよくわからなくて。」
「顔以外に好きなところはあるんですか?」
「声とか鍛えてる体とか優しいところも好きだし、いつも大事にしてくれて、私のこと凄く愛してくれてるところが好き。」
「めちゃくちゃ惚気るじゃないですか。」
「そう?初めて惚気話したかも。」
「全部好きなんですね。」
「…フフッ。アハハ!!」
その言葉に思わず吹き出す
だってその言葉は
私の大好きな人が
いつも言ってくれる
1番大好きな言葉だから
「そうなの。私も全部好き。」
ガチャっと扉が開くと走ってきたように見えるニックがいた
私達がバルコニーでカップルドリンクを飲んでいる姿をみて唖然としていた
「…誘拐未遂犯と一緒にいるって聞いたから心配して急いで来たのに。随分と仲良くしているね?マナ?」
「えっと…えへへ。」
「お得意の魔性で黙らせたの?あまり関心しないなそのやり方は。」
「あはは…そんなに悪い人じゃないから心配しなくても大丈夫だよ?」
「マナの虜にして味方に引き入れたんだね?」
圧がすごい
怒っていらっしゃる
目が泳ぐ
「そうです…」
飲んでいたカップルドリンクを取り上げられて
ニックがごくごくと一気に飲み干してしまった
「自分の安売りをしてはいけません!!」
「ひぇ…」
「罪人に優しくしてはいけません!!」
「罪人と言っても未遂だし…」
「昨日出会ったばかりの罪人もどきと恋人ごっこして遊ぶな!!危機感なさすぎる!!」
「カップルドリンク飲んだだけなのに…」
「誰にも隙を見せないくせに赤の他人はどうでもいいからってサービスしすぎだろうが!!」
「カップルドリンク飲んだだけなのに…」
「好きな人とカップルドリンクなんて絶対やらないくせに!!」
「そんな恥ずかしいことやるわけないじゃん!!」
「そいつともやるんじゃない!!このバカ!!反省しろ!!男を誑かして遊ぶな!!」
「うぅ…誑かして遊んでないのに!!」
何故か説教されて怒られてしまった
カップルドリンク飲んだだけなのに