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第197話 変装

「有名人になんてなるもんじゃないよね。」

シャワーを浴びて服を着替え、マリオお兄様に髪をタオルで乾かして貰いながら言う

「たくさんの人の記憶に残ることは偉大なことだよ。」

「自己顕示欲っていうやつ?私には全くないから損しか感じない。」

「マナはすぐにモブになりたがるからな。」

「普通の日常が1番尊いのよ。有名になったら好きなカフェで食事することも出来ない。この豪華客船には楽しいことがたくさんあって遊びまくろうと思っていたのに。こんな無駄に広い部屋で人と会わないようにびくびくしながら過ごさないといけないなんて…」

「最近マナは1人になりたがってたじゃないか。ゆっくり1人の時間を過ごせばいいじゃないか。」

「わかってない!!1人の時間が欲しいとは思ってたけれど、今じゃないもん!!見てよ!!この私の浮かれたプールセットを!!水着は3着あるし、浮き輪とビーチボールとネッシーのフロートも購入して楽しみにしていたのに!!」

「プール貸切要望するか?」

「いやよ!そんなの!!権力で民衆の楽しみを奪うことなんて絶対やりたくないもん!!」

「じゃあ豪華客船では引き篭もり生活しとけよ。」

「やだやだやだやだ!!絶対遊びたいもん!!」

「どうすんだよ。」

「決まってるじゃない!変装よ!!」

「いや無理だろ…変装したところで美人すぎて浮くだけだし、マナが乗っているとみんな知ってるんだからすぐにバレるよ。」

「顔を髪の毛で隠せばいける!貞子みたいになればわからない!!」

「貞子って誰だよ…。顔を隠すならサングラスとかの方がいいんじゃないか?」

「サングラスなんてかけてたらあからさまに変装してるって思われるでしょう?すぐにバレるわよ!」

「髪でどうやって隠すんだよ。」

「ウィッグ持ってきて!」

マリオお兄様は大量のウィッグを持ってきてくれた

こんなにたくさん用意されていると言うことは元々私に変装させようとしていたのだろう

私は茶髪のロングウェーブのウィッグを手に取り

髪をアフロのようにアレンジして目元までアフロで隠れるようにセットする

「どうですか?マナってわからないですか?」

「ふーむ。目元が完全に隠れているのにも関わらず美少女オーラが出ている。まぁ…長時間は欺けないだろうけど短時間なら大丈夫そうだな。それにしても目元隠れすぎだろう。それって前見えてるのか?」

「全然見えない。めちゃくちゃ不便。」

「転んでウィッグが取れる未来が見える…」

「今夜のニックのディナーショーを見に行く時に変装してもバレないか実験しよう。」

「いや…バレたら迷惑すぎるだろ…」

「でもお客さんはニックを見ているから観客をじろじろ見たりはしないんじゃない?」

「そうかもしれないけれど失敗した時が迷惑すぎるからやめとけよ。」

「それもそうか…じゃあ図書室で本を借りてバレないか実験しよう。」

「そうだな。そうしよう。」

私は茶髪のアフロのウィッグに赤目のカラーコンタクト、身長を高くするシークレットブーツを履いて図書室へと向かう

護衛をべったりつけるとすぐにバレるのでいつものように影で見えないように護衛してもらう

豪華客船の中の図書室にも関わらずたくさんの種類の本があった

本に囲まれているこの雰囲気が心地よい

豪華客船でゆっくり本を読もうとしている人もちらほらいるようで図書室には10名程居た

私はいつも本を選ぶ時にはあらすじやジャケットを見て手に取るんだけど

前髪を重くしすぎて全然前が見えない

本を選ぶのにこんなに目元を隠したら不便すぎる

今更気づくなんてバカすぎるけど

今すぐ前髪を切ってこの図書室を練り歩きたい気持ちを堪えて

私はおすすめコーナーに足を止めてそこで本を選ぶことにした

おすすめコーナーの本を1つ1つ手に取って選んでいると

「その本面白いですよ。」

とスラッとした背の高い10代後半ぐらいの青年が声を掛けてきた

「ひゃあ!」

突然声をかけられてバレたかと思い、声が出てしまった

「俺、その本の作家の人のファンなんです。」

「あぁ…そうなんですね…」

声でバレないようにワンオクターブ上の声で会話する

「人の心情が丁寧に書かれていておすすめです。」

「じゃあ…この本にします…」

「よく本読まれるんですか?」

「いえ。最近は忙しくて全く読んでいないので、久しぶりにゆっくり本を読みたいと思って…」

「忙しい?もしかしてスカーレット学園の学生さんですか?」

「え…は…はい…」

学生だと知られたらまずかったか?

でも私の年齢で忙しいなんて学園に所属してないと辻褄があわない

忙しいなんて言うんじゃなかった

「スカーレット学園にはマナ様がいらっしゃるんですよね。学園内は部外者が立ち入り禁止ですからマナ様の存在は幻のように感じてしましたが…先程豪華客船のカフェにいらっしゃったみたいですよ。この豪華客船で一目会えればラッキーだなぁ。貴方はマナ様に会ったことはありますか?」

「遠目でなら…」

「いいなぁ!俺も遠目でいいから会ってみたいです。」

「貴方はマナ様に会う為にこの船に乗ったのですか?」

「いいえ。俺は毎年この船でキッカ国に旅行に行くんだよ。今年の船はマナ様も乗っているからラッキーだなぁ。」

「そ…そうですね…」

「俺の名前はルーク。貴方は?」

どうしよ

名前なんて決めてなかったけど

「シャ…シャルルです…」

「シャルル。綺麗な名前だね。シャルルもしよかったら一緒にプールサイドで海風に当たりながら本を読まないかい?俺の薦めた本の感想を聞きたいな。」

「え。」

まずいよね

どう考えてもまずい

でも…海風に当たりながら

本を読んで…

みたいなぁ…

ちょっとだけなら

こっちずっと見てるわけじゃないし

本を読むんだし

バレないかな…?

「楽しそうですね。いいですよ。」

私達は借りた本を抱えてプールサイドで本を読もうと椅子に座る

えっと…

私はやっぱりバカみたいだ

こんな前髪じゃ読みづらくてしょうがない

ふと隣を見るとシャルはもう既に本を読み始めていた

プールで遊んでいる人達もこちらを見る様子はないので

私は前髪を上にあげて本を読んだ

シャルが薦めた本は結婚相手の男性がバツイチで連れ子がいた

母親と連れ子が初めはお互いに遠慮しながら生活していたが

徐々に本当の親子としての絆を深めていく

感動する話だった

1時間程で読み終えて私はシャルの方を見ると

「…読み終わった?」

「はい。とても心が洗われるいい本でした。人に優しくありたいとか家族野大切さを再認識できるような素晴らしい本でした。おすすめして頂きありがとうございました。」

「…ありがとう。」

「?」

さっきまでフランクに話しかけてくれていたのに何故か他所よそしくなっていた

「どうかしたの?」

「本も読み終わりましたし、図書室に返しにいきましょう。」

「え?あ。うん。」

はぐらかされて私達は図書室へと戻り本を返却した

「こっちにおすすめの本があるので借りませんか?」

「じゃあそうしようかな。」

私はシャルについていく

図書室の奥の方につくと

周りに聞こえないように小声でルークは言う

「あの…マナ様。目元が見えたらすぐにわかるので気をつけた方がいいかと…」

「…バレちゃった?」

「はい…。プールで遊んでいる人達にバレるかもしれないと1時間ハラハラしましたよ…」

「えへへ…ごめんね?せっかくゆっくり本を読める時間だったのに。」

「いえいえ!本はいつでも読めますから!マナ様と過ごせたという事実だけで感激です!ただ気づかれたくないようだったので忠告したほうが方がいいと思って…」

「気を遣わせてごめんね。ありがとう。何かお礼するよ。何がいい?」

「え!?いいんですか!?」

「いいよ。」

「あ…あの!!俺と友達になってくれませんか!?」

私はびっくりして固まる

握手してとか

サインしてとかだと思ったのに

友達になってほしいなんて…

フフッ

「いいよ。よろしくね。ルーク。」

「わぁあ!!ありがとうございます!マナ様!」

「マナでいいわよ。」

「そんな!恐れ多いですよ。」

「友達に様は失礼じゃない?」

「えぇ!?」

「ほら。マナって呼んで?」

「マナ。」

「フフッ。これからよろしくね。ルーク。」


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