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第195話 入れ替わり-マナside4-

恋愛小説は予想外の展開になっていく

アザミがレイナに恋をして

2人は友達になり仲良く過ごしていたのに

アザミはレイナを独り占めしたいと願うようになり

裏ではレイナをいじめる主犯になってしまった

いじめられて孤立するレイナを

アザミが慰めてどんどん依存状態にさせていく…

マリアちゃんとなんでこんなに重い百合小説を勧めたんだ…

初めて読むのにハードすぎるよ!!

いや面白いけど!!

面白いけどさ!!

これ結末どうなるんだ…


教室では1人で恋愛小説を読んで快適に過ごした

放課後になり、部活動を始める

フェイ君は美術部なので

美術室へと向かう

ガラガラと扉を開けて

「失礼します。」

と挨拶をして入室した

部員は少なくフェイ君と

メモに書いてあるジャン君しかいないようだ

ジャン君はもう既に美術室に来ていて

油絵を描いていた

私はフェイ君メモに書いてあったフェイ君が書いている油絵を確認する

「え…凄い…」

私は絵を見て驚く

全然下手くそじゃないじゃん

メモに書いてある天使の絵は間違いなくこれだ

憂いある慈悲に満ちた微笑みの天使の絵は美しかった

メモには趣味で書いている絵なので適当に描き足して下さいと書いてあるが

こんなに素晴らしい絵を素人に描き足すなんて出来るわけない

「…君だれ?」

そう言うのはもう1人の美術部員のジャン君だ

私は不敵に笑って言う

「なんでわかったの?私がフェイ君じゃないって。」

「自分の絵に驚いているから。」

「アハハ!!確かに!!変だよね!!」

「双子の妹?」

「ノーノー!フェイ君はひとりっ子ですよ!」

「じゃあ変装の達人?なんの為にフェイ君の真似をしているの?」

「初めまして。私の名前はエラート・マナ。この世界で聖女やらせてもらってます。」

私はスカートの裾を上げてお辞儀をして貴族式の丁寧な挨拶をする

「マナ様?」

「はい。色々ありまして。神様の力でフェイ君と入れ替わり中です。」

「中身が違うの?」

「そうです。」

「信じられない…。そんなことが可能なの…?」

私は目の前で白魔法を披露する

ジャン君に白魔法をかける

ジャン君は眼鏡をかけていたが、視力が改善されて

裸眼でよく見えるようになった

「ね?正真正銘の聖女でしょう?」

「凄い…これが白魔法…」

「えへへ。褒めて頂き光栄です。」

「マナ様が今日は絵を描かれるのですか?」

「フェイ君にこの天使の絵を描いて欲しいと言われてるんだけど…さすがに油絵をやったことない私が手を加えるなんてこと出来ないや。」

「では今日はもう帰られますか?」

「せっかく美術部に入部したのだから何か描いてみたいな。」

「それではデッサンはどうですか?」

「おお。いいねぇ。」

ジャン君はデッサン用に花瓶に花を生けて用意してくれた

「ごめんね。ありがとう用意してくれて。」

「いえ。僕もたまには違うことをして息抜きしたいので丁度良かったです。」

ジャン君は私と一緒に花のデッサンをやってくれるらしい

なんて優しい子なんだ

私が苦戦して描いているとアドバイスをくれる

ジャン君に教えて貰いながら描く花の絵はとても楽しかった

「ねぇ。こうやっていつも2人で仲良く談笑しながら描いているの?」

「いいえ。僕もフェイ君も挨拶だけです。絵を描いている時はお互い話したことはありません。」

「それなのによくわかったね。フェイ君じゃないって。」

「フェイ君は…自分の絵を褒めたり絶対にしませんから。」

「そうなの?」

「僕が1回褒めたんですよ。素敵な絵だねって。」

「うん。」

「“僕は素敵な絵なんて思えない”って言われたよ。」

「えぇ…こんなに素敵なのに。」

「フェイ君はきっと何を描いても満足出来ないタイプなんだと思う。完璧主義なんだろうね。」

「損な性格してるなぁ。」

「そんなフェイ君が自分の絵を見て驚いて感動してるんだから…すぐにわかったよ。別人だってね。」

「今日誰も気づいてくれなかったから嬉しい。」

「入れ替わりなんて普通誰も気づかないですよ。」

「だって…挨拶程度の関わりしかないジャン君は気づいてくれたじゃない。」

「それは…そうですけど。」

「フェイ君を見てくれていたから気づいてくれたんだ。だから嬉しい。」

「この入れ替わりは誰が気づくかの実験の為なんですか?」

「そんなんじゃない。フェイ君が私になってみたいって言うから神様にお願いして1日だけ入れ替わりしてるだけ。」

「フフッ。フェイ君は美に対して異常に信仰心があるからね。美しくあれば何もかも上手くいくと思っている節がある。」

「今日思い知ったみたいだよ。可愛くてもいいことないって。」

「それは世界が変わったかのように価値観が崩れてますね。今度フェイ君に会うのが楽しみになってきたな。」

「友達になってあげてね。友達がいないって嘆いてたから。」

「え?僕は友達のつもりでしたけど…」

「そ…そうなの!?」

「あれ?僕達結構仲良いと思ってましたよ?」

「挨拶程度しかしないのに?」

「絵を描く時にペラペラ喋るやつなんていないですよ。」

「今は?」

「マナ様は別です。」

「なんで仲良しだと思ってたの?」

「僕達は絵で会話してましたから。2人きりで2時間毎日過ごしてるんですよ?仲良くないと出来ませんよ。」

「そ…そっか…」

絵で会話するという謎のパワーワードに戸惑う

それ絶対フェイ君には伝わってないと思うとは言えなかった

私はなんとか花の絵を完成させる

「どうでしょうか。ジャン先生。」

「うん。素人ならこんなもんかな。」

「あ…ありがとうございます…。」

褒められているのか貶されているのかわからない謎のお言葉を貰う

「じゃあ僕もそろそろ帰るね。」

「あの…!!フェイ君のこと好きですか?」

「当たり前じゃないですか。大事な友人ですよ。僕は今日マナ様でがっかりしているんですから。」

「あの…!!大好きだってフェイ君に伝えてあげて下さい!!お願いします!!」

「えぇ…照れくさいこというなぁ。さすがは聖女様だ。僕達は絵で会話出来ているから大丈夫ですよ。」

「フェイ君は言葉で言われることに喜びを感じるタイプなんです!」

「そうなんですか?」

「はい!」

「じゃあ明日から言葉にして伝えてますね。マナ様には目を治して頂いた恩義がありますし。」

「あの!私とも友達になってくれますか?」

「うーん…。価値観があわなさそう。ごめんなさい。」

友達になろうと勇気を持って言ったのに

まさか断られるなんて思ってなかった…

こうやって人から拒絶されることが多い人生だったのかなフェイ君は

でも…ジャン君は私よりフェイ君の方が好きみたいだけどね

世間に流されず

自己を確立していて

自分の意見を素直に言うことが出来る

ジャン君がフェイ君の親友になれば

楽しくて仕方ない学園生活になるだろう

「去年の文化祭見ましたよ。マナ様のステージ。」

「え?」

唐突に話題が変わる

ジャン君の独特の会話ペースが慣れない

「僕はアイドルのマナ様より、ピアノを演奏しているマナ様の方が好きだな。」

「やっぱりクラシックの方が芸術的だからかな?」

「そうじゃなくて。偽物の貴方の魅力より、本物の貴方の魅力がいいと思いましたよ。」

「えっ…あ…ありがとう…」

「友人になれないと失礼なことを言いましたが、マナ様のことを嫌いなわけじゃないので。」

「うん…ありがとう…」

友人になることを断ったことに罪悪感があるようだ

嘘でもいいよとは言えない人なのだろう

生き辛そうだ

「フェイ君のように穏やかな人がいいですね。僕は。」

「うん…フェイ君がジャン君に大事にされていてよかった。」

「また文化祭でピアノ聴きに行きます。楽しみにしています。」

「ありがとう。また入れ替わった時、一緒にデッサンしてくれる?」

「もちろん。絵を描く楽しさが少しでも伝わると嬉しいです。」

そう言って私達は部室を出て寮へと帰った



次の日、私は魔塔の自分の部屋で目が覚める

マナの姿に戻った

また世界の運命を背負った生活に戻る

朝から夜まで慌ただしい

エラート・マナの生活に

それでも少しだけでもいいから1人の時間を設けよう

今回の入れ替わりで読み始めた恋愛小説の続きが読みたいから







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