第192話 入れ替わり-マナside -
「やだ…僕…世界一可愛い…」
朝起きて鏡を確認するとマナではなく、フェイ君になっていた
「奇跡の可愛さ…ミラクル…人間国宝…」
私は鏡に映ったフェイ君に見つめてうっとりする
何時間眺めても飽きないよ
とは言っても学園に行く準備をしなくてはいけないので
フェイ君から貰ったメモを見て朝の準備をする
寝癖のアホ毛がぴょこんとたっているので
髪をとかして寝癖を直そうとするが
何度櫛を入れても直らない
「えぇ…なにこれ…頑固な髪だなぁ。」
寝癖を水に濡らしたりして頑張ってみたが全然寝癖が取れなかった
めんどくさくなってきた
シャワーしてドライヤーで乾かそう
脱衣所で私はパジャマを脱いで下着も全て脱いでシャワー室へと入る
「ひぇ…何このほっっそい腰は……」
ぺらぺらじゃん
肉食べてんの?
王族のくせに贅沢な食べ物食べてないの?
しかも、肌白すぎる
そして…ついてる
フェイ君にも立派ないちもつが
でもなんだかやらしい気持ちにはならない
もはやアート
芸術
ダビデ像にも勝てる逸材の美少年だ
私はシャワーを浴びて髪をドライヤーで乾かすとやっと寝癖がなおった
そしてメモ通りに化粧品を使う
化粧水をつけてから乳液をつけて…
これで本当にあってるのか?
なんか顔がびしゃびしゃになっていく
最後にパックをして
目を閉じて5分程このまま動いてはいけない
…いやこれなんの拷問?
5分間このまま動いたらダメなの?
これを毎日フェイ君はやってるの?
超人かよ
耐えきれなくて2分でギブアップした
2分も5分も誤差だから大丈夫大丈夫
やっと終わった〜と思ったらまだメモには続きがあった
次にUVクリームを塗って
ファンデーションの下地を塗って
ファンデーションを塗って
パウダーを塗って
アイブロウをして
マスカラをして
チークをして
リップをする
…くそめんどくさいので見なかったことにした
素材が完璧だから大丈夫だよね
朝食は寮の食堂で食べるようなので
私は制服に着替えて食堂へと向かった
食堂に入ると美少年のフェイの登場に視線が突き刺さる
私は笑顔で
「おはようございます。」
とにっこりと微笑んで挨拶をした
全員こちらを見ていたのに全員急に真っ赤になり目を逸らして俯いてしまった
朝から美少年スマイルは彼らには刺激が強すぎたようだ
美しすぎると罪だなぁ…
食堂のおばちゃんに
「すみませーーーん!モーニングAセットのハンバーグ定食お願いしまーーーす!!」
「え?」
「え?」
「いや…いつもはサラダしか食べないから…」
「えぇ!?そうなんですかぁ!?」
「自分のことじゃないの。」
「そうでした!今日は肉を食べたい気分なんで!筋肉つけて目指せダビデ像って感じです!」
「肉体美に目覚めたの?」
「そうです!もりもり食べますよお!」
「いつも無口なのに…今日は明るいわね。」
「えへへ!!」
ハンバーグ定食を食べて終えて学園へと向かう
朝礼までまだ時間があったので図書室へと向かった
「あ!」
図書室にはとても懐かしい人を見つけた
「マリアちゃ〜ん!!お久しぶりです〜!!」
アーネルド・マリア
前世は葉月ちゃん
私と入れ替わりを行った最初の人物で
人生最大の恩人だ
マリアちゃんはこちらを見てとても驚いた表情をしていた
なんでだろう?
…あ!
私は今マナじゃなくてフェイ君じゃん!!
マリアちゃんはフェイ君と話したことあるわけないし
そりゃびっくりするよ!!
「あ…あわわ…人違いでござんす…すまんでごわす…」
どう誤魔化したらいいのかわからずパニックになり口調が変になってしまった
マリアちゃんはにっこりと微笑み話す
「久しぶり。マナちゃん…いや…今は華ちゃんと呼んだ方がいいのかな?」
しっかりと見抜いてくれた
さすが前世からの古参ファンは凄いな
「よくわかったね。私だって。」
「わかるよ。どんな姿になっても華ちゃんは変わらないもの。」
「何読んでるの?」
「今日はミステリー小説よ。こっちの世界の作家もとても面白いわよ。」
「そんなんだぁ!おすすめの作家の方とか教えてよ。」
「うーん…。華ちゃんが好きそうなのはこれかなぁ。」
そうやっておススメされた本は知らない美少女の写真集だった
「マリアちゃんの中の私のイメージって…」
「好きでしょう?」
「好きだけど。」
「ほら。私は華ちゃんのことならなんでも知ってるんだから。」
「これをおススメされると恥ずかしい…」
「好きなくせに。」
「好きだけど!!!」
「まぁ冗談はさておき。この恋愛小説とかおススメするわ。」
「どんな内容なの?」
「それは読んでからのお楽しみです。」
私はおススメの恋愛小説をぐいっと胸に押し当てられてこの本を借りるように促される
「じゃあこれにしようかな。ありがとう!読むのが楽しみだなぁー。」
「フフッ。変わらないわね。華ちゃん。」
「そうかな?前世と比べたら別人だと思うけど。佐々木華はこんなに傲慢じゃなかったし、我儘じゃなかったよ?」
「そうでしょうか?華ちゃんも傲慢で我儘だったと思うけど。」
「え?そんなことないよ?人に合わせて空気読んで行動してたし…」
「ハハハッ!それは今もでしょう?」
「…。」
「華ちゃんはね。どんなに世間から低俗なセクハラをされようが、嫉妬で怒り狂う人にいじめられようが…決して折れない強さがあった。“自分”であることにこだわり続けた。世間の価値観とは違っても、自分の価値観を絶対に曲げなかった。誰よりも傲慢で我儘だったよ。」
「そんなことないよ。佐々木華はもっとメンタル弱かったし…」
「ハハハッ!それは今もでしょう?」
「…。」
「変わってないよ。華ちゃんは。誰よりも傲慢で我儘で。それ故に誰よりも正しく美しい。」
「私は間違えてばかりだよ…。」
「フフッ。私との入れ替わりが失敗したこととか?」
「それもそうだし…。他にも色々…」
「終わりよければ全てよし。」
「え?」
「失敗のない人生なんてない。今ある失敗は未来にある成功の為。華ちゃんの望む世界が間違ってるなんてありえない。」
「買い被りすぎだよ。」
「華ちゃんは前世も今も変わってないよ。変わったのは周りの環境だけ。たくさんの人に愛されて、たくさんの人に嫌われる。前世も今世もおそらく…来世もね。」
私は思った
古参ファンは痛いとこついてきて
困るなって