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第190話 入れ替わり-フェイside3-

「あら、今日はとっても可愛らしいじゃない?マナ。」

僕が教室に戻るとローズ様が声をかけてくれた

「えへへ…頑張って編み込みしてみました。」

「とてもよく似合ってるわよ。可愛いじゃない。」

「ありがとうございます!」

酷い目に遭った後にローズ様が優しく声をかけて

僕を褒めてくれるなんて

嬉しい!!!

僕はずっとずっとずっっっっとこうやって

ちやほやされて可愛がられたかったんだ!

マナ先輩がローズ様に懐いている意味がわからなかったけれど

こんなことされたらメロメロになっちゃうよ

マナ先輩がローズ様に夢中になる理由がわかったよ

心のオアシス

癒される…あとめっちゃいい匂いがする

「さっきクリスにまた連れて行かれてたけれど大丈夫だった?」

「えっと…ちょっと酷い目に遭ったのでマリオ様が助けてくれました。」

「ハァ!?クリス…!!!本当に最低な野郎ね!!!」

「怖かったです…。マリオ様がいなかったらどうなっていたか…」

ローズ様が僕の頭を撫でてくれる

「可哀想に…。あんなケダモノに近寄ったらダメよ!?」

僕はローズ様の腕に抱きつく

「フフッ。マリオ様と婚約してからあまり抱きついてこなくなったから…こんな風に甘えてくれるのは久しぶりで嬉しいわ。そんな遠慮がちにしなくても前のように正面から抱きついてもいいのよ?」

そう言うとローズ様は僕の全部を優しく抱きしめてくれた

嬉しい

こんな風に誰かに愛されたかった

優しく抱きしめて欲しかった

いい匂いがする

暖かい

ずっとこうしていたい…


ベリっと僕達は引き剥がされた

「…ローズは俺の婚約者だからあまり抱き付かないでほしい。」

そう言って先程助けてくれたマリオ様が僕達を引き剥がした

「妹のマナに嫉妬しなくてもいいじゃない…。」

ローズ様が言う

妹のマナ?どういうことだ?

「今日は…俺の妹じゃないから。」

ずっと護衛しているマリオ様は僕達の入れ替わりのことは筒抜けで知っているようだ

ぐいっとローズ様の肩をマリオ様が抱く

「…心が狭くてごめん。」

「そんな!私は…嬉しいです。マリオ様。」

目の前でイチャイチャラブラブと見せつけられた

惨めだ

マナ先輩の見た目に変わっただけで

みんなに愛されるなんて幻想だった

マナ先輩が愛されているのは

見た目の可愛さだけじゃない

マナ先輩だから…

マナ先輩が人から愛される性格だから

みんなマナ先輩が好きなんだ

見た目だけマナ先輩になっても

すぐに偽物だと見破られるのは

本物のマナ先輩が愛されている証拠

偽物の僕は見た目が変わったぐらいで愛されることはない

誰からも


昼休みになり僕は生徒会室へと向かう

マナ先輩と一緒にサンドイッチを食べる為に

「フェイ!どうだった!?入れ替わりは!!」

「…いいことなんて何もなかったよ。」

「アハハ!!ほら!!言ったじゃん!私になってもそんなにいいものじゃないって!!」

「…ほとんどの人にマナ先輩じゃないってバレました。マナ先輩になれば愛してくれると思っていた僕が安直すぎましたね。痛い目に遭いましたよ。最悪の気分です。」

「え?そうなの?まぁ…入れ替わりは初めてじゃないから違和感があればすぐに気付かれちゃうかぁ。」

「以前も入れ替わりを!?」

「神様とマブダチだからね。」

「神様と友達になれるなんて…聖女って凄いんだね…」

「いや…そんな大したことじゃないよ。」

けらけらと笑いながらマナ先輩は言う

姿は僕だからすごく違和感を感じる

僕はこんな風に無邪気に笑ったりしない

僕ってこんな風に笑えるんだな…と思った

「私はね!最高に楽しいよ!!入れ替わってくれてありがとう!!」

「そうですか。マナ先輩が喜んでくれたなら少しは救われました。誰も得しない入れ替わりなら代償を払ってやった意味がないですからね…。」

「フェイ君って基本ぼっちなんだね!誰からも話かけてこないからさ!本当に快適だよぉ。こんな風に1人でゆっくり過ごせるなんて…前世ぶりじゃないかな?」

にこにこと上機嫌でマナ先輩は話す

「どうせ僕は誰も友達がいないぼっちですよ…」

落ち込んでいるときに人の傷口を抉るような発言は控えて頂きたい

マナ先輩のこういうデリカシーがないところ本当に嫌い

「あ!この前フェイ君のこと気持ち悪いとかいう暴言を吐いていたやつにまた言われたからさ!言い返してやったよ!!陰でこそこそ陰口言うオメェの方が気持ち悪いんだよって!!」

「ええ!?ちょっと!!何やってんですか!!」

「だってむかついたんだもーーん!!!」

僕の頬がひきつる

「あまり目立つ行動はしないで下さいよ!」

「大丈夫だって!話したのはそれぐらいだし。後はずっと本を読んでたわよ。こんな風にゆっくりと読書出来て嬉しい…。誰も構ってこないなんて最高。1人の時間ってやっぱり必要よね〜。」

「僕は1人の時間が嫌い。誰かと一緒にいないと寂しい。」

「そうなんだ。じゃあ友達作ればいいのに。」

「…そんな簡単に言わないで。僕みたいな存在は受け入れてくれる人は少ないんだ。気持ちが悪がられて遠巻きにされるだけだよ。」

「それはフェイ君がそう思ってるだけでしょう?フェイ君が自分から話しかけたりしたの?」

「それは…でも…僕なんかに話しかけられてもみんな嫌がるだけに決まってる。」

「そんなのわからないじゃない。やってみないと。」

「友達になりたくて!恋人になりたくて!!僕が話かけて拒絶されたら…僕はどうなるの?耐えられないよ!そんなこと!!マナ先輩のようにみんなが仲良くしたいって思われる存在じゃないんだ!!そんなこと簡単に言わないで!!!」

「そうは言っても…友達も恋人も欲しいんでしょう?黙ってるだけじゃ出来ないよ?」

「それは…」

そうだけど

でも怖いんだ

女装してる男が

男が男に恋をする存在が

誰が仲良くしたいと思うのだろう

こんな気持ち悪い僕を

友達になんて

恋人になんて

誰もなりたいわけないじゃないか

「私がいるから。」

「え?」

「どんなに傷ついても辛い時でも私が側にいてあげる。大丈夫だよ。だから…話かけてみようよ。友達を作る為に。恋人を作る為に。人間関係なんて全て上手くいってる人なんて誰もいないんだから。失敗ばかりだよ。みんなね。だから…傷ついても私がいるから。慰めてあげるから。頑張ってみなよ。」

「こわいんです…僕は気持ち悪い存在だから…」

「そんなことない。フェイ君は世界一可愛いよ。」

「マナ先輩だけでしょう?そんなこと言ってくれるのは。」

「きっとたくさんいるよ。今は世界が狭いだけ。大丈夫。この世界は素晴らしいんだから!!!」

涙が溢れる

勇気が湧いてくる

マナ先輩が言うと本当にそんな気がしてくる

「私はね。フェイ君の信念が好き。自分の本来の姿を隠さず堂々と存在を示してる。フェイ君の気高さがカッコよくて好き。大好きだよ。フェイ君は愛し、愛されて幸せになれる。絶対にね。私の言霊おまじないは効くのよ?信じて頑張ってみてよ。ね?」

マナ先輩が愛されるわけだよ

こんな殺し文句を言われて

好きにならない人なんていない

僕のように誰かを救ってきたのだろう

これからも誰かを救うのだろう

これからもたくさんの人に愛されるのだろう

マナ先輩のようになりたい

マナ先輩のように愛されたい

そう思っていたけれど

僕はこんな聖女のようにはなれないな

僕は僕のままで

僕の存在を愛してくれる人を

探すんだ

見つけるんだ

自分の力で

失敗しても大丈夫

僕には最強の聖女様がついてるから

「マナ先輩。僕のこと好き?」

「大好きだよ!世界で1番可愛いよ!」

「僕は愛されるかな?」

「こんなに可愛い子を世界中の人類がほっとくわけないよ!!可愛いは正義!可愛いは正義だから!!!」

「フフッ。ありがとう。マナ先輩。マナ先輩を信じて…頑張ってみるよ。」

僕は世界中に愛される存在だと信じてみよう

この世界最強の聖女様のお墨付きだから…ね




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