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第184話 決勝

マナは自己肯定の低い人間だ

外見の可愛さと、聖女としての肩書きが

マナの強みであり弱みだ

初めて会った人間に

“マナ様は素晴らしい人に違いない”

“マナ様は立派な人だ”

“マナ様の心は誰よりも美しい”

そんな風に思われることに

気持ち悪さと苦痛を感じている

マナは自分のことを

怠け者の

心の醜い嫌なやつだと思っているので

人からの評価の違いに戸惑うのだろう

“私のこと何も知らないくせに”

“私のことを好きだなんて言わないで欲しい”

これはマナの口癖

人からの好意を表面的に見られていると感じて

不信に思うようだ

外見も白魔法も神様からの贈り物で

自分が努力して手に入れたものではないから

信用していない

自分の力ではないように感じるのだろう

努力して手に入れたものしか

マナは信用出来ない

だから…マナはピアノを弾く

努力して上手くなれる

成長を実感出来るからだろう

ピアノだけはマナを肯定してくれる

唯一の手段なのだから

だから…コンクールに参加させた

全てはマナの自信をつけさせる為

努力してわかりやすく結果を出せるから

外見や白魔法関係なく

ピアノの上手さだけで順位が決まるから

優勝させて自信をつけさせたかった

正直…ピアノコンクールの実績がなくても

マナは人を集めることが出来る

その可愛らしく美しい外見と

世界唯一の聖女という肩書きだけで

多くの人がマナの演奏を聴きにお金を払って見にきてくれるだろう

でもそれではダメ

実績がないのに人を集めても

喜ばないし、不信が募ってピアノを辞める可能性だってある

それだけは阻止しないといけない

マナのピアノは素晴らしいんだ

誰よりも大きな舞台で

大人数の客席を埋めて演奏できる才能ある人なんだ

自信をつけさせたい

誰もが認めるような実績が欲しい

外見でもなく

聖女でもなく

マナの演奏を聴きにきたんだと

マナが信じてくれるように


一次予選の時は正直通過するのは絶望的だと思っていた

奇跡的に通過出来たのが良かった

綱渡りだっなけれど、マナは決勝まで残ることが出来た

決勝まで残ればもう心配はしていない

決勝の曲こそマナの魅力を引き出す真骨頂

決勝では技術よりも表現力を評価される

そうなればマナの得意分野だ

技術はまだ課題だらけだけれど

表現力は誰よりもずば抜けていい

プロのピアニストも圧倒して飲み込まれるような

化け物じみた表現力なのだから


「いよいよだね。ニック。最後に私にかける言葉ある?」

決勝前、俺にマナは語りかける

「会場の客席全員虜にしてやれ。他の参加者の心全員バキバキに折ってこい。」

マナはにっこりと微笑み答える

「おっけー。私が会場全ての人間を虜にして、参加者全員の心折ってくるから。ちゃんと見ててね。」

俺はいつも通りマナの背中を押して送り出す



ドビュッシー:月の光


音が光の粒のように光っているような錯覚

1音、1音が会場中に綺麗に響く

観客も参加者も審査員も

マナの虜だ


決勝だけは舞台上で、名前が呼ばれる

マナは緊張した様子で手を合わせながら聞いていた

「優勝は…エラート・マナ。」

優勝のアナウンスがされた

「よっしゃああああああああ!!」

マナはガッツポーズをして喜ぶ

努力が報われて評価されたんだ

今までにないほど喜んでいた

「おめでとう!マナ!!」

「ニック!!私やったよ!!ニックありがとう!!」

マナは俺に抱きついて喜ぶ

俺もマナに抱きついた


やった…マナはもう立派なピアニストだ

俺と一緒に音楽で生きていける

キッカ国で2人で音楽を極めるんだ

ルナは音楽を愛している

だからきっと音楽を選ぶ

だからきっと俺を選ぶ















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