第182話 一次予選
「おい!!音が流れてるぞ!!楽譜通りにちゃんと弾け!!明後日本番なのにそんなんじゃ一次予選通過出来ないぞ!!!」
マオが魔王になろうが
クリスに恋に堕ちようが
水族館で課外活動を楽しもうが
関係なく私は部活でピアノコンクールの練習をしていた
「だって!!こんな超絶技巧の曲弾くの大変なんだもん!!」
「簡単に弾ける曲がコンクールの課題曲になるわけないだろう!?」
「難しいの!!指が動かないの!!」
「明後日が本番なのに…こんなに不安なまま挑むなんて…」
「うるさいなぁ!初めてピアノコンクール挑むんだから仕方ないじゃない!!」
「今回は勉強として来年本腰で頑張るか…」
「ちょっと!!ニックが今回のコンクールで優勝させて一緒にキッカ国へ行こうって言ったから4ヶ月間やりこんで必死に練習したのに始まる前から諦めないでよ!!」
「この出来で前向きなのはマナの良いところだよ。失敗は成功の元だって言うし全力で頑張れば来年に繋がるから。」
「ううう…。こんなに練習したのに…!!!」
「実力勝負だから仕方ないよ。」
一次審査の課題曲が1番きつい
私のようなにわかピアニストをふるいおとす為に作られたような曲だ
指が回らない
きつすぎる
これでも1番練習した曲だから人生で1番上手くは弾けているんだけど
コンクールで通過出来るほど上手くはない
現実はそんなに甘くない
それでも追い込みで諦めずに最後まで練習した
2日間はあっという間に過ぎて今日はピアノコンクールの一次予選の日だ
「やれることはやった。今マナができる全てはやったんだ。マナはよく頑張っていたことを俺は知っている。全部出し切ってこい。」
本番前の舞台袖でニックが私の背中を押してくれた
「見守っててくださいね。今の私の全力を。」
下手くそだけど
確実に前に進んでいる
今の私を
プロコフィエフ:4つの練習曲 Op.2
すぅ…と息を吐き呼吸を整える
完璧にとは言わないけど
この曲を弾けるようになったことは
私はにとっては大きな成長だから
今ここで全ての因果を
このピアノに込めて
私は全力で弾く
指は相変わらず上手く回らなかったけれど
最後まで集中して弾くことが出来た
今出来る全てをニックに見せる為に
弾き終わり、私はお辞儀をして舞台袖へと移動した
「ど…どうでしたか?私の演奏。」
私はニックに尋ねた
「技術力はまだまだだね。」
「終わった後ぐらい素直に褒めてくださいよ。」
「よくやった。」
そう言って私の頭をポンポンと撫でてくれた
「フッ。子供のピアノの発表会の褒め方じゃない。」
「まだまだプロとは呼べないお子ちゃまだからな。」
私達は一次予選の通過の結果を待つ
予選通過者の名前が紙に張り出されるのを見に行った
「え…通過してる!!ねぇニック!!私通過したよ!!」
「信じられない…あんなに下手くそだったのに…」
「ちょっと!!めちゃくちゃ失礼な本音が漏れてるよ!!」
「150人中50人が通過したのか。本当にギリギリ50位だっただろうな…」
「もう!!通過したんだから!!もっと褒められたかったのに!!」
「凄い運が良かったな。おめでとう。」
「実力だから!!実力主義の世界だから!!!」
奇跡的に一次予選を通過することが出来た
私のこの4ヶ月間の猛特訓が報われたのは本当に嬉しい
「二次予選も頑張って通過するわよ!」
「二次予選の曲も苦手のくせに…」