第18話 運命のおねだり
「白精霊様!お願いがあります!!」
声が震えながらも大声で呼ぶ
「私の話を聞いてくれませんか?」
「いいって言ってるよ。」
聖杯からアルテミスが通訳してくれる。
「ありがとうございます。私のことを選んでくれてありがとうございます。私のことを愛してくれてありがとうございます。でも…今から白精霊様に辛いお願いをしてしまいます。…申し訳ございません…。」
涙を流しながら言葉を続ける。
「私の魂は本来はこの体ではありませんでした。私の友人であるこの世界のヒロインのサナという女の子が私の為に入れ替わってくれたのです。サナは私の我儘なのに私の為になるならって喜んで入れ替わりをしてくれました……。私が今白魔法の覚醒をするとヒロインのサナに魂を戻されてしまいます。お願いします!私はアーネルド家の令嬢でいたいのです!どうか白魔法の覚醒はサナという女の子にして頂けませんか?」
「怒ってる…絶対嫌だって…」
雲が黒くなり、今にも大雨が降り出しそうになってきた。黒い雲から雷が落ち、白精霊が怒っていることがわかる。でも…まだ…諦めない!!
「本当にごめんなさい!でも…サナちゃんはとてもいい子なんです!!私の為にいつも優しくしてくれました。サナちゃんが辛い思いをしているのに私の為にやってくれました。あの子こそこの世界の真のヒロインだと思います。私の幸せを願って自己犠牲になったサナちゃんをどうか白魔法に覚醒させてあげてください!」
「マリアが好きだから離れたくないって行ってる。」
外は大雨が降り、嵐のようになってきた。
「私も白精霊様のこと愛しています!」
外の雨が止んだ。
「愛しています。大好きです。一緒に…いられなくてごめんなさい…。愛してくれたのに…突き放すことを言ってごめんねなさい…私の我儘に…付き合わせてしまってごめんなさい…分かっているんです…本来はここの魂は葉月ちゃんのものだってこと…ここのアーネルド家の人達は優しくて暖かくて穏やかで葉月ちゃんの家族のようでした……葉月ちゃんはアーネルド家の人間で私は場違いだってずっと思っていました…。でも…アーネルド家の人達に愛して貰って…私もアーネルド家の一員だって認めて貰えて…嬉しかったんです…葉月ちゃんじゃなくて私がアーネルド・マリアなんだって…今なら胸を張って言えるようななったんです…!私まだここにいたい!私はアーネルド・マリアとしての人生をこれからも歩んで行きたい!!白精霊様お願いします!私の勝手な我儘は百も承知です!どうか白精霊の覚醒は葉月ちゃん…いいえ!この世界のヒロインサナちゃんにしてあげて下さい!!」
「…マリアを世界で一番愛しているって。マリアと離れる事はとても辛いけど……マリアの望む所に行くって…」
「ありがとうございます!愛してくれてありがとう。傷つけてごめんなさい…本当にありがとうございます…。」
キラキラとした白精霊の光が私の周りを囲む。綺麗な白の光…とても穏やかで暖かい。
「…白魔法の覚醒はしないけれど、代わりに加護を授けるって…魔物から襲われることはなくなり、他の精霊の力を強めることができるよ。」
「ありがとうございます…白精霊様の力大事に使わせて頂きます…白精霊様…サナちゃんは本当にいい子なんです。私より清廉で潔白で店自己犠牲が強い…私の方が単純バカなだけで誰よりもここ優しく強いのはサナちゃんです。どうか…サナちゃんのこと店よろしくお願いします…私の大事な友達なんです…サナちゃんのこと助けてあげてください…この世界の誰よりもヒロインに相応しい人ですから…サナちゃんのことたくさんたくさん愛してあげてくださいね…」
そう伝えると白い光はなくなり、どこかへ消えてしまった。
まだ涙は止まらない…でも成功した…終わったのだ…外の天気も穏やかになり無事に終わったことがわかる。
「マリアお嬢様〜!!」
レイが泣きながら抱きついてきた。
「マリアお嬢様〜本当によかった…本当に…また一緒に暮らせます…これからずっと一緒ですからね…」
「うん…ずっと一緒だよ…」
あの時言えなかった言葉がやっと言えた。あぁ私はアーネルド・マリアとしてこれからも人生を過ごしていけるのだ。まだまだ涙は止まらない。アリサも側でずっと泣いている。
「アリサ…アリサが考えてくれた作戦のお陰だよ。私一人では絶対に出来なかった。本当にありがとう…」
「私も…また…マリアお嬢様とご一緒にいることが出来てよかったです…怖かったのによく頑張りましたね…」
「マリアお嬢様〜今回の作戦の初案は俺ですよ〜」
「そうだね。レイがお願いすることを提案してくれなかったらきっと私は今入れ替わってたと思う。本当にありがとう。レイ。」
「マリアお嬢様〜本当によかったです〜」
三人とも泣きながら成功したことを安堵していた。
「お嬢様…私達からの七歳のお誕生日のプレゼントがまだですよ。」
そう言えばまだ貰っていなかった。そう言ってアリサが私にプレゼントを渡した。中を開けてみると
「日記帳…」
「これからもずっと一緒の証です。」
こういうのを胸がいっぱいって言うんだろうな。
「ありがとう…アリサ…愛してる…」
抱きついてほっぺにキスをする。
「俺からもプレゼント受け取って下さい。」
レイからのプレゼントを開けるとハンカチが入っていた。刺繍がされており、刺繍の柄は…私とレイ…?
「俺が刺繍したんですよ。これからも俺とマリアお嬢様はずっと一緒の証です。」
刺繍なんてやったことないだろう。でも私の為に一生懸命作ってくれた。レイが作った刺繍は初めて刺繍したとは思えない程完成度が高かった。顔も良く似ているし、服装なんてとても複雑なのに綺麗に縫われていた。
「レイ…ありがとう…」
抱きついてほっぺにキスをする。
「俺には?」
「え?」
「アリサには愛してるって言ってたのに俺には言ってくれないんだですか?」
「フフフッレイも愛してる!」
本当に今日の七歳の誕生日が最高の日として終わった。お昼は家族みんなとお屋敷の使用人のみんなに誕生日を祝って貰って、夜は無事に入れ替わることなく、白精霊を説得することが出来、アーネルド家でこれからも過ごせることになった。これ以上の幸せはないんじゃないかと言うぐらい充実感でいっぱいだった。
「本当に凄いね…流石は最強の愛されヒロインだよ…僕でもちょっと引いちゃったぐらいだ。」
アルテミスが聖杯から話をする。
「アルテミスも通訳してくれてありがとう!アルテミスのお陰で交渉することが出来たよ!」
「僕には?」
「え?」
「僕には愛してるって言ってくれないの?」
「もちろんアルテミスのことも愛してる!」
世界中の人に愛を伝えたいぐらいだわ!最高の気分のまま寝床に入る。
「ねぇ!今日は久しぶりに三人一緒に寝ない?」
「ええ!!お嬢様様と二人きりならまだしもアリサも一緒となると色々まずいですよー。アリサも俺ももう十八歳ですからー」
「そっか…残念…」
「いいですよ。」
アリサが言う
「え!!」
「私とレイはどう転がってもそんな恋仲になるような関係ではないですし、私はいいですよ。お嬢様の頼みですからね。」
「アリサがいいんだったら俺だって大丈夫ですよ!俺は紳士ですからアリサを襲ったりなんて絶対しないです!」
「ところでレイ。、さっきマリアお嬢様と二人で寝るのはいいって言っていたけど、どういうこと?いいわけないじゃない。レイまさか二人でベッドで寝たり今もしてるんじゃ…」
ギクッとレイが動揺する。
「マリアお嬢様はまだ六歳の子供だよ?寂しくて眠れない時もあるじゃないすか…ね…?それに隣で寝てる方が護衛もしやすいし…」
「マリアお嬢様やっぱりこいつは変態護衛騎士ですよ。今すぐ解雇することをお勧めします。」
「すみませんでしたーーーーーー!!!」
「いいじゃんもー!今日は喧嘩なんかしないでさ!三人仲良く寝ようよ。ね?」
「フフフッわかりました。久しぶりです。お嬢様と一緒に寝るのは。どこかの変態護衛騎士はずっと一緒に寝てたみたいですけど」
「ぐっ」
「もぅーすぐ喧嘩するんだから〜」
二人をベッドに引きづり込む。
「お嬢様まだパジャマに着替えてないですよ。」
「えへへ〜そうだったねー!」
すぐに三人ともパジャマに着替える。そして仲良く三人でベッドに入った。
「アリサ。レイ。愛してる。これからもずっと一緒にいてね。」
「俺もマリアお嬢様のこと愛していますよ。一生忠誠を誓いましたから。ずっと一緒にいて下さいね。」
「私もマリアお嬢様を愛しています。お嬢様を立派なアーネルド家の一員として成長させることが私の役目てますから。死ぬまでお供させて下さいね。」
私達が寝たのを確認し、寝静まった後に聖杯が光り、独り言のように言う
「華ちゃんは世界中の人から愛されるし、愛して貰えるんだろうね。」
「それはとても凄いことだし…恐ろしいことだね。」
「攻略対象に愛されないなんて到底無理なことだろうけど本人は全然気づいていないね。」
「華ちゃんは善人も悪人も精霊も神も悪魔も誰からも愛される。この世の全てからね。」
「全世界の人達は華ちゃんの思うがままだよ。」
「もちろん僕も含めてね…」
「あーあ華ちゃんこの世界で過ごした後は僕の助手になってくれないかなぁ?」
「ずっと隣において可愛がってあげるのになあ」