第179話 イルカショー
昼食のサンドイッチを食べ終えて俺達はイルカショーのステージへと移動する
ルナは前方の席でイルカショーを見たいそうだ
昼時のこの時間がおそらく1番混まないからと俺達は昼時の12:30のイルカショーを並んで待っていた
開場されて俺達は前列の席を確保することが出来た
ステージが始まるまでまだ時間があるので、マナは外の売店でイルカのポップコーンバスケットを2つとチュロスも2つ購入して、何故かイルカのプリントTシャツも2枚購入して来ていた
「…ポップコーンとチュロスはまだわかるけど何でイルカのTシャツも買ったんだ?」
「だって前列はイルカの飛沫で濡れるもん。制服が濡れないように買って来たの。」
「そんなに水が飛ぶのか?」
「ほら。ここは水濡れゾーンって言って濡れてもいい人しこ座ったらダメな席なんだよ。」
「そうなんだ…。」
「はい。これ着て!」
俺はマナ様に言われるがままイルカのTシャツを着た
マナ様も俺と同じイルカのTシャツを着ていた
「はい。あげる。」
「ありがとうございます。」
俺は渡されたチュロスを食べる
「ポップコーンバスケットの1つはミケお爺ちゃんにお土産で持って帰るから、もう1つの方を2人で食べよう。これ食べ終わったら可愛い容器になるからあげるよ。」
「ありがとうございます。未来永劫大事に保管しますね。」
「聖女様から貰ったポップコーンバスケットとして?」
「そうです。サイン入りなら更に高値で取引出来ますね。」
「売ろうとするなよ!!」
「冗談ですよ。でも念のためにサインもよろしくお願いします。」
「サインなんて有名人じゃないんだからあるわけないじゃない。」
「この世で1番有名人だと思いますけれど。世界唯一の聖女様。サインぐらい用意しておきましょうよ。今後の為に。」
「やだよ。サインなんて作るの恥ずかしい。」
俺達はチュロスとポップコーンを頬張りながらイルカショーが始まるのを雑談しながら待っていた
「随分と仲良くなったようだな。」
ドスの効いた低い声で睨みつけながら話しかけてきたのはクリス様だった
今の俺達はイルカのTシャツでペアルックして、チュロスとポップコーンを頬張り食べている
バカップルそのものだった
まずい…何故クリス様に見つかることを想定していなかったんだ
こんな目出す場所で目立つ格好をしているのに
しかも反感を買うようなことをしてしまっている
今すぐ燃えカスにされてしまうかもしれない…
「まぁね。もうマブダチよ。」
マナ様が答える
「マブダチがペアルックするのか?」
「これは水に濡れるから制服が濡れないように売店で買っただけです。」
クリス様はマナ様の着ているTシャツを無理矢理脱がそうとしてきた
マナ様は必死に抵抗する
「ちょっと!!何すんのよ!!」
「脱げ!!そんなもの!!濡れたくないなら俺のブレザーを貸してやるから!!」
「いらないわよ!!もう邪魔!!早く班のみんなのところに戻りなさい!!」
「今、俺の班はレストランで昼食食べてるんだよ!」
「じゃあ一緒に昼食食べて来なよ!!」
「昼食なんて一食抜いても死にはしねぇんだから大丈夫なんだよ!!」
「レイ!!クリスを摘み出して!!!」
マナ様がそう叫ぶと護衛騎士のレイが空から降ってきてあっという間にクリス様を連れて行ってしまった
「はぁ。面倒くさい人に見つかっちゃったなぁ。」
「俺…今日が命日になるんでしょうか…?」
「大丈夫。大丈夫。この前の観覧車炎上事件で反省してるはずだから。」
「恨みを買うようなことをしたことが問題なんですが…」
「まぁまぁ。あんまり深く考えずに今はイルカショーを楽しもうよ。」
「マナ様って現実逃避よくしますよね。」
「今を生きてるだけよ。未来の心配なんて今しても仕方ないじゃない。」
「ある程度未来への目標を立てていかないとと未来で痛い目に遭いますよ。」
「未来を気にしすぎて今を楽しめなかったらもったいないじゃない。」
「イルカショーが終わったら…」
「やだやだやだやだ!考えたくない!!」
クリス様が外でイルカショーが終わるまで待機しているだろうから逃げられないだろう
そしたらまたクリス様から逃げるか一緒に行動するかしないといけないのだが…
「あ!ほら!!イルカショー始まるよ!!」
マナ様は辛いことの連続だったからだろうか
現実逃避に磨きがかかっている
今日息抜きしたかったことはおそらく本音だろう
水族館デートだって本当は好きな人と一緒に回りたかっただろうに
好きな人がバレたら世界崩壊するかもしれないから
秘密にするしかないのは可哀想だな
好きな人と結ばれることもなく
この世で1番大事な人は魔王になり殺し合う運命
…今だけは全て忘れてイルカショーでも楽しませてあげようか
イルカは大群で何度もジャンプをしていて
マナ様は大喜びしていた
弾けるような笑顔を
失いたくないなと思った