第176話 最強の魔法
俺は課外活動でマナ様と同じ班になったことをエド様に報告した
「ふーん…マナの方から誘ってくるなんてね。」
「しかも二人きりで行動出来るようにしてくるなんて。」
「俺が聖女について研究してるなんて喋ってしまったからだろうね。」
「今まで監視を続けても何も気にしていなかったくせに急に態度を変えるなんて。」
「何か知られたらまずいことでもあるとしか思えないな。」
「ずっと監視されると困るんだろう。」
「そして…アレクサンダー君の存在が厄介になってしまった。」
「マナの魂胆なんて見え見えだ。」
「アレクサンダー君を味方につけることだろう。」
「都合の悪い情報を渡さない為に。」
「監査役を手懐けようとしているに違いない。」
「アレクサンダー君のような一般人を味方につけることなんてマナにとっては造作もないこと。」
「笑顔で、仕草で、甘い言葉で惑わしてくるだろう。」
「フフフッ。アレクサンダー君はマナ様に堕とされて課外活動が新聞部の最後の活動になるかもしれないね。」
「マナ様の誘惑に耐えられるかな?アレクサンダー君。」
「君が私を裏切っても私は驚かないよ。マナは人を誑かす天才だ。本気で人を堕としにきたら全人類堕とされるだろう。」
「私としては新聞部の部員であって欲しいけれどね。優秀な部員を失うのは惜しい。」
「新聞部の掟は覚えているよね?」
「全ての物事を平等に。」
「課外活動後の君は果たして平等でいられるだろうか。」
「あぁ!!とても楽しみだなぁ!!」
「いい報告を期待しているよ。アレクサンダー君。」
激励とも威圧ともとれるお言葉をエド様から頂いた
ただのモブである俺がまさかこんなことに巻き込まれるなんて思わなかった
この三年間ずっと陰でマナ様のストーカーを行ってそれをエド様に報告するだけの生活だと思っていたのに
まさか世界の中心のマナ様を独り占め出来る日が来るなんて
人生何が起こるかわからない
本当にマナ様の目的は私を誑かして堕とすことなのだろうか
そうだとすれば
好奇心が抑えられない
あのガードの固いマナ様が積極的に話す相手なんて限られている
ローズ様とフェイ君ぐらいだ
俺にもあの純粋無垢な笑顔を向けてくれるのだろうか
遠くから見てるだけだったマナ様の隣に歩けることが
とても楽しみだ
課外活動当日
俺達は汽車で移動をして水族館へ到着した
「いい?マリーン水族館はたくさんのイベントがあって、イベントに参加するには整理券が必要なの。開館したら一番やりたいイルカとのコミュニケーションの整理券を取りに行くから。その後、ペンギンの餌やり体験の整理券を狙いに行ってそれから…」
「わかった。全てマナ様の言う通りに行動するから。」
マナ様は本当に水族館が好きらしい。入念に下調べをして分単位でスケジュールを組んで来ていた
「楽しみだなぁ!!楽しみー!!今世になってから初めてだもん!!ここの水族館はジンベイザメが名物なんだよ?すっごい大きくて迫力あるだから!!私、前世で沖縄まで行って水族館行ったの思い出すなぁ~。」
「俺は初めてだから予定を決めて案内してくれるのは有り難いよ。」
「ふふーん!!私が!!一番!!水族館を楽しませてあげれるからね!!とても幸運なことよ?シガーレッド・アレクサンダー!!」
「そうだね。この一日を死ぬまで一生自慢することになるだろうね。」
「水族館の楽しみ方を存分に教えてあげるから!!」
水族館の開門が始まりゲートが上がる
「行こう!!!」
マナ様は私の手を引き走り出す
輝きに満ちた笑顔は
今まで眺めてきた笑顔よりも
ずっとずっとずっと眩しくて
ローズ様より
フェイ君より
今、俺に笑いかける笑顔が一番輝いていた
エド様の言う通りだな
世界で一番可愛い女の子の笑顔を独り占め出来るなんて
こんなことされて
堕ちない人はいない
全人類マナ様の虜だ
俺のような小物なんて
あっという間に虜にさせられてしまう
この手を引かれて地獄に連れて行かれても
許してしまうような
魔性の魔力
惚れた弱み
マナ様の笑顔こそが
この世で一番無敵の魔法なのかもしれない