第169話 横恋慕
あの後、フェイは私に懐いてくれるようになり、教室まで一緒に行きたいと言われたので、
腕を組まれながら私とフェイは教室に入った
「…フェイ。何をしている。」
腕組みをして歩く私達を見てクリスは言った
「僕、マナ先輩のことが一番好きになっちゃった。」
「ふへへ…なんかごめんね?フェイ君奪っちゃって…」
何だか横恋慕したみたいだな
最低野郎の台詞を言う日がまさか来るとはね
クリスは私を睨みつけた後言った
「だから関わるなと言ったのに…」
「僕のこと一番愛してくれるのはマナ先輩だもん。」
「騙されるな。マナは博愛主義の八方美人だ。自分だけが特別だと思わせぶりにされるが他の人間と大差なんてないんだ。フェイだけが愛されてるんじゃない。全人類愛してるんだよ。」
「そんなことないよ?僕のこと世界一可愛いって言ってくれるよ?」
「マナは誰にでも言う女だ。」
「ちょっと!!人タラシの最低野郎みたいに言うのやめてくれる!?」
「ローズにも言うくせに。」
「それは…まぁ…ローズ様も世界一可愛いですから?」
「ほらみろ。フェイ聞いたか?マナはこういう女だ。今すぐ離れろ。」
「ルナ先輩…。僕を誑かして遊んだんですか?」
「そんなわけない!!めっちゃ好き!!こんなこと言ったら平等主義のポリシーが崩れるけれど!!人類史上一番可愛いと思ってるよ!!男だけど誰よりも可愛くなりたくて努力してて!女の子よりも超絶可愛いのに世間からは受け入れられなくて辛い想いを抱えてて!それでも自分の信念を貫く姿は男の娘ならではの尊さであり!!国の宝だと思ってるよ!!!」
推しを演説するヲタクのように私は熱弁した
「ルナ先輩ちょっとキモイね。」
「あ…うん…ごめん…」
熱量を上げすぎたのか引かれた
可愛い子に気持ちがられるのは普通に効く
「えへへ。僕のこと好きみたいだから許してあげる。」
天使かな?
可愛すぎて昇天しそう
アルテミス様フェイを私の攻略対象にしてくれて本当にありがとう
反対側の腕をクリスがぐいっと引き寄せて腕組みをされる
「マナだけは渡さないからな。フェイ。」
「ふん。マナ先輩は可愛い子が好きなんだよ?クリス様なんて相手にならないね。ごつい男は嫌いなんだよ。マナ先輩は優しいから言わないだけなんだよ。」
「俺は童顔だと言われたことがある!!!」
「ブッ!!アハハハ!!クリス様って面白い人だったんだね!!僕に可愛さで勝とうなんて天地がひっくり返っても無理だから!!」
「可愛いだけでマナを手に入れることができると思うなよ!!マナは可愛いだけの人間は嫌いなんだよ!!」
「え…?マナ先輩可愛いだけの人間は嫌いなの?」
「そ…それは!!自己嫌悪だから!!フェイのこと可愛いだけの人間なんて思ったことないよ!!」
「どうしてマナ先輩は自分が嫌いなの?こんなに可愛くてこんなに愛されてるのに。」
「うーん…なんか騙してるような気がするから。容姿がいいだけで…愛されるなんておかしいと思わない?」
「僕は容姿だけはいいけれど、マナ先輩以外は誰にも愛されたことなんてないよ。だから…マナ先輩は可愛いだけじゃない。マナ先輩だからみんな大好きなんだ。」
「うん。ありがとう。フェイ。」
「俺はマナの全部が好きだよ。」
「知ってる。」
雑談をしているうちに始業のチャイムが鳴り、フェイは自分のクラスに帰った
「おい。フェイのこと誑かすなよ。」
「だって目の前で悲しそうな顔してるんだもん。ほっとけないじゃん。」
「…そうか。フェイのこと助けてくれてありがとう。あいつ我慢ばっかりで何も反抗しないからつけ上がるやつらが多いんだ。王族のくせに権力で黙らせようともしないし。」
「やだなぁ。私利私欲で助けただけなのに。私に正義なんてない。フェイを笑顔にしたかったから。ただそれだけよ。」
「マナの欲望が全て叶う時、世界は平和になると思うよ。」
「私についてきたら酷い目に遭うわよ。」
今まさに世界崩壊の危機だしね
「それは俺以外の人間の話だ。」
「どうして?」
「だって最終的には俺が選ばれるんだから。酷い目に遭うのは他の攻略対象さ。」