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第164話 恋

泣き崩れて立てなくなった私をスリー様が支えて魔塔の中まで連れて行ってくれた

そのままスリー様は私の部屋まで運んでくれて

私をベッドに入れてくれた

私はずっと泣き止むこともないまま

その日は一晩中眠りせず泣いていた

スリー様は私に謝りながらずっと私の手を繋いでくれていた

午前三時に私はやっとベッドから出てお風呂に入る

制服に着替えてリビングへと向かう

「マナ…?まさか今日学園に行くつもり?」

スリー様が言う

「うん。」

「一睡もしてないのに?」

「白魔法で全快出来るから。仮病なんて出来ないのが聖女の嫌な所よね。」

私は苦笑いをする

「理由なんて病気以外で何でもいいじゃないか。今日は休もう。」

「いいえ。私のただの我儘で休むわけにはいかないです。午前五時にはレックスが魔塔に来てしまいます。その前に私達は話し合いをしなければいけない。そうですよね?スリー様。」

「今日じゃなくても…。」

「私は大丈夫です。レイ。マリオお兄様。ミケお爺ちゃん。スリー様。これからのことを話し合いましょう。」

全員リビングに集まり私達は今後のことを話し合いを開始する

「マナ。無理するな。」

「マナ様!!俺はずっとマナ様の味方ですから!!」

「マナ…すまない。儂がもっとマオのことを理解してフォロー出来ていればこんなことには…」


「ミケお爺ちゃんは何も悪くないです。私のこともマオのこともたくさん愛してくれて大事にしてくれました。本当に感謝しています。」


「それでもマオは魔王になってしまった。」


「一年だけです。一年経てば帰ってくると約束しました。」


「本当に帰ってくるのか?」


「はい。絶対に帰ってきます。だから一年間待って欲しいです。ガードン王にも伝えてください。」


「帰ってきてどうするんだ?」


「マオを恋人にしてハッピーエンドです。アルテミスも荒降神も全員満足して円満にこの世界は救われます。」


「…。」



「だから何も問題ないです。一年会えない悲しみで泣いてしまいましたが、もう大丈夫です。みなさん心配かけて申し訳ございませんでした。」

私はにっこりと満面の笑みで答えた



私は嘘をつくことが得意だ

どんなに辛いことがあっても

笑顔で話すことが出来る

惨めだとか

可哀想だとか

そういうことを言われることが嫌だから

私は笑う

哀れまれることが嫌いだから

私は可哀想なんかじゃないと

自分に言い聞かせて

虚勢を張って生きていく


午前五時になりレックスが魔塔へとやってきた

「おはよう。マナ。」

「おはよう。レックス。」

私はいつもと変わらない笑顔で答える

「今日は何を作るの?」

「今日は発酵してあるパンを焼いて食べます。あとは野菜スープでも作ろうかな。」

「今日も美味しそうだね。わかったよ。」

このパン生地マオと一緒に作ったんだよね

姿は子供だけど、魔王だから力が強くて

上手に生地を捏ねていたなぁ

パンが焼けて野菜スープも出来上がり食べようとする

「あれ?今日はミケさんもマオ君もいないんだね。」

「ミケお爺ちゃんは体調悪いみたい。マオは…暫く実家に帰ってるの。」

真実と偽りを混ぜて嘘をつく

嘘だとバレないようにする鉄則だ


レックスは朝食を食べて先に学園へと行く

私も後片付けを終えてスカーレット学園の第四倉庫の隠し部屋へ

イシュタル先生に会いに向かう

「おはよう!!マナ!!今日はなんと!!オリオン女学院の制服を持ってきたんだよ!!凄いだろう!?」

イシュタル先生は

無邪気に

幸せそうに

笑う

「…イシュタル先生の笑顔に救われる日が来るなんてね。人生本当に何があるかわからないものね。」

「エロは世界を救うんだよ!!知らなかったのかい?」

「知らなかった。」

「今まで色んな服を着たけれど結局一番エロいのは制服なんだよね。」

「制服で学園生活しているのにそんなこと言わないでくれる?」

「オリオン女学院は清楚系お嬢様学校なんだ!!セーラー服だよ!!セーラー服!!!」

「わかったよ…。じゃあ着るから…」

私はオリオン女学院の制服に着替える

「ああああああああ!!!最高だよ!ルナ!!清楚系が宇宙一似合うよおおおおおおおおお!!!」

「それはどうも…」

「あの…腹チラとかしてくれます?」

私はピラっと制服を上に上げてお腹を見せる

「えっっっっちすぎる!!!!」

「はい。おしまい。」

「待って!!写真撮るから!!」

「やだよ。」

「天女の時の方が露出が多かったけどたくさん撮らせてくれたじゃないか!!」

「制服は背徳感があるのでダメです。」

「せ…制服でエロいことをすることに背徳感を感じているのか!?その事実に興奮するのだが!!」

「まじでキモい…。」

この秘密の時間は異世界のようで

何もかも現実離れしているから

現実逃避には最高の空間だ


私は第四倉庫から出て特進クラスへと向かう

「おはよう。マナ。」

「おはよう。クリス。」

いつも通りクリスが一番初めに声を掛けてくる

「どうしたの?今日は元気ないね。」

…鋭いな

上手に平気なフリを出来ているはずなのに

「そう?昨日よく眠れなかったからかな。白魔法で回復はしたけどね。」

真実と偽りを混ぜて嘘をつく

私の嘘をつく時の鉄則

「…。」

じっと私のことをクリスが見つめる

「何?どうしたの?」

クリスは突然私をひょいと抱き抱える

「ひゃあ!!」

私はクリスの肩に乗せられる

「ちょっと!!何すんのよ!!離してよ!!!」

私を抱えたままクリスは教室から出てどこかに歩く

私はジタバタと抵抗するが離してくれる気配は全くない

クリスは私を抱えて保健室に連れてきた

私はドサっと保健室のベッドに降ろされる

「ちょっと!!何すんのよ!!」

悪態をつく私を気にせず私のことをじっとクリスは見る

あまりにもずっと目を見つめてくるから

何もかも見透かされることを恐れて私は目を逸らす

「無理して笑ってる。」

「そんなことないよ。」

「何があったの?」

「何もないよ。気のせいじゃない?」

「気のせいなんかじゃない。今までで一番辛い顔してる。」

「寝不足なだけ。」

「なんで寝不足なの?眠れないようなことが何かあったの?」

「いいじゃない。なんでも。もうほっといてよ。私は大丈夫だから。」

「大丈夫なんかじゃないくせに。」

「大丈夫なの!!だからほっといてよ!!」

柄にもなく大声で叫んでしまった

いつも強引に踏み込んでくるクリスが苦手だ

こんな弱い私に気づかないで欲しい

見ないで欲しい

優しくしないで欲しい

お願いだからやめて

暴こうとしないで


「好きな女が辛い顔してるのにほっとけるわけないだろう?」


涙が溢れる

弱さが暴かれる

辛いと縋りたくなる

優しさに甘えたくなる

ダメなのに

絶対にダメなのに


私はクリスの胸に飛び込み

私はクリスの腕に抱かれて泣いた


恋なんて嫌い

衝動的で

理性的じゃなくて

厄介な感情だ

全てを平等に愛したら

みんなが幸せになれると思ってた

気持ちに優劣をつけたくなかった

みんな大好きだったから

それなのに…なんでなんだろう

この人を好きになっても

誰も幸せになんてなれないのに

最悪の結果にしかならないのに

気持ちを止められない

幸せな恋が出来ないのは

今まで散々人の恋心を弄んだからだろうか

罪と罰

全ては繋がっているんだな

本当に…私ってバカ


「うわああああああああああああんんん!!」


恋に堕ちた

私はマオと殺し合いの戦いをしなければいけない









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