第158話 新二年生
「どうして死にかけるまで白魔法を練習しているの?」
毎朝私に会いに来るレックスは私が白魔法で倒れたことを誤魔化せなかったようで、私が春休み中に二回ぶっ倒れていることは筒抜けのようだった
「実は極秘にしているんだけど、魔王が復活する可能性があるの。」
「え…嘘だろ…?」
「本当だよ。だから白魔法を使いこなせるように修行中なの。」
「それにしても…倒れるまでやるのは…」
「何言っているの?前回はたまたま上手くいっただけ。運が良かっただけにすぎないの。魔王を倒せるのは私だけなんだから本気でやらないと。中途半端な修行は意味ないの。専門医も一緒にいるから安全よ。」
「それでも心配だよ…。俺も何か手伝えることがあったら言ってね。」
「ありがとう。レックス。今日から二年生になるけど、二年生の一大イベントって何かある?」
「それはもちろん宿泊学習だよ。」
「わぁお。それは一大イベントだね。」
「6泊7日泊まるんだよ。」
「長すぎだろ…」
「海外だからね。」
「でも楽しみ。私達特進クラスはクラス替えもなく三年間同じだからみんなと仲良くなれていいね。」
「俺はみんなと仲良いけど、マナは孤立してるよ?」
「目の前ではっきりと言わないでくれる?」
宿泊学習の班決めとかは今から考えるだけでも胃痛だ
その後、朝食を食べてレックスを見送り私も二年生最初の登校をする
そして真っ直ぐ隠し部屋の第四倉庫に行き、イシュタル先生に会いに行く
「すううううううはあああああああああ。」
「何やってるんですか?イシュタル先生。」
「マナと同じ空気を久しぶりに吸える喜びを全身で感じてるんだよ…。」
「さよですか…。」
「寧ろ吸うというよりマナの吐いた息がこの空間に充満していると考えていると興奮して…」
「あ。もういいです。その話。全然面白くないので。」
「こうやって目をつぶって匂いだけ興奮出来る変態に私はレベルアップして…」
「もういいってば!!この変態教師!!今日は何を着るのか早く言え!!」
「私が春休みの間マナに会えない悲しさを紛らわす為に毎日毎日作っていた服だよ…」
「また作ったの…?」
「へへへ…自分の欲望を具現化出来る喜びが忘れられなくてね…」
「それで今回は何の衣装を作ったの?」
「これだよ…。」
ビキニのように面積の狭い白い布と透け透けの薄ピンク色の大きなレースの布があった
「何これ…?」
「天女の衣装さ!!」
「過度の露出は趣味じゃないとか言ってなかった?何これ。ほとんど着るものなんてないけれど。」
「二年生になったし、新たな境地に挑戦するのも大事だと思ってね。」
「…。」
買って来た衣装なら絶対に突っぱねて着ないけど、春休み中に一生懸命作っただろう衣装を着たくないと言うのは心苦しい
えぇ…本当に着るの?これを…?
着るというか被せるだけじゃん
ほぼ裸なんだけど
期待の眼差しを向けられ
ノーと強く言えない自分が嫌だ
「…わかりました。着ますから。後ろを向いていてください。」
「ほ…本当に!?嬉しい!!ありがとう!!」
イシュタル先生は後ろを向いた
そして私は先生が作った自称天女の衣装を着た
「…出来ました。」
「ああああああああああああああああ!!!えっちだ!!えっちすぎる!!!」
そりゃそうだほとんど裸だもん
「ねぇもう脱いでいい…?」
「ダメだ!これで写真を撮ってからだ!!」
「はあ!?写真!?ダメですよ!そんな物的証拠が残るもの!!見つかったら処刑されますよ!?」
「それでもいい!!私は!!この日の為に生きてきたんだああああああああ!!!」
「しかもチェキじゃないですか。贅沢品ですよ。お金はどうしたんですか。」
「貯金全て使った。」
「写真なんて見つかったら死ぬリスクが上がるものなのに…」
「このえっちなマナを!!永久に保存出来るなら!!死ぬのなんて怖くない!!!」
「英雄顔して最低なことを堂々と言わないでください。」
「ポーズして!目線こっち!!」
私はポーズをしてカメラの方を向く
「ハァ…ハァ…ハァ…可愛すぎる…えっちすぎる…シャッターのボタンが…止まらない…フィルムも…高いのに…は、破産する…!!破産してしまう!!!それでもやめられない!!破産しても私は幸せだああああああああ!!!」
「破産したら幸せじゃないですよ…」
撮影タイムが終わり、私は制服に着替えて隠し部屋から出る
「笑顔で帰ってくるって約束したのに。全然笑顔じゃねぇじゃねぇか。」
マリオお兄様が言う
「面白いことではないですから。」
「嫌なことだろう?」
「嫌ならやめてますから。幸せいっぱいの空間でしたよ?」
「幸せいっぱいの空間…?」
「あの隠し部屋だけ現実から離されていて非現実的な夢の国のようです。」
「面白いくはないけれど幸せいっぱいの夢の国?」
「そうです。」
「お前ら何してんだよ…」
「秘密です!」
私は笑顔いっぱいで答えた
二年生の特進クラスに入るともう既にクリスはいた
そしてクリスの腕には
茶髪のツインテールをした
とても可愛い顔をしていて
それでいてズボンを履いている
男の娘がいた
「貴女が噂の聖女?…ふーん。絶世の美女と言われてるだけあって容姿はいいわね。まぁ?僕の方が可愛いけど?」
私もそう思います
「マナ先輩なんてたまたま容姿がよくて、たまたま白魔法が覚醒しただけの超ラッキーガールなだけじゃない。」
私もそう思います
「幸運に恵まれただけのくせにちやほやされててさぁ。本当にずるいよね。」
私もそう思います
「こんな女。クリス様に釣り合うわけないのに。寵愛を受けてて…ずるいよ。」
そんなこと。私が一番誰よりもそう思ってるよ
「おいっ!!マナを侮辱するならいくらお前でも許さないからな!!」
クリスが男の娘に怒る
「ひっ…」
男の娘は怯えて涙目になってしまっていた
その目で私を睨みつける
強い憎しみを込めた目
女の子のような顔立ちのとても可愛い顔
女の子のような華奢な体つき
白雪姫と同じぐらい透き通った肌
「可愛いいいいいいいいいいい!!!」
私の好みどストライクの男がそこにいた
私は初めて思った
アルテミスは凄い神様だと