第157話 一年生最後の夜
この世界にも桜の木はあるようで
スカーレット学園はすっかり桜並木だ
今日で春休みが終わり、春休み期間にしていた私の白魔法の修行成果は得られないような結果になってしまった
魔力枯渇を起こしてしまうのは
使える魔法量の問題であり
魔法量を増やすことは基本的に無理なようで
魔法を使うことは努力関係なく才能があるかないからしい
だから私が今しているのは魔法石に自分の魔力を最大限込めて
ミケお爺ちゃんでも魔法石で白魔法が使えるようにするようにすることに研究されていくらしい
ちなみに今は白魔法を魔法石に込めても私以外は誰も使うことが出来ない
白精霊は聖女以外の人間に力を貸すことを嫌っているようだ
私が葉月ちゃんに白魔法を使えるようにして欲しいと懇願して成功したのは本当に奇跡的だったのかもしれない
私が倒れずにリミッターを外したまま白魔法が使えたら一番いいんだけど…人生簡単に上手くいかないものだなぁ
私は先に眠ってしまったマオの隣で寝ようと布団に入ろうとすると
「一年間お疲れ様。華ちゃん。」
目の前にアルテミスが姿を現した
「姿を見たのは入れ替わりぶりだね。どうしたの?実体を保つのは大変なんでしょう?神様がこの世界に干渉しなければいけない何かあったの?」
「そんなのはないよ。ただ華ちゃんに会いたくて。来ちゃった♡」
「フフッ。何それ。相変わらず変な神様だね。」
「アンニュイな華ちゃんも素敵だね。超可愛いよ。」
「アルテミスは相変わらずだね。私はいつも可愛いよ。知ってるくせに。」
「さすがは私の最高傑作の世界最強のヒロインだね。」
「アルテミスに作られた記憶はないけどね。」
「アハハ!!そうだね。私が作ったのは華ちゃんじゃなくて華ちゃんの為の世界だからなぁ。」
「私の為の世界か…」
「この一年間退屈せずに毎日見守っていたよ。攻略対象者は全て手中に収めているのはさすがだよね。」
「悪の親玉みたいに言わないでくれる?」
「でも華ちゃんは相変わらずお堅いからなぁ…もっと!!ぐちゃぐちゃに恋愛泥沼にハマってくれたらいいのに…」
「私は男の人に痴漢被害とかストーカー被害に遭っていたんですよ?異性に苦手意識がある人間をヒロインに置くのは無謀だと思いますけどね。それでもこの一年間私なりに頑張りましたよ?」
「恋愛は頑張るものじゃないの!!もっと衝動的で!!理性が働かなくなって!!ぐちゃぐちゃの感情になるものなんだから!!」
「そんなことを私に求められても困るよ…。絶対人選ミスだから…」
「私は華ちゃんが恋に堕ちて幸せになるところを見たいんだよ!!」
「アルテミスのハードル高すぎて期待に添える気がしないよ…」
「大丈夫!そんな華ちゃんの為に私は最終兵器を用意しました!!」
「何?白魔法をもっと使えるようにしてくれるの?」
「そんなことはどうでもいいんだよ!!」
「いや…死活問題でみんなその為に頑張ってるんだけど…本当に毎日見守ってる?」
「恋愛要素以外は寝てる。」
「本当に私のこと好きなの!?」
「どうでもいいんだよ!!そんなことは!!私は最終兵器を用意したんだ!!」
「恋愛要素の?」
「そうだ!!新学期といえばなんでしょうか!」
「新しい出会い?」
「ピンポーーン!さすがは華ちゃん!天才だね!」
「ありがとうございます。」
「ムフフフ…なんと!!新学期には華ちゃんの好みどストライクであろう後輩キャラが登場します!もちろん攻略対象者だよ!!私も神様としてこの世界にテコ入れをしてみたんだよ!!凄いだろう?」
「私の好みどストライクねぇ…」
自分の好きな男のタイプなんてないのだが
神様は知っているのか
毎日見守っていた神様だから見えるものがあるのかもしれない
神のみぞ知る
私の好みの男か
ちょっと気になるな
「どストライクの男で私は一目惚れで虜になっちゃう感じ?」
「そうさ!絶対メロメロだね!!」
「それは楽しみだな。」
「そうでしょう!そうでしょう!」
「あのさ。ちなみにローズ様を選んだ時ってこの世界どうなるの?」
「崩壊するよ。」
「全て無に帰すの?」
「うーん…私は華ちゃんに幸せになって欲しくてこの世界を作っただろう?違う相手を選んだなら私の過失だからね。華ちゃんとローズ様は記憶そのままで私が作った新世界で暮らすことになるよ。」
「崩壊した後に新しく作るってこと?」
「そう。この世界は失敗だからね。二人で暮らしやすいように世界を変えてあげるよ。」
「新世界ってどんなの?」
「今の世界とあまり変わらないよ。ただ…華ちゃんのことを好きな人間はその感情を全て忘れさせることにはなるかな。みんな華ちゃんとローズ様を祝福してくれるようにするさ。」
「記憶を改竄するの?」
「違うよ。一度全て無に帰す。その後に新しく作るから。別個体の人間になるよ。姿形は同じだけど君達が過ごした時間は何も覚えてないし、新しい記憶を改竄するように作るから。」
「…。」
「ちなみにこの世界には歴史なんてないよ。歴史があるように私が作っただけ。この世界は華ちゃんが生まれてからしか存在していない。私が華ちゃんの為に作ったからね。」
「マオは?どうなる?」
「マオは魔王だから私の管轄ではないよ。私が滅ぼしたり作ったり出来ない個体だからたぶん世界が変わっても前の世界の記憶を引き継ぐんじゃないかな。フフフッ。華ちゃんと原田さんが愛の為に世界を崩壊させるのをマオくんが止めるような展開になればこちら側が悪の組織になっちゃうね。アハハ!!!」
「…。」
「それでも私達は愛の為に戦わないとね。この世界の第一条件は華ちゃんの恋愛成就なんだから。二人の愛を引き裂く魔王と大バトルなんて凄くロマンチックだよね。」
「私が恋愛成就してもマオが暴走して世界崩壊しそうなんだけど。その後も世界を作り直すの?」
「そうなったら闇側の神様の勝利だからね。私にはどうしようもないよ。魔族の時代になるんじゃないの?」
「詰んでない?」
「大丈夫!華ちゃんは最強のヒロインだから!愛さえあれば世界は救われるさ!」
「神様のくせに根拠ない精神論しか言わないね。」
「神様だからこそだよ?」
「信じる者は救われる?」
「そうさ!」
「信じるだけなら得意だけど。」
「だから大丈夫だよ。この世界は華ちゃんの為に作られてるんだから。ラブラブの学園生活しちゃいなよ!」
「騙されてる気がする…。」
「私は神様なのに!?」
「ずっと胡散臭いからなぁ。アルテミス。」
「ひどい!!!」