第155話 守りたいもの
春休みになり、私はエラート家へと帰省した
私のお母様にはなんと彼氏が出来ており極甘々のラブラブだった
彼氏のクロードさんは十年お母様に片想いをしていて
毎回アタックしてはフラれていたようだが
クズ親父のことを完全に吹っ切れたお母様はクロードと付き合うことにしたらしい
仮にも娘の目の前で堂々とキスをしたり甘い言葉を囁いたり目のやり場に困るほどのラブラブぶりだった
この世界のヒロインはお母様なんじゃないかと思うほどにヒロイン顔してた
お母様の人生こそゲーム化された方が売れそうだ
いや、ゲーム性はほとんどないから少女漫画化された方が良さそうだ
お母様はもヒロイン属性カンストしている
さすが私のお母様
帰省したものの、あまりの二人のラブラブぶりに明らかに邪魔者が入ってきたようだった
そんなことは一言も言われてはいなくて被害妄想なんだけど
やっと結ばれた二人の幸せ空間に混入することはできなかった
あまりの気まずさに日帰りで帰ってきてしまった
次の日になると、スリー様とマリオさんが魔塔に挨拶に来ていた
スリー様は学園敷地内の先生寮の空き部屋からここに通うらしい
マリオさんはレイと同じでここで寝泊まりするようだ
私を24時間体制で常に護衛出来るようにレイと二人で護衛するらしい
「ガーネット・スリーと申します。魔王の研究をする為にここに派遣されました。よろしくお願い致します。」
「アーネルド・マリオと申します。レイと交代でマナの護衛騎士をさせて頂きます。よろしくお願い致します。」
「ミケだ…。」
「マオです…よろしくお願いします…。」
「はい!この世の全ての生き物を虜にしてみせます!!アリンコさんもミジンコさんも全ての人類も私のもの!!!世界最強!聖女!!世界最強!ヒロイン!!エラート・マナでーーす!!よろしくお願い致します!!」
「…。」
私のアイドル風挨拶は盛大に滑った
誰も反応してくれないなんてひどい
この場を和ませる為に人肌脱いだのに
余計なお世話だったようだ
「今日はこれからの仕事の確認だけ行います。マオくんご協力よろしくお願い致します。」
「はい…。」
スリー様とマオは二人きりで部屋に入っていった
ミケお爺ちゃんは一人で部屋に戻る
「じゃあ俺からマナ様の護衛についてマナ様のルーティンを教えます。」
「はい。」
レイがマリオさんに仕事を教えるようだ
「まず、早朝五時頃にマナ様は起きて朝ご飯を作ります。朝ご飯はレックス様が毎朝魔塔に来るので一緒に作っています。」
「毎朝?レックスも頑張るなぁ…。」
「その後、レックス様とミケ様とマオくんとマナの四人で朝食を食べた後、レックスは帰宅してからマナは登校します。」
「うん。」
「スカーレット学園に到着したら第四倉庫の隠し扉でマナ様はイシュタル・ヤクモ様と約三十分程密会するので扉の前で待機します。」
「…は?イシュタル先生と密会?」
「そうです。」
「何をしているんだ?」
「わかりません。」
「マナ。何をしているんだ?イシュタル先生と。」
「契約違反になるので秘密です。」
「契約?何を?」
「秘密です。」
「…じゃあ倉庫の中で護衛してもいいだろう?」
「無理です。契約違反です。」
「マリオ様。イシュタル先生はマナの体操服を盗んだ犯人です。」
「…なんだと?」
「マナ様は何かしら脅迫を受けて要求を飲んでいるんだと思います。」
「マナ…。事実なのか…?」
「体操服を盗んだのはイシュタル先生ですけれど…」
「脅迫されてるのか?」
「まさか。私が好きでやってますよ。」
「体操服を盗んだ犯人と?」
「はい。」
「ふざけるな…。」
マリオの体は怒りで放電してしまっている
「すぐに電撃で攻撃する癖やめたほうがいいですよ?」
「黙れ!!!そんなやつと秘密の密会だと?危険すぎるだろうが!!何をやってるんだよ!!」
「秘密です。」
大きな雷が落ちる
マリオが怒りで落とした
「今すぐ殺してやるよ。変態教師。」
「やめてよ!!私達のことはほっといてよ!」
「ほっとけるか!!大事な妹を傷物にしやがって…絶対に許さないからな!!」
私は雷を落として応戦する
「私に従って。マリオは私の護衛よね?」
「主人が危険に晒されてるのに黙ってみてろと?」
「もしもの場合は逃げれるようになってる。心配しなくても大丈夫。」
「変態教師なんて生きてる価値ないだろう?」
「あるよ。手を出したら許さないよ。」
「何を守る為にそんなことをしている?」
「…。」
「嫌なんだろう?やめたいんだろう?」
「嫌だよ。気持ち悪いよ。今すぐやめたいよ。」
「じゃあやめろよ。」
「嫌よ。」
マリオの電気がビリビリとより一層放電する
「何故庇う?生徒の体操服を盗むような変態教師を。」
「…好きだから。」
「…正気か?自分で何を言ってるかわかっているか?」
「大好きだから。あの笑顔を私の人生賭けて守ると決めたから。」
強い眼差しで強い意志で私はマリオお兄様に伝える
「大嫌いだし、気持ち悪いし、変態だし、どうしようもないクズだし、本当に最悪で最低だけど…私、あの笑顔好きなの。一生面倒みる覚悟で救ったの。人を救うってそういうことでしょう?途中で投げ出したりしたらダメなの。死ぬまで私が面倒見るから。他の誰かに被害が出ないように。」
「お前がそんなこと背負う必要ないだろう!?今すぐ捨てろ!!そんな変態教師!!!」
「嫌。」
大きな雷が連続で落ちる
私は土魔法で防御する
「主人を攻撃するなんて護衛失格じゃない?」
「黙れ!!!だって…お前が……嫌だよ。そんなやつ守ったりするなよ…。大事なんだ。大切なんだ。マナのことが。そんなこと…して欲しくないんだ…」
マリオは涙を流して言葉にする
私は抱きしめる
「大好きですよ。お兄様。」
「それで毎回誤魔化そうとするな…」
「大事にしてくれてありがとうございます。でも…私どうしても譲れません。ごめんなさい。」
「こっちだって譲れねぇよ…バカ…」
「お願いします。お兄様。」
「無理だ。嫌だ。そんなやつに…なんでマナが…」
「本当に嫌ならとっくに辞めてます。これでも仲良くやってますから。信じてください。」
「…ううぅ死ぬほど嫌だ!!!」
「フフフッ」
「笑い事じゃねぇ!!こっちは真剣に…」
「わかってますよ。だからお願いしているじゃないですか。」
「…。」
「私は大丈夫です。信じてください。」
「俺が大丈夫じゃない…」
「必ず笑顔でマリオお兄様の元に戻ると誓います。」
「…。」
「信じて。お願い。」
「泣いて出てきたら変態教師はぶっ殺す。」
「はい。よろしくお願いします。」
私はにっこりと微笑む
マリオお兄様もなんとか認めてくれたようだ