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第15話 アーネルド家の幸せ

馬車から降りる時、またお父様がエスコートしてくれる。

「ありがとうございます。」

 令嬢らしく気品溢れる笑顔で答える。

「マリアは演技が上手いんだな。」

「お父様。女は皆女優なんですよ?悪い女に騙されないように気をつけて下さいね。」

 「私はヴァイオレットとしか話したことが無い。」

 「………」

 「いや…メイドには仕事の話はしたことあるけれども…」

 この人以外と溺愛系なのかもしれない。お母様以外眼中ありませんって平気で言ってるよ…。

 「お母様のどこが好きなのですか?」

 「全部だ。」

 「今日の演劇の女優さんで美人だなーと思う人はいますか?」

 「ヴァイオレットが一番美人だ。」

 「お父様って恋愛結婚だったのですか?」

 「…政略結婚だ。私が無理を言って無理矢理進めた縁談だ。ヴァイオレットは親同士で決めたと思っている。」

 「昔からお母様が好きだったと」

 「…そうだ。絶対に言うなよ。」

 「六歳の子供はそんな秘密守れないですよ。」

 「そうなのか!?」

 「当たり前です。御自身の六歳の時はそんな秘密守れましたか?」

 「昔は…アーネルド家としての教育か厳しかったからあまりいい思い出がないな。」

 「マリオとマリアには同じような思いをして欲しくは無いのだが…社交界ではそう言うわけにもいかなくてな…申し訳無い…」

 「お兄様はわかりませんが、私はアーネルド家として振る舞うことをそんなに苦には実は思っていないのですよ。」

 「どうしてだ?お前は自由を求めてるじゃないのか?」

 「いいえ。私は自由な性格ですが、自由を求めたことはありません。私が愛してるのはアーネルド家のみんなです。だからいつもアーネルドらしくないって言われることが嫌だった。だから今仮面を被ることでアーネルド家の令嬢として認められているのがとても嬉しいのですよ。」

 「私はアーネルド家が嫌いだ。ヴァイオレットもマリオもマリアも本当はもっと自由に生きて欲しい。」

 「誰が自由を求めたのですか?それはお父様でしょう?」

 「お父様はアーネルド家でとても辛い思いをされたんだと思いますが、私は違います。沢山の愛と幸せを貰いました。」

 「お父様がいつもアーネルド家を支えてくれているからです。感謝しています。正直お父様は何も話さないから嫌われてると思っていました。今日はお父様と仲良くなろうと思って誘ったのです。」

 にっこりと微笑む。

 「作戦は大成功です。」

 ブーと開演のブザーが鳴り演劇が始まる。

 演劇の内容はベタベタなラブロマンスで親子で見に行くような劇では本当はないのだろうけど、私は楽しかった。

 演劇が終わり、馬車へ乗る。

 「すまない。マリアに恋愛物語は早かったかな。」

 「とんでもございません。とてもいい話でした。いつか私も人を愛して幸せな家庭を築きたいです。」

 お父様はとても驚いた顔をした。

 「え…」

 「お母様にもいつか結婚して幸せな家庭を築きたいって言ったのですが、お前みたいなバカ娘に結婚は無理だって言われたんですよ!ひどくないですか!?」

 「あぁ…」

 「そうだ!お父様誰かいい人いないですか?今日の物語の主人公のような紳士的で素敵なご子息!私の結婚相手にピッタリな人と婚約してもいいのですよ!」

 「まぁ…まだ六歳だから…そんなに焦らなくても…」

 「そんなこと言って!私のこと放置してたら性格の悪いお爺さんに嫁がされちゃいますよ!」

 「ヴァイオレットがそう言ったのか?」

 「そうですよ!」

 「フフッ」

 お父様が笑った!!超レアだわ!!

 「心配しなくてもいつかマリアは王子様と結婚できるよ。とても素敵な女の子だからね。」

 「恋愛結婚ですか?」

 「私のように好きになったら無理矢理政略結婚するかもしれないね。」

 「そんなに好きなくせにどうしてお母様と一緒に過ごす時間が少ないのですか?お仕事そんなに大変なのですか?」

 「今でもヴァイオレットの前は緊張するんだ。女神のように美しいからね。」

 「だからって逃げてたら嫌われちゃいますよ?」

 「…すまない。」

 「その言葉はお母様に言ってあげてくださいね。」

 「あぁ…」

 「そして、愛してるの言葉もお忘れなく。」

 屋敷に戻り、自室に戻る。アリサに大成功であったことを告げた。

 

 

 

 

 この屋敷の当主。アーネルド・インディゴは演劇から帰り、自室へ戻った。

 「おかえりなさい。楽しかったですか?」

 夫婦同室なので、ヴァイオレットが部屋で待っていた。ヴァイオレットはネグリジェにカーディガンを羽織っており、とても優雅で美しかった。

 「あぁ…」

 「演劇なんて私とも一回しか行ったことないですよ。」

 「………すまない。」

 「ウフフ。いいんですよ。わかっていますから。」

 「ヴァイオレット。愛している。」

 インディゴが言った後、部屋に沈黙が流れる。

 「急にどうしたのです?マリアに言えと言われましたか?」

 その言葉にインディゴは動揺する。

 「あの…言わされたわけではなく…言葉足らずで君が寂しい思いをしていると言われたので…愛してるという言葉に嘘偽りがあるわけではないのだが…」

 「わかっていますよ。」

 その言葉にホッとするインディゴ。

 「今日一日演劇に行っただけなのに、マリアと随分と仲良くなったのですね。貴方が不器用なだけで優しいことなんて知っていますよ。私だけが知っている優越感があったのに…」

 「…すまない。」

 「フフッ大人気ないこと言ってしまいましたね。親子が仲良くなることはとてもいいことなのですよ。今日は忙しい中マリアの我儘を聞いてくださってありがとうございます。」

 「ヴァイオレット…愛してる。」

 ドサっとヴァイオレットがベットに押し倒しされる。

 「知っています。だって私のこと毎晩抱くじゃないですか。」

 「私も愛していますよ。インディゴ。」

 

 

 

 

 

 

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