第147話 それぞれの想い
私は重い足取りでスカーレット学園へ登校する
いつも通り隠し部屋へと向かった
「マナ!!無事でよかったよ…。魔王が復活してまた死にかけてるなんて聞いたからさ…」
「イシュタル先生それどこで聞いたの?」
「勿論、新聞部さ。」
「…もう新聞部に通うのやめたほうがいいですよ?」
「だってマナが心配で…」
「情報交換しないと情報は得られないはずですが。」
「お金を積んだら教えてくれるよ。流石に体操服の隠蔽はいくらお金を積んでもダメそうだったから聖杯で口止めしたけれど。基本私はお金と情報を交換しているよ。」
「そんなことにお金使わないでください…」
「何も趣味がなくてね。お金が溜まっていく一方だったから。」
「先生みたいな人がキャバクラにハマったりするんだろうな。」
「キャバクラ?なんだそれは。」
「なんでもない。」
「スリー様にフラれたんだって?残念だったね。」
「ねぇ!!人のプライベートを土足で踏み込まないでくれる!?」
「心配してるのに。」
「そっとしといてよ。」
「スリー様が一番いい男だよなぁ。俺もそう思うよ。諦めずに頑張って。」
「暫くは休業です。」
「どうして?」
「マオが暴走することがわかったから。」
「あぁ…そっか。恋愛成就してもしなくても世界崩壊するなら詰んでるんじゃないか?」
「…。」
「まあ…今は休業だね。この一年よく頑張ったから。」
「急に先生になるじゃん。」
「先生だからね。」
「今日は衣装着ないの?」
「今日はいいよ。マナも疲れてるだろうし。」
「何でもいいから着ようよ。」
「え!?着たいの!?」
「うん。」
「そ…そんな…!?マナが変態に目覚めてる…!?」
「違うから!!バカなことやって現実逃避したいだけ!!」
「そんな照れなくても〜」
「はいはい。私は変態なのでエッチなコスプレを所望しています。」
「最高だよマナ…。もう一度言って…」
「私は変態なのでエッチなコスプレがしたいです。」
「うううっ。マナをこんなエッチな変態さんに育てることが出来て感無量だよ…。じゃあ今日はどスケベなバニーガールにしようね…。」
「イシュタル先生。もう新聞部行かないで。」
「どうして?」
「私に気遣って欲しくないから。死にかけてたなんて知って遠慮してたでしょう?何も知らないままでいて欲しい。」
「マナが望むならそうするよ。」
「ありがとう。」
私はバニーガールの衣装に着替えると
イシュタル先生は咽び泣いて喜んでいた
私は教室に入る
「マナ…。」
「…おはよう。クリス。久しぶり。」
「…マナは…マナ…は…恋…しちゃった?」
震える声でクリスが言う
「してないよ。」
私がそう答えるとクリスが私に抱きついてきた
「よかった!!!!」
少し涙ぐんでいるクリスを思わず抱きしめ返す
「まだ私には早かったみたい。」
「まだ二年もあるんだから大丈夫だ!!絶対俺はスリー様より優秀になって惚れさせるから!!次期生徒会長にも任命されているんだ!!」
「スリー様はもっと優秀になりそうだけど?」
「絶対負けないから!!」
「フフフッ。別に優秀さの優劣で好きになったりしないよ。」
「じゃあ何だ!?なんでスリーだけそんな特別扱いする!?」
「もうすぐ卒業だからたくさん遊びたかっただけだよ。」
「…は?そんな理由で?授業抜け出して逃亡したのか…?」
「うん。」
「…。」
「楽しかったよ。」
「俺も行きたい…。」
「卒業するときね。」
「長すぎるよ…。」
「あっという間だよ。きっとね。」
昼休みになり私は生徒会室にいるスリー様のところ向かう
「こんにちは。スリー様。」
「こんにちはマナ。体は本当にもう大丈夫なの?」
「私の白魔法は最強だから。」
「そうだね…。」
しんと空気が静まり返る
「スリー様。ありがとうございました。」
「え?お礼を言われるようなことはしてない…。」
「何言ってるんですか。忙しい時なのに一緒に遊んでくれたじゃないですか。」
「そのせいで…マオくんは…」
「関係ないよ。関係ない。」
「でも…」
「私は楽しかった。それに…私が倒れた時にずっと側にいてくれたでしょう?あんなのトラウマになるし誰もが見たくない醜い姿だったのさ。ありがとう。嬉しかった。」
「そんな…私は何も出来なかった…」
「側にいてくれたじゃない。」
「それしか出来なかった。」
「側にいてくれたから苦しくても耐えて生きていられたんだよ。本当に感謝してる。ありがとう。」
私がそう言うとスリー様は泣き出してしまった
「マナはいつも私を救ってくれるね。」
「スリー様に私も救われてるよ。」
「嘘だあ。」
「本当だよ。」
私は頭をポンポンと撫でる
「いつもありがとう。スリー様。」
私はスリー様が泣き止むまで頭を撫でた
「また遊びに行きましょうね。スリー様。」
放課後オーケストラ部の練習へ行く
「サボり魔が来た。」
「…申し訳ございません。」
「…俺はね。マナの決めた人なら潔く諦めようと思ってたのにさ。すぐに気持ちは切り替えららないものなんだね。」
「私とスリー様は付き合ってないですよ。」
「うん。今日教室でクリスと抱き合ってた時に聞いた。」
「…。」
「こんなにも気持ちが乱れて上手に弾けなくなるなんて初めてだったよ。」
「そう…ですか。」
「弾いてみて。」
「え?何をですか?」
「今の気持ちをそのまま。選曲は何でもいいから。」
「わかりました…。」
私は思うがままにピアノを弾く
考えないで行動したせいで
たくさんの人達を傷つけて迷惑をかけた
今回のことは全部私が悪い
私が悪かったんだ
私が弾き終わるとニックは拍手をしてくれた
「素晴らしい演奏だったよ。マナ。何があったかわからないけれどマナは落ち込んでいる時の方が集中力が上がって演奏力が上がるの凄いな。」
「ありがとうございます…。」
「逆境こそ力になるのか…勉強になるなぁ。俺もこの初めてのぐちゃぐちゃの感情をぶつけてみればいいのかもしれないね。」
「そうかもしれませんね…。」
私がニックに演奏を説くなんてありえない事態だけど…
「じゃあマナは来年のコンクールの練習しようね。」
「またニックの伴奏ですか?」
「違うよ。」
「え!?違うんですか!?」
「マナはピアノのコンクールに出るんだよ。」
「え…。は…!?」
「これ課題曲だから。今日中にミスなく弾いてね。」
「私コンクール出るなんて…」
「サボってたくせに口答えするつもり?それだけ集中力あって演奏出来るんだから出来るよね?」
「…はい。わかりました…。」
有無を言わさず練習させられた
この世で一番偉いのはオーケストラ部の部長だから