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第14話 モブ令嬢とお父様

お父様は本当に日程を調節してくれて、一ヶ月後にお父様と演劇を見に行くことになった。

 私が白魔法覚醒する予定の七歳の誕生日、聖杯の前で白魔法の精霊と交渉することになっている。七歳の誕生日まで後四ヶ月ぐらいになった。毎日のように鏡の前でお願いの練習をアリサとレイと一緒にしている。そして一ヶ月が経ち、お父様との約束の演劇の日になった。

 「ねぇ~。ドレスもっと大人っぽいやつないの??ゴリゴリのお姫様みたいなドレスしかないんだけど~」

 「いいじゃないですか!お姫様なんだから!」

 レイが言う。

 「私の顔地味だから似合わないよ〜。」

 「何言ってるですか!いつもノリノリで着てたじゃないですか!似合ってますよ!!」

 「レイの言うこと信じられない。」

 「ひどい!めっちゃ似合ってるのに!!アリサそうだよな!!」

 「旦那様と出掛ける服装ではないですね。」

 「アリサは分かってない!旦那様だって可愛いマリアお嬢様が大好きなはずだ!」

 「ハァ…朝、今日着る洋服を購入して夜演劇に行きましょう…。私がきちんとドレスを確認をしていなかったから…申し訳ございません…」

 「じゃあこの前買わなかった黒のワンピースにしよう~」

 「いやいや!絶対いらないですって!!旦那様は~」

 「「うるさい。」」

 私とアリサの声がハモる。黙っていれば黒のワンビースだって似合うんですぅ~。

朝開店と同時にアリサとレイとブティックに行き、黒のワンピースと大人っぽい服装を何着か他にも購入した。レイはずっと必要ないってうるさかったけど。

 黒のワンピースを着て、アリサは髪のセットもしてくれた。鏡を見て思う。お母様は私のことブサイクだって言うけど、マリアって顔立ちこそ地味だけど綺麗に整ってるパーツだと思うんだけどな。鏡の前にいるマリアはアーネルド家そのものの気品溢れる令嬢だ。

 「マリアお嬢様らしくない…」

 レイはずっと文句言ってるけど、これから社交界に出る時はこの方が絶対いいだろうな。

 「うるさいな。私だってアーネルド家の一員なの。この姿の私だって私よ。受け入れなさい。」

 「お嬢様が以外とアーネルド家としての自覚があり驚いています。私の心配しすぎでしたね。」

 「私は本来十六歳なのよ?本音と建前ぐらい必要なことはわかっているわ。」

「十六歳も十分子供ですけどね。」

「アリサとあんまり変わらないじゃない。」

 アリサとレイは同じ年齢で十八歳だ。

 「前世の話でしょ?今は六歳の子供ですよ。そんなこと言ったら私の前世は八十歳まで生きてますよ?」

 「記憶あるの!?」

 「ないですけど。」

 「適当に言ってるだけじゃん!」

 「フフ…前世は関係ないってことですよ。今は私の大事なお嬢様です。前世の十六歳の少女は知りませんね。」

 「私は二人と同じぐらいの年齢のつもりでいるんだけどなぁ…」

 「私達は木に紐を吊るして遊んだりしませんよ。」

 「いや…あの…すみません…」

 アリサが笑顔で笑ってくれる。アリサ最近よく冗談とかよく言うよになったし、笑うようになったな。嬉しい。

 髪のセットが終わり支度が終わった。

 鏡を見て暗示を掛ける。

 私はアーネルド・マリア。この家の長女。頭がよく、落ち着いていて冷静な姿はまさにアーネルド家。

 一ヶ月努力して作りたげたアーネルド・マリアになりきって出掛ける。

 アリサはとても満足気だけど、レイは黙って不貞腐れている。

 「行ってきます。」

 「行ってらっしゃいませ。マリアお嬢様。」

 レイは護衛なので一緒に出掛ける。

 馬車にはもうお父様が待っていた。

 「お父様。お待たせしてしまい申し訳ございません。」

 「………」

 お父様は私を見つめたまま黙ったままだった。

 でもこれはいつものこと。お父様は基本あまり話したりしない。前回演劇の約束をした時が珍しかったのだ。

 「では行きましょうか。」

 「あぁ…」

 そう言って馬車に乗る。馬車へはお父様がエスコートしてくれた。

 馬車の中は私とお父様の二人きりだ。レイは別の馬車に乗っている。

 二人だけだと何を話したらいいのかわからず話掛けることが出来なくなっていた。お父様と仲良くなりたいから演劇に誘ったのに。何を話すか準備して考えておけばよかった…

 「あの…」

 お父様が話しかけてくれた。

 「はい。何でしょうか。お父様。」

 心の中では心臓バクバクで緊張しまくっているがなんとか冷静を装って対応する。

 「その…今日は…服装が随分違うのだな…」

 !?

 お父様はいつも仕事で屋敷に居ないから私がどんな服装をしているか知らないはずなのに!なんで知ってるの?

 「今日はお父様とお出かけですから。お父様の娘としての恥がないようにアリサがしてくれました。」

 「そうか…」

 にっこりの微笑む。令嬢らしく。

 「その姿だとヴァイオレットと似ているのだな。気づかなかったよ。」

 ヴァイオレットはお母様の名前だ。

 「ヴァイオレットはこの家に嫁いで苦労ばかり掛けてしまった。昔はマリアのようによく笑う女の子だったのに。」

 「ヴァイオレットもマリアもアーネルド家で無かったら…」

 「お父様やめてください。」

 私がピシャリと会話を止める。

 「私はアーネルド家が大好きです。この家に生まれてきてよかったと思っています。」

 「お父様は知らないかもしれないですが、お父様が屋敷に居なくて一番寂しい思いをしているのはお母様ですよ。」

 「フフフ…お母様ってお父様のこと大好きなんですよ?知らないんですか?」

 お父様はかなり驚いているようだった。

 「こんな仕事しか出来ない無能な父親で申し訳ない。子供に…ヴァイオレットに…何をしたらいいかわからないんだ。私に出来ることはやるから今回のように教えて欲しい。」

 「ではお父様に宿題です。帰ったらお母様に愛してると伝えて下さい。」

 「いや…急にそんな…」

 「大事な一人娘の言うことが聞けないんですか?お父様はお母様に幸せになって欲しいんでしょ?お父様に足りないものは言葉ですよ。ちゃんと伝えないと伝わりませーん!」

 「嫌われないだろうか…」

 「それは知りません。」

 「そんな…」

 「今までまともに話さなかった人が悪いんですー!反省しているなら行動にして示して下さいねー!」

 もう冷静な令嬢の仮面はすっかり剥がれてしまって緊張を溶けた。だってこの人不器用なだけで優しい人だって分かったから。

 「嫌われた時は慰めてあげますから勇気を出して頑張って下さいね。」

 そんな話をしているうちに馬車は劇場に着いた。

 

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