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第137話 年末年始

定期演奏会が無事に終わり

冬休みが始まる

年末年始は殆どの生徒は実家に帰る

私もエラート家に帰り、レストランでおにぎりを作って荒稼ぎの手伝いをしていた

レストランでも年末年始は休業になり

ゆっくりと過ごす時間が出来た

私は葉月ちゃんの幼少期の思い出話をお母様から聞く

父親が出て行ってお金が困っているときに

私がしっかりしないといけなかったのに

出て行かれたショックで何も出来ない時期があったこと

その時に金銭面で必死に支えてくれたのは葉月ちゃんだったこと

子供が稼ぐことは難しいのに

靴を磨いたり

髪の毛を整えたり

絵を描いたり

子供でもお金を稼げることは何でもやっていた

聡明な子供で

母親の私の方がいつも助けられていた

そんな話をたくさんしてくれた

お酒も久しぶりに飲んだのだろうか

お母様は飲み潰れてしまった

私はレイにお願いをしてお母様を部屋に連れて行ってもらう

私はお皿とコップを洗い寝ようとすると


ガチャ


扉が開いた

もう夜中の一時なのに

泥棒だと思って私は魔法石を持ち攻撃しようと構える

入ってきた男は見覚えがあった

なんでこんな写真が残っているのか謎だったけれど

おそらく母親と父親のツーショット写真で見たこいつは


「お父様?」

「…。」

「お母様と私を置いて出て行ったくせに今更何の用?」

「謝りたくて…。」

「一生許さない。はい。出て行って。」

「俺は…本気でキャサリンを愛していたんだ。だからこそ生まれてきた子供が黒髪だったことに耐えきれなかった…。」

キャサリンはお母様の名前だ

「この世に黒髪の男いましたか?」

「…いなかった。誰一人も。」

「そう。この世に黒髪なのは私だけ。神様が私が聖女だから黒髪にしたの。」

「本当に…申し訳ないことをした…。」

「だから一生許さないって言ってるでしょう?早く出て行ってよ。」

「キャサリンは…!?キャサリンと話をさせてくれ!!」

「お母様は酔い潰れて寝てます。こんな夜中に訪ねてきて非常識だと思わない?早く出て行ってよ。」

「…。」

「手紙。」

「え?」

「手紙だけなら受け取ってあげる。捨てられるかもしれないけれど。」

「ありがとう!ありがとう!!」

「早く書いてよね。」

「わかった!!」

私は紙とペンを渡すと

真剣な表情でお父様は手紙を書き始めた


「今までどこに行ってたの?」

「隣の国で鞄職人として働いていたよ。」

「そう。」

「マナはすごいね。聖女になって魔王を倒すなんてさ。」

「ありがとうございます。」

「自慢の娘だよ。」

「写真でしか見たことない人に父親面されたくないです。」

「お父様と呼んでくれたじゃないか。」

「名前も知らないおじさん。」

「俺の名前はエラート・ジェイだ。」

「この家から出て行ったくせにエラートとの性を名乗るなんて図々しい。」

「俺達は離婚してない。」

「十六年も家を空けてよくもそんなことが言えるわね。」

「謝ろうと何度も尋ねようと思ったが勇気が出なくて家に入らなかったんだ。」

「そんな勇気捨ててもう新しい人生歩めばよかったのに。」

「俺は生涯愛すると誓ったのはキャサリンだけだよ。」

「口先だけの男って私大嫌い。」

「これからの行動で示すから。」

「…ハァ。私も偉そうなこと言える立場じゃないですけどね。手紙は本当に嫌で捨ててしまいたいけれど、お母様にお渡しします。」

「ありがとう。マナ。」

お父様は手紙を書き終えて私に渡した


「じゃあ…また来るね。」

「次来る時は慰謝料と養育費払ってからにして下さーい。」

お父様が去った後に私は塩を撒いておいた


翌朝、私は起きてきたお母様に手紙を渡す

「これは?」

「お父様からの手紙です。」

「…は?」

「昨日の夜中一時にお父様が訪ねて来ました。」

「!?」

「追い返そうとしましたが、しつこかったので手紙だけ貰いました。」

「…本当に?ジェイが?」

「はい。」

お母様の手は震えている

震えた手でゆっくりと手紙を読む

「どうでした?何て書いてありました?」

「…また一緒に暮らしたいって。愛してると。」

「燃やしちゃえ。」

「…。」

「まさかよりを戻すの?お父様が出て行ったからこんなに苦労して大変だったのに?」

「わからないけど…でもまた会いたいとは思う。」

「どうして?」

「愛してるから。」

「…。」

「世界で一番愛してるから。」

「酷いことされたのに?」

「それでも…愛してる。」

本当によくわからない

これが恋なのか

十六年もほったらかしにしていたやつなんて

もう他人も同然じゃないの?

話を聞いただけでも

お父様に対しては嫌悪感しかないのに

…葉月ちゃんならどうしただろうな

本当の娘だけど

偽物の娘でもある私には

疎外感が一生付き纏う

これは私のせいであり

私が悪いのだから

自業自得だ


そういう意味では

私はお父様に似ているのかもしれない

一生消えない罪を作った私達は

自業自得であり

クズ人間だ


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