第134話 恋愛相談
肌寒くなって来て
冬がもうすぐ訪れようとしている
11月になるとスカーレット学園もクリスマスの装飾がたくさん飾られている
この学園にはパーティ会場があり
パーティ会場には大きなクリスマスツリーが飾られている
クリスマスイヴに行われるクリスマスパーティはプレゼントを用意してクリスマスディナーを食べるイベントだ
プレゼントはランダムで貰うらしい
私は一年間で一番クリスマスの行事が好き
クリスマスソングはわくわくするし
クリスマスの飾りはキラキラしていて素敵だから
こんなにクリスマスの話の前置きをしたけれど
クリスマスはまだ一ヶ月先の話だ
今日はニックに“大事な話がある”と言われたので
昼休みは生徒会の仕事をお休みしてニックと食堂でランチだ
大事な話と言われて緊張する
あのニックが呼び出しをしてまで私に何の用があるのだろう?
私とニックは食堂に移動する
私は自分で作ったお弁当を食べるが
ニックは食券を購入してハンバーグ定食を頼んでいた
「こっちだよ。」
私は食堂を利用しないのでニックに誘導してもらい食堂を歩く
「ここだよ。」
案内された場所はVIP会員部屋のような個室だった
「…なにここ。」
「あまり人に聞かれたくないからね。個室を用意したんだ。」
ますます恐ろしくなってきた
食堂にVIP個室があることにも驚いたが
ニックが個室を取ってまで話をしたいことってなんだ?
全然検討がつかない
大事な話…?
私は戸惑い緊張しながら席につく
ニックは何故か隣に座った
「何で向かいに座らないの?」
「これから先生がここにくるからね。」
「え?先生?」
イシュタル先生?
ますます意味がわからない
何が始まるの…?
ガチャッ
「初めまして!マナ様!ニック様!Bクラスのイベルト・カイと申します!この度はランチに誘って頂きありがとうございます!!」
「ミメットです。お役に立てるかわかりませんが、よろしくお願い致します。」
「ありがとう。カイ。ミメット。今日はよろしくね。」
突然の旧友の登場に心臓が止まるかと思った
イベルト・カイ
私がアーネルド・マリアのときに親しくしていた友人だ
また仲良くしたいと思っていたがこんな所で会えるなんて…相変わらず元気だな
「…初めまして。エラート・マナです。」
「本日は恋愛のご相談ということで!!ドンと私にお任せ下さい!!」
「…は?…え?恋愛相談??」
カイに?何故??
「今日は文化祭で恋人になったカイとミメットから恋愛について学ぶ会だ。」
「…は!?カイと!?ミメットが!?恋人!?!?」
「ラブラブカップルです!」
「クラスが違うのになんで…?」
「それこそ文化祭マジックですよ!俺がミメットのエプロン姿に一目惚れをして告白したんです!!それで付き合うことになりました!」
「ミメットは前からカイのことが好きだったの?」
「いいえ。初対面です。」
「なんで付き合ったの!?」
「私は私のことを好きな人が好きですから。」
「そ…そうなんだ…。」
今時ってこうなのか?
よく知りもしない相手なのに
付き合えるの?
私が付き合うことを重く受け止めすぎてるのかな…
しかし付き合っていると聞くと
少し身構えてしまう
私の前世のあだ名の一つにカップルクラッシャーというものがある
私と話すだけで惑わされて破局するカップルがたくさんいたからだ
カイは恋人の目の前で私を口説いたりしないとは思うけれど
目が合うだけで
話しかけるだけで
笑いかけるだけで
数々の男を恋させてきた私は
恋人がいる男の人は特に警戒して接しないといけない
「マナの恋嫌いをなんとかしたいんだ。」
「え?そんな…嫌いなわけじゃないけど…」
「なんで嫌いなのかなー?恋人がいると人生薔薇色だよ!!」
「恋ってよくわからなくて…」
「ヒビビッときたらだよ!!うびびびびびび!!!」
「…。」
ニック…。恋愛相談の先生の人選失敗してない?
「ミメットも?」
「私は私のことを好きな人が好きです。」
「私は私のこと好きな人苦手なんだよね。」
「どうしてですか?」
「外見で騙しているような気がして。可愛い見た目だけど全員可愛くないのに。」
「マナ様は卑屈すぎますよ!安心してください!マナ様はぜーーーんぶ可愛いですから!あっ!でも世界で一番可愛いのはミメットですよ?」
初対面の人間に対して卑屈は失礼すぎないか?
いや。私が卑屈なのは事実だけれども
事実だけれども!!!
「ミメットのこと大好きなんですね。」
「当たり前ですよ!世界で一番愛してますよ!!」
「一途でいいですね。」
「マナ様は浮気症らしいですけどね。」
「なっ… なんで!?私だれとも付き合ってないのに!!」
「たくさんの男を誘惑しているとニック様に聞きました。」
「いや…まあ…えっと…そうかもしれないけど!!」
「手当たり次第口説くのは誠実さに欠けますよ?」
「わかってるけど!私は恋人を作らないといけないから!!」
「だからキープ君をたくさん囲っているんですね?」
「いや…あの…そうだけど!!仕方ないじゃん!!誰を好きになるかなんてわかんないからさ!!全員に満遍なく接してるつもりだよ?」
「どうやって?満遍なく?」
「うーん…。みんなからたくさん話を聞くようにしてるよ?」
「それだ!」
「え?」
「受け身なのがよくないです!!もっと!!自分から積極的に話をしないと!!」
「話すのは苦手なんですけど…」
「外見で判断されるのが嫌だと言ってたじゃないですか!自分から自分の内面をアピールしないでどうやって知って貰うんですか?そんな受け身だから!ダメなんですよ!!外見でしか判断されないのはマナ様が積極的に自分がどういう人間なのかを話さないからじゃないですか?」
「…。」
意外と図星を突かれている
正論パンチは効く
何故初対面の聖女にここまで説教出来るのだろうか
カイは意外と大物なのかもしれない
「外見で判断される恋が嫌なら自分からもっと話してアピールするべきじゃないですか?」
「そうですね…。その通りだと思います…。」
「まぁ!!あんなに強烈なアイドルステージをして外見より内面を見て欲しい〜なんて難しそうですけどね!!マナ様の可愛さに勝る魅力って何かあるんですかね!?アハハハ!!!」
ぶっとばしてぇーーーー
人が気にしてることをずけずけと
自分が幸せな恋愛してるからって上から目線で
うぜえええええええええええええ
「そうですね。私の魅力は貴方のその失礼な発言を寛大な心で許してあげる器のデカさですかね。」
「器のデカい人間には見えませんけどね。」
「うるさい!!恋人が出来たぐらいで調子にのるな!!」
「ほら。器小さい。」
「絶対!!!私は悪くない!!!」
「可愛い顔が台無しですよ?」
「ねぇ!!なんでミメットはこの男が好きなの!?」
「私は私のことを好きな人が好きです。」
私達の第一回恋愛相談室は波乱だらけで終わった
二回目があるのかはわからないけれど