第132話 ハロウィンパーティ
何度も思った
やめてしまおうと
こんな衣装じゃなくても
マナは何を着ても可愛いんだから
こんなに辛い思いをして服を自分で装飾する必要なんてないんだと
別に誰に褒められることもないし
この服が出来上がってもマナがこの服を着てハロウィンパーティに参加する保証もない
何故自分で作るだなんて言ってしまったのだろう
後悔しながらも
私の手は止まることなく装飾する
意味もない
褒められることもない
しかしここでやめるわけにはいかない
あの伝説のアイドル衣装を作ったアーネルド・マリアだって
おそらく何度も諦めかけただろう
でもやり遂げた
アーネルド・マリアの魂を込めたアイドル衣装だからこそ
あの日のマナは誰よりも輝いたのだ
負けられない
絶対に
私が一番マナの魅力を引き出せる
マナはなぁ!!
もっとえっちで!!
男を全員悩殺する女なんだよ!!
俺のモチベーションはただそれだけ
マナをもっとエロ可愛く仕上げたい
俺の魂の衣装で
なんとかハロウィンパーティまでに仕上げることが出来た
隠し部屋で私は魂の衣装をマナに披露する
「本当に作ったんだ…。凄いね。」
「魂だけは込めたよ。」
「呪いじゃなくて?」
「邪念は入ってる。というか邪念しか込めてない。」
「…これ何の衣装?」
「ティンカーベルだよ。可愛いだろう?」
「見た感じ可愛い。」
「そうだろう!?そうだろう!?」
「もっとスケスケのエロい衣装を作ると思ったのに意外と普通だね。」
「そうだろう!?私は露出が多すぎるのは品がないから嫌いなんだ!!これなら可愛く着れるだろう?」
「まぁ…一回着てみるからちょっと後ろ向いててね。」
「よろしくお願いします!!」
私は後ろを向いてマナが着替えるのを待つ
「…出来たよ。」
そう言われたので私はマナの方へと振り返る
「あぁ…最高だよ。マナ…。」
マナの可愛らしさとエロさを最大限に引き出す衣装は何かと夜も眠れないぐらい考えに考えて出した答えがティンカーベルだった
妖精の可愛いフリルのスカートはとても短くマナの美脚がよく見える
胸元は控えめに空いており
背中は大胆に開けている
これぞエロ可愛さを最大限に引き出す結論衣装
私の最高傑作のマナだ
「うぅぅ…。感無量だ…。こんなにも尊くて素晴らしい最高傑作を生み出してしまった…。生きててよかった…。ありがとう神様…。」
私は思わずマナのエロ可愛さに感動して泣いてしまった
「ちょっとこれ胸元開けすぎじゃないですか?」
「そんなことない!これぐらいは普通だよ!寧ろティンカーベルの衣装で胸元を隠す方が不自然だと思わないか?」
「背中も見えすぎじゃない?」
「そんなことないさ!羽があるだろう?羽に隠れて背中はほとんど見えてないよ!大丈夫!!」
「ハイヒールが歩きにくいんだけど…」
「そんなに歩き回るパーティじゃないから大丈夫だよ!」
「まぁ…せっかく頑張って作ってくれたし…この衣装でパーティでようか。」
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
「本番って仮装して仮面もつけるんだよね。」
「そう。仮装パーティでお面をつけて誰かわからない相手を選んで一曲踊る。マナの仮面もウィッグも用意してあるよ。」
「ウィッグも?」
「だってマナの髪色はすぐにマナだとバレるからね。ウィッグつけて正体不明にしないと。」
ウィッグは金髪のポニーテールにした
「こんなに本格的にみんな仮装するの?」
「みんな衣装は特注して気合い入れて参加するから。」
「そうなんだ…。じゃあこれで参加するか。」
無事にマナからの許しを得てこの衣装を着てハロウィンパーティにマナは参加することになった
ハロウィンパーティ当日
私は隠し部屋でマナのヘアメイクも完璧に仕上げて
緑色のお面を付けさせてハロウィンパーティへと送り出す
パーティ会場では様々な仮装をして生徒達は楽しんでいる
マナも到着してパーティ会場へと入った
誰もがマナの姿に目を奪われていく
とても可愛く可憐で
それでいてめちゃくちゃエロい
目を惹かれる存在であるものの
マナの正体はすぐにはバレることはなかった
だってマナがこんなに大胆な仮装を着るなんて
殆どの人間は想像できないからだ
そんな中正体を知っている私はまっすぐにマナへと向かう
「よろしければ一曲私と如何ですか?」
「…私に触れるのは契約違反じゃないですか?」
私はタキシード衣装に仮面をつけているが、声を聞いただけですぐに私のことに気づいてくれたことに嬉しく思う
「安心して下さい。紳士のタキシード仮面ですから。」
「全然安心出来ないよ。それ。」
マナはいつも口ではきついことをたくさん言うけれど
いつも私の全てを許してくれる
私が手を差し出せば
ほら
彼女は手を取ってくれるのだ
他の生徒達もパートナーが決まり曲が流れる
私達は踊りパーティを楽しんだ
「ハイヒールなんか履かせて。めちゃくちゃ踊りにくかった。」
「私がちゃんと支えてあげただろう?」
一曲踊り終わると仮面を外して互いの正体を明かす
私とマナは仮面を取った
「タキシード似合ってるね。イシュタル先生。」
「ピーターパンを着る勇気はなかったよ。」
「アハハ!!着ればよかったのに。」
そう言うとすぐにマナはクリスに手を引っ張られてどこかへ行ってしまった
ハロウィンパーティぐらいしか私はマナと踊ることが出来ないから
マナが私の衣装を着て一緒に踊ることも出来た
人生最高の日の余韻に浸っていると
「こんばんは。イシュタル先生。」
「ガーネット・スリーさんどうしましたか?」
「随分と仲良くなったんですね。マナと。」
「私のクラスの生徒だからね。」
「体操服を盗んだのにね。」
「…。」
「話し合いで解決されたのですよね。」
「平和的にな。」
「それはどうでしょうか。脅しただけじゃないですか?」
「今の私達の関係を見ただろう?友好的なのにそんなことするわけがない。」
「マナの優しさにつけ込んで無罪放免ですか。」
「許して貰えたから解決だよ。」
「マナが許しても。王様が許しても。私は許しません。」
「…。」
「どうせ貴方の処刑が嫌で無罪にしたのでしょう?マナは。」
「処刑されるほど大罪は犯していない。」
「そうですか。しかしマナをこれ以上好き勝手にされては黙っていられません。」
「どうするつもりだ?」
「簡単ですよ。他の学校に異動してもらいます。」
「…。」
「イシュタル先生が死ななければいい。それにマナと引き離せる。異動ならマナも王様も納得するでしょうね。」
「異動になる前にマナを犯して処刑されるよ。」
「…マナには優秀な護衛がついてます。そんなことは出来ないよ。」
「できるよ。私達の秘密の楽園ならね。」
「…。」
「元々死ぬ運命だったんだ。毎日マナが幸せにしてくれるから生きているだけ。それが叶わないならこの世界に未練はないよ。」
「外道が。今すぐ処刑してしまえたらいいのに。」
「そんなことをしたらマナが悲しむよ?」
「…。」
「そんな睨みつけないでよ。私達は平和的に話し合って解決してるんだ。現状維持してくれるなら平和なんだよ。マナに救われた人間同士仲良くしよう。」
「お前と一緒にするな。」
「マナに救われたという意味では私達は一緒だよ。マナの優しさに強さに私達は救われたんだ。」
「黙れ。私とお前では全然違う。優しさにつけ込んだだけの犯罪者のくせに。」
「私はどうしようもないクズだと思っているよ。私は攻略対象者だけどマナに選ばれるなんて思ってもない。」
「攻略対象者…?何の話だ?」
「あれ?それは知らないのか。優秀なスリー様。」
「…。」
「スリー様も攻略対象者なんだ。私はね。スリー様がマナの恋人に選ばれるかもしれないと思っているんだよ。」
「何言って…」
「マナは自分に好意を抱く相手を不信に思い、自分に関心がない相手を好む傾向があるからね。」
「私なんかがマナの相手に選ばれるわけがないだろう!!いい加減にしろ!!」
「その謙虚さが。マナの恋人に選ばれる可能性があるってことだよ。私は応援しているんだ。誰よりもスリー様をね。」
「クリスやレックスやニックに敵うわけがないだろう!?」
「勝てるよ。スリー様ならね。」