第123話 文化祭前夜
朝の五時。いつも通りレックスが尋ねてきて一緒に朝食を作る
「体操服の犯人はスリー様が捕まえたんだってね。」
「そう。一日で見つけるなんて流石スリー様だよね。」
「絶対に俺が捕まえてやりたかったのにな…。このままじゃ負け犬ルートになってしまうよ…。」
「人には得意不得意がありますから。スリー様は事件を解決することに関してはプロ並みに優秀だから。適材適所ということですよ。」
「犯人はどうなったの?」
「変態から真人間に戻れる強制プログラムを受けてるよ。」
「そんなのがあるの…?」
「国のエキスパートがやっているから安心だね。」
「そうなんだ…。俺がマナの王子様になりたかったのにな。」
「何言ってんですか。徒競走で一位なってたじゃないですか。王道の王子様でしょう?」
「そうだよ!俺はクリスに勝って一位になったのに!!ぜーんぜん!!いつも通りなんだよ!マナは!!ちょっとはかっこいいとか思ってくれたらいいのにさ!!」
「一位になったから恋に堕ちましたなんてそれこそおかしいと思わない?金持ちだから好きとか顔がいいから好きとか足早いから好きとかそういう恋って信用ならないと思うんだけど。」
「そんなに重く考えなくていいんだよ!わぁあ!一位かっこいいー!!ってそういう軽い感じでもいいからかっこいいって思って欲しかったんだよ!!」
「いつもかっこいいんだからいいじゃない。」
「あの…ちょっと…不意打ちでそういうこと言うのやめて?」
「マジレスすると最下位になって惨めに泣くレックスの方がギャップ萌えするかもしれない。」
「絶対に嫌だよ!そんな俺!!」
「かっこ悪いレックスが見たい。」
「嫉妬で惨めに八つ当たりする俺は見せただろう!?」
「ヤンデレルート入るかもね。」
「嫌なフラグを立てるな!!」
「まぁまぁ。私はかっこいいとかかっこ悪いとかそういうことはあまり気にしないんですよ。こうやって毎日朝食作りながら、たわいもない雑談をする日常に尊さを感じるタイプなの。」
「今のこの時間が幸せってこと?」
「そう。」
「それはそうなんだけど…やっぱり焦るんだよ!ローズ様とイチャイチャするし…知ってるか?マナの彼氏の候補として巷で予想されているのはスリー様なんだよ!!マナがスリー様を助けたことで運命の二人だとかお似合いのカップルだとか噂されているんだ!!」
「へぇ。そうなんだ。」
「もう…嫉妬で苦しくなる…」
「ただの噂なのに。」
「それでも俺以外のやつがお似合いだと噂されているのは嫌だよ。」
「やっぱりヤンデレルート入ってるんじゃ…」
「やめてくれ!!」
その日は部活も終わり、いつもなら帰るのだが
マリアちゃんにアイドル衣装合わせをするからきてほしいと言われているので、女子更衣室へと行く
「二日間徹夜して仕上げたの…。」
アイドル衣装はマリアちゃんがお手製で作製した
ドレスで踊ろうと言ったんだけど
ドレスはアイドルぽくないとマリアちゃんが言って
私が衣装も作ると言い出したのだ
他にも文化祭の準備があり忙しいのに
“最高のアイドルを作りたいから”と言って
二日間徹夜をして仕上げてくれたらしい
完成したアイドル衣装はまさにザ・アイドルのようなフリルがふんだんに使われている衣装だった
「凄い!!これ手作りなんて!!」
「死ぬ気で頑張りました…。」
私はマリアちゃんお手製の衣装を着る
そしてマリアちゃんに見せた
「ハァハァハァ…しゅごい…可愛すぎる…私の推し…世界一可愛い…可愛さ銀河超え…カンストしてチート級…」
「あ…ありがとう…」
「か…髪も…セットしようね…」
そう言って私の髪をセットしてくれた
私の頭はツインのお団子になった
「ハァ…ハァ…最高傑作!!私は天才しもしれない!!マナをここまで可愛く仕上げられるのは私だけだぁあああ!!!」
「そ…そうかな…?ありがとう…。」
既視感を感じる
どこかの変態教師と同じ系譜を感じる
でも人生の恩人にそんなこと思うことは失礼極まりない
「最高のステージにしようね!!私のマナは世界一可愛いことを見せつけてやろうね!!」
「うん…。」
やるからには本気でやるつもりだ
全世界の人類を虜にする
私は伝説のアイドルになる