第121話 偽善
隠し部屋を出て私は自分のクラスへと行く
「おはよう。マナ。」
「…まさかクリスの顔を見て平穏を感じる日が来るなんて思いもしなかったな…。」
「どうした?ニックにスパルタ練習させられすぎて頭おかしくなった?」
「それは関係ない。オーケストラ部の活動が一番癒しかもしれない。」
「じゃあ何?どうしたの?」
「文化祭の準備が忙しくて疲れちゃっただけ。」
昨日の隠し部屋に閉じ込められた事件は大事になってない
私が閉じ込められた時間はおそらく十五分程しかない
レイが騎士団に手助けを求めただけで
学園の生徒達は誰も知らないようだ
昼休みになり生徒会室へと向かう
「スリー様。私、犯人と和解したので証拠集めはもうしなくていいですよ。」
「…和解?」
「そう。イシュタル先生と話し合いで解決したからもういいの。」
「話し合いねぇ…ごめんなさいじゃすまされないことをしているけどね。私の両親は火炙りにしようとしたくせにイシュタル先生は話し合いで解決?判決が甘いんじゃないかな。マナ。」
「いいのよ。私のことは別に。」
「自分を大切にしろって言ってたじゃないか。何故庇う?」
「自分を大切にした結果なの。」
「…マナの自己犠牲は度が過ぎてるんじゃないか?犯罪者救ってどうするつもり?」
「変態から真人間に戻すんだから社会貢献でしょう?」
「マナがそんなことをする理由は?」
「私が聖女だからかな。」
スリー様は訝しむ目で私を見る
「納得いかないな。あんなに敵視していたのに急に庇うなんておかしい。何があった?脅迫でもされているのか?犯されて、誰にも言えないから言いなりになっているのか?」
「そっ…そんなんじゃないよ!」
「…本当か?」
「本当に!!」
「…最悪の事態ではないようだが。」
「本当に話し合いで和解しただけだから!心配しなくて大丈夫だよ!」
「…助けて欲しい時は助けてと言うんだよ。」
「うん!」
放課後になり、オーケストラ部の練習が終わり魔塔へと帰宅しようとしていた所に
「マナ様。王様が呼んでいます。」
レイが話しかけてきた
「今、文化祭の準備で疲れてるからまた今度にして。」
「今すぐに連れて来いと指示を受けています。」
「今日の晩御飯作れなくなっちゃうよ。」
「ミケ様に今日は王様から呼び出しがあるので、遅くなることは伝達済みです。」
「行くなんて言ってないのに。」
「強制連行の指示ですから。」
レイは昨日の閉じ込められた事件のことを私が一切何があったか話さないから怒りが頂点に達している
「そんな怒らないでよ。レイ。ちゃんと話し合いで解決してるから。心配しないで?」
「信用できません。話はガードン王にしてください。」
目の前にスザク様が現れる
「マナ様。昨日は大変でしたね。」
「スザク様!元気してた?」
「お陰様で。マナ様は…大変そうですね。私が風魔法で王城まで連れて行きます。」
そう言うとあっという間に風魔法で私とレイとスザク様は運ばれていく
そして王城に着き、王様と謁見する
「お前は大人しく学園生活を送ることが出来ないのか?」
「やだなぁ。私はとても穏やかに大人しく過ごしていますよ?」
「隠し部屋でイシュタルと何をしている?」
「秘密です。」
「王様の命令だ。言え。」
「契約違反になりますから。言えません。」
「昨日、イシュタルが大量にコスプレ衣装を購入している姿を目撃されている。」
「…。」
「大量のコスプレ衣装で何をしているんだ?」
「秘密です。」
「マナが着ているのだろう?」
「…。」
「そんな変態行為をしてどうして黙っている?脅迫でもされて…」
「違います。私がコスプレ衣装を着たくて買ってもらいました。」
「体操服盗んだ相手にそんなことを頼むか?ありえないよ。」
「ごちゃごちゃうるさいな…」
「…何?」
「私達は!!変態行為をして秘密裏に遊んでいるの!!体操服の件は私が許しているからもういいの!!これ以上はもう触れてこないで!人の性癖暴露されるのがこわくて黙ってるだけなんだから!!」
「うそつけ!!」
「うそじゃない!!」
「ローズ様に変態行為をイシュタルがしていれば確実に殺していたくせに。自分が変態行為されたら無罪か。お前の正義は無茶苦茶だ。ただの偽善でしかない。お前が人を裁くか裁かないかを決めるな。この国で起きた犯罪は法に則って制裁を受けるんだ。お前の匙加減で決めるな。」
「…うるさいな。私が間違っているなんてわかってる!!私に正義なんてないことだってわかってるもん!!なんでこんな気持ち悪いことされないといけないんだって後悔しかないよ!今にも逃げ出したいよ!!もう最悪だし、最低だよ!!それでも…それでも!!私はあの変態教師を救ってやるって決めたから!!私の人生捧げてあいつの変態行為を一生相手にするって覚悟決まってるんだから!!」
「どうしてそこまで変態教師を救いたいんだ?」
「だって…イシュタル先生は私以外には無害だしで有能な教師でしょう?いい人なの。それに…今まで人生つまらなそうにしてたのにさ。今日私がコスプレしたら凄い幸せそうに笑うの。」
「…。」
「本当に気持ち悪くて最悪最低な教師だけどさ。悪い人じゃないよ。ちょっと恋愛拗らせてるだけの変態なの。だから私が面倒みてあげるの。一生賭けてね。」
「お前のお人よしは底なしだな。」
「