第112話 体育祭
スリー様の両親は牢屋に投獄されてこの件は決着した
スリー様の両親が牢屋に入ったことは学園中に知られた
スリー様が心配で様子を見によく生徒会室に行ったけど
思いの外元気に過ごしていた
噂の的になっているが
気にしていないようだった
“元気そうでよかった”と伝えると
“マナ様と友人になれて嬉しいんです。毎日私を心配して会いに来てくれるでしょう?こんなに嬉しいことはないです。噂なんて気にならない程にね”と言ってくれた
スリー様は友達を作ることさえ臆病で出来なかったから
初めて友人と呼べる存在が出来て嬉しいみたいだ
スリー様の最初の友人になれるなんてとても光栄だ
私も友人を作るのは実は苦手で
だからこんなに気楽に話せるスリー様が友人になってくれて本当に嬉しい
友達になって救われたのはもしかしたら私の方かもしれないな
その後穏やかな日常を取り戻した
そして今日は体育祭の日だ
赤組と白組に分かれて競う
ここは乙女ゲームを元に作られた世界だけど
体育会系の攻略対象っていないんだな
鉄板なのに
王子様系が二人いるからな
クリスとレックスが文武両道すぎるから
体育会系が霞むのかもしれない
ゲームの作者の意図なんて今更どうでもいいんだけれど
私は白組になり、この体育祭の為に練習を重ねた
私が出る種目は借り物競争、男女混合リレー、そして応援団だ
私と全く同じ種目で出るローズ様と私は練習時間を長く過ごすことになり、ローズ様と仲良くなれた
特に応援団のチアリーダーの練習は最高だった
チアリーダー姿のローズ様はめちゃくちゃ可愛くてかっこよかった
誰よりも早く振りを覚えてみんなに教えてあげていて
相変わらず優しいしカリスマ性も高いし
こんなん惚れるやろ誰だって
私は練習の時から必要以上にローズ様に抱きついたり
腕を組んだりしていた
ローズ様に抱きついた時にフワッといい匂いがするのたまんない
クリスが私のことよく嗅いでるけど気持ちわかってしまった
まぁローズ様は私が抱きつくと毎回鬱陶しそうにしてるんだけど
でも嫌とは言わないんだよね
離れろとも言わないし
なんか期待しちゃうよね
準備期間にローズ様と仲良くなれて幸せだった
今日の本番が名残惜しいなぁ
「あ。男子の百メートル走が始まるわよ。」
隣に座っているローズ様が言う
こうやって隣で談笑するぐらいに私達は仲良くなった
「本当ですね。」
「どっちを応援するの?クリス?レックス?」
「レックス。」
「へー。王道のイケメンが好きなんだ。」
「いやいや。白組だからですよ。クリスは赤組でしょう?」
「おもんな。」
「白組応援するだけでそんなこと言わないで下さいよ…」
「絶対勝つから見ていてなんて言われてたくせに」
「クリスとレックスからね。あの二人やっぱりライバルなんですね。」
「好きな女の前でかっこいいところみせようと二人は争うのにマナは全く関心ないんだもの。面白くないよ。」
「そんなこと言われましてもね…。」
「ドロドロでぐちゃぐちゃの昼ドラのような展開になると思ったのに。」
「嫌ですよ!そんな展開!!」
「あ!始まるわよ!どっちが負け犬になるのかしら!?」
「どっちも全力で頑張るんですから。結果はどうであれ、どっちも素敵だと思いますよ。」
「おもんな。」
「どうして!?」
「聖女様の博愛主義は素晴らしいけれど、現実は弱肉強食だからね。マナだっていつかは一人決めて恋人にしないとダメなんだから。」
「…今はいいや。ローズ様とこうやってお話する時間の方が好き。」
「あーぁ。そんなこと言ってたらあっという間に三年終わるからね。マナは誰も選ばずにこの世界は滅ぶ未来が見えるよ。」
パァン!!
ピストルの音が響きクリスとレックスは走り出す
二人の実力は拮抗していて最後まで勝負がわからない接戦になり生徒達は大盛り上がりだ
ゴールテープを先に切ったのはレックスだった
レックスは私の方を振り返り笑顔でピースサインをした
私は大きく手を振ってレックスの勇姿を讃えた
「いいなぁ。私もあんな風にゴールした後ファンサされてみたい。」
「私がやりますよ!ローズ様に一番を捧げてあげますから!」
「マナにされても嬉しくない。」
「えぇー!こんなに可愛い女の子にされたら嬉しいでしょう?」
「女は自分より可愛い女が好きじゃないの。」
「辛い。」
「フフフッ。」
「クリスが落ち込んでるから後で声かけてあげよ。」
「ほっとけばいいのに。あのバカ王子。」
「ローズ様って明らかに敵意ありますよね。クリスに。」
「だって最近マナと仲良くしてるだけで何話してだとかくっつくなとか毎日文句言ってくるんだもの。うざい。」
「なんかごめんね。」
「別に。あんたが悪いわけじゃないから。」
いよいよ今度は男女混合リレーが始まる
赤組はクリス、ニック、
白組は私とローズ様、レックスが参加する