第103話 帰省
私は王城の牢屋で三日間入れられることになった
まさか牢屋に入ることになるなんて
人生何が起こるかわからないものだな
牢屋は何もなくやることがなかったのでピアノを牢屋に持ってきて欲しいと頼んだが、クリスに私が牢屋に入っていることがバレると面倒くさいことになるからダメだと言われてしまった
確かに面倒くさいことになりそうだったので諦めた
夏休みの宿題を持ってきて欲しいと頼んだら持ってきてくれた
私は三日間毎日宿題をして過ごした
他にやることもなかったし
最後の一日は宿題も終わってしまったから落書きしてた
時々王様が
“あんなに気難しいミケをどうやって手懐けたんだ?”
“マオは穏やかなのに…マナの影響でマオも感情的に暴れ出したらこの国は終わりだよ…”
“マナ…普通に恋愛しよう?お願いだらさ。”
そんなことをわざわざ愚痴りに来ていた
王様も忙しいだろうに
少しでも会いに来てくれるのは気が紛れて嬉しかった
私が魔塔に帰る時も見送りしてくれた
律儀な人だな
魔塔に帰ってきたが、私はすぐにまた出て行く
実家に帰るからだ
実家と言っても初めて行く場所だけれど
エラート家
入れ替わって初めて実家に帰省する
マオと私は暫く離れて過ごせとミケお爺ちゃんから命令されたので私は一人で帰ることになった
道は今のマリアである葉月ちゃんから聞いていたのでメモを頼りに実家へと帰った
エラート家はレストランと家が同じだ
私が帰るとレストランは営業中で、そこで働いている
私の母親であろう人と目が合う
「あ…あの…」
「初めまして。」
私達の入れ替わりのことは学園に入る前に母親に葉月ちゃんは説明していたようだ
その後、入れ替わったことも手紙でも報告したと葉月ちゃんが言っていた
「申し訳ございません。貴方の愛したマナじゃなくて。」
「フフフッ。娘が二人になったのよ得した気分だわ。」
そう言って笑ってくれた
「今、猫の手も借りたい程なの。レストラン手伝ってくれるかしら?」
「わ、私でよければ…」
私は前世を含めて働いたことがない
そんなやつが初めて働いて上手くいくはずもなく
レジのお釣りを間違ってしまったり
注文した食事を間違って違うテーブルに持って行ったり
何もないところで転んでお皿をわってしまった
余計に仕事を増やしてしまっていた
自分の無能さに
自己嫌悪に陥る
レストランは20時に閉店をして
私達の話し合いが行われる
「前のマナは元気?」
「はい。穏やかな日常を過ごしているそうです。」
「そう。よかった。」
「すみません。私全然レストランのお手伝い失敗だらけで…」
「いいのよ。誰だって初めては失敗するものだから。」
「失敗したらパニックなっちゃって。焦るとまた失敗して地獄のループでしたよ。毎日働いてるお母様はすごいですね。」
「慣れたら大丈夫よ。フフフッ。前のマナは何でもそつなくこなしていたから不思議な感覚ね。同じ顔なのに、全くの別人に感じるわ。」
「別人ですからね…」
「アハハ!そうね!!今のマナのことたくさん聞かせてよ。何が好きで。何が嫌いなのか。」
「私のこと嫌いじゃないんですか?大事な娘を入れ替えたのに。」
「またレストランに会いに来てくれるって言ってるし、二度と会えなくなるわけじゃないもの。少し早く私から旅立ってしまっただけよ。あの子は私の大事な娘。それは一生変わらないわ。だから貴方を嫌いになんてなる理由ないのよ。」
「そう…ですか。私はもう前の家には戻れないな。」
「どうして?」
「大好きだから。愛してるから。赤の他人になった事実をまだ受け入れられないの。」
「赤の他人になんてなってないわよ。貴方はアーネルド・マリア。アーネルド家の娘だわ。」
「でも…」
「貴方の親は私じゃなくてアーネルド家の両親。そうでしょう?」
「それはそうですけど…」
「姿が変わっても貴方を娘として大事にしてくれるわよ。」
「前のマナはそんなことをされると嫌がるんじゃないでしょうか…?これから先は前のマナがアーネルド家として過ごとになるのに。いつまでも私が出しゃばったら迷惑じゃないでしょうか?」
「私の娘はそんなこと気にしないわよ。アーネルド家の両親は貴方に会いたがってると思うわ。私の娘もね。もう会わないなんて言わないであげて。」
「まだ顔を合わせる勇気がないです…」
「そんなこと言ってないで早く会いに行ってあげなさい。」
「自分の犯した罪の重さに自ら罰を与えているのかもしれないです。こんなことをしたのに昔の家族の愛情も手放さないなんて虫が良すぎる気がして。」
「罪ねぇ…そんなこと思ってるの貴方だけじゃない?貴方の意味のわからないルールで会えないアーネルド家が可哀想だわ。姿が変わっても大事な娘なことには変わりないのに。」
「前のマナの人生をめちゃくちゃにした私がそんなことをして許されるんでしょうか?」
「許すも何も。誰も恨んでなんかいないわよ。」
私はポロポロと涙を流す
「会いたいです…私を愛してくれたアーネルド家に帰りたいです…。」
「いいのよ。いつでも帰りなさい。貴方の帰りをきっと待ってるわ。」
「ごめんなさい。こんなこと言って。今はもうエラート家の娘なのに。無神経ですよね。こんなの。」
「私だって貴方を娘だなんて思えないわよ。残念ながらね。貴方は娘の大事な友達。だからいつでも頼ってね。私のこと母親なんて思わなくていいから。友達とおばちゃんとして接してくれたらいいわよ。」
「はい…。ありがとうございます…。」
「