6話
あたしや母さんのプールに新しくヘレナがやって来て、一ヶ月が過ぎた。
すっかり、ヘレナは馴染んでいてあたし、母さんによく話しかけてくれる。オオノさん、カワモトさん、ハタノさんの三人もよく気に掛けてくれていた。
『ねえ、フェリちゃん。あたし、聞いたんだけどね』
『どうしたの?ヘレナ』
『何かね、あたしの担当のハタノさんが教えてくれたの。また、新しい子が来るみたいよ』
あたしはそれを聞いて、小さな目を見開いた。コポコポと頭の穴から、空気の泡が出る。
『え、また新しいシャチが来るの?!』
『うん、まあ。今から、もっと先になるみたいよ』
『ふうん、そうなんだ。ヘレナみたいにオンナノコならあたしも歓迎するわ』
そうは言ったけど、やっぱり戸惑ってしまう。ヘレナは察したのか、ハタノさんの所に行ってしまった。あたしは一頭で黄昏れた。
あれから、また一ヶ月が経った。季節は五月くらいでカワモトさんの言葉を借りたら、ショカって言うらしい。あたしはいきなりにタンカで運ばれてきたシャチが目に入り、驚きを隠せなかった。母さんやヘレナも同じ感じだ。三頭で水面から、確認する。ちょっとだけ、新しい子の背びれが見えた。オンナノコの背びれでなく、オトコノコの形だ。確か、大きくてチョッカクな背びれだったか。
『……あら、今度はオトコノコみたいね』
『本当だ!』
『あたし、オトコノコを見たのは久しぶりよ!』
一番最初が母さん、二番目があたし、最後がヘレナだ。三頭で顔を見合わせたのだった。
後で、プールに入って来たのはやはり、オトコノコだ。カレは母さんやあたし、ヘレナに近づくと丁寧に挨拶してくれる。
『……やあ、初めまして。オレはカロンと言います。よろしく』
『初めまして、私はリアよ。カロンさん、よろしくね』
『初めまして、あたしはフェリです』
『……初めまして、あたしはヘレナです。よろしくお願いします』
『えっと、リアさんにフェリさん、ヘレナさん。オレ、ちょっと隅っこに行きますね』
何を思ったのか、カロンさんは隅っこに本当に行ってしまった。あたし達はどうしたものやらと思うのだった。