5話
あたしや母さんのプールにヘレナが来てから、半月が過ぎた。
母さん、ヘレナと三頭で今日もパフォーマンスを頑張る。オオノさんやカワモトさん、新しくトレーナーになったハタノさんの三人があたし達にサインを繰り出す。ちなみに、オオノさんやカワモトさん、ハタノさんはみんなオンナの人だ。まあ、交代でたまにオトコの人も来るけど。
あたしが平行ジャンプをすると、プールの周りのお客さん達が拍手や歓声をあげる。
「「凄い!」」
あたしはまた、トレーナーのカワモトさんの元に戻った。頭や口元を撫でられながら、ちょっと誇らしくなる。
カワモトさんもにっこりと笑ったのだった。
夕方になり、パフォーマンスは終わった。ヘレナや母さんと語らう。
『今日もあたし達、頑張ったよねえ』
『本当にね、ヘレナちゃんやフェリは息が合っていたわ』
『うん、ヘレナが上手く合わせてくれたから。やりやすかった』
ヘレナが言えば、母さんが頷く。あたしもヘレナを褒めた。
『……えへへ、フェリちゃんもあたしがやりやすいようにしてくれてたでしょ』
『まあね、よく見てるわね』
『フェリちゃん、あたしがやって来る前は寂しそうにしてたらしいね。リアさんから聞いたわ』
あたしは母さんを見る。ちょっと、気まずそうに顔を逸らした。
『……もう、母さん。そう言う事は言わないでよ』
『だってねえ、ヘレナちゃんが来る前はあんた、よく黄昏れてたじゃないの。あたしも心配だったのよ?』
『そりゃあ、そうだけど』
『まあまあ、リアさんもフェリも喧嘩は良くないよ。ね?』
仕方なく、あたしは母さんに言った。
『……ごめんなさい、母さん』
『こっちこそ、ごめんね。勝手に言ったのはダメだったわね』
『うん、仲直りできたね。さ、トレーナーさん達も帰っちゃったし。早めに寝ちゃお!』
あたしと母さんは頷いた。プールの端っこに行き、ヘレナと二頭で眠りについたのだった。