3話
あたしの体が悪くなってから、カワモトさんや母さんは凄く心配していた。
オオノさんも気にして、時折様子を見に来る。
「フェリ、おいで」
『キュー』
カワモトさんの代わりに、オオノさんがあたしの頭を軽く撫でた。
「……やっぱり、リアとだけだと。寂しいのかな?」
『?』
「フェリ、新しい子が来るから。もうちょい、待っててね」
オオノさんの言葉はあたしには分からない。ただ、気を使ってくれているのは分かった。オオノさんから、氷や魚をもらうのだった。
あれから、三日が過ぎる。やっと、ジュウイさんがくれたゼリーのおかげか、体が元気を取り戻してきたみたいだ。あたしは久しぶりに、母さんと二頭でカワモトさんやオオノさんのサインに答える。ジャンプをしたり、スピンジャンプをしたりと元気に動く。
「「凄い!!」」
お客さんが拍手や歓声をあげた。あたしはやっぱり、これがいいなあと思う。小さな子達がはしゃぐ姿を見るのが好きだから。母さんもどことなく、楽しそうだ。
その後も二頭でパフォーマンスをしたのだった。
夕方になり、またカワモトさんやオオノさんは帰って行った。けど、寂しくない。改めて、母さんに凄く心配を掛けていたのが分かった。
『……母さん、心配掛けたね。ごめんなさい』
『いいのよ、フェリが元気になってホッとしたわ』
『うん、オオノさんがね。新しい子が来るって言ってたの』
『あら、そうなの?』
『うん、それを聞いてから。ちょっと、楽しみになってね。どんな子が来るかなあ』
そう言うと、母さんは口を開けて笑う。コポコポと泡が水面に上がっていく。
『今から、気にしてるのね。まあ、気持ちは分からなくもないわ』
『うん、年の近い子だったらいいね』
『そうね、フェリと年が近かったら。気が合うかもよ?』
あたしは頷いた。しばらくは母さんとお喋りをしたのだった。