2話
あたしが寂しく、お月様を眺めていたら。
何故か、母さんが後ろにいた。
『フェリ、そんな悲しげに鳴いても仕方ないわ。寝ましょ!』
『……母さん』
『さ、こんな所にいないで。中に入りましょ』
あたしは仕方なく、母さんと一緒に屋根がある場所もとい、サブプールに行った。母さんは気が紛れるように、色々と話しかけるのだった。
朝が来る。ちょっと、寝不足だが。飼育員のカワモトさんやオオノさんがやって来た。
「おはよう、フェリ、リア!」
『……キュー』
元気の良い挨拶に鳴き声で返答したが。カワモトさんは首を傾げる。
「……あれ、フェリ。元気がないなあ」
『……』
カワモトさんはあたしを見て、眉を八の字に下げた。
「大野さん、ちょっと。いいかな?」
「どうかした?川元さん」
「うん、ちょっと。フェリがいつもより、元気がないみたいで」
カワモトさんがオオノさんを呼び、二人で話をしている。あたしはまた、プールの中に潜った。
『フェリ、まだ眠たいの?』
『うん、眠たいし、何だかね。いつもよりダルいの』
『……大変だわ、カワモトさん達は行ってしまったし』
あたしが言うと、母さんは一気に慌て出す。二頭でどうしたものやらと思うのだった。
その後、カワモトさんがジュウイの先生を連れて来た。
「先生、フェリの様子がおかしくて。元気がないみたいなんです」
「……成程、ちょっと診てみますね」
先生はあたしの口を開けさせて、中をチェックしたり、採血ってのをしたりした。いろんな検査をされて終わる頃には、疲れていた。
「どうやら、心労から来ているみたいですね。フェリ、餌はちゃんと食べていましたか?」
「いえ、あまり食べていません。もしかして、ストレスが溜まっているのでしょうか」
「……たぶん、ストレスが溜まっているのは確実でしょう。無理はさせないようにしてあげてください。では、念の為に栄養補助のゼリーを出しておきます」
「ありがとうございます」
「じゃあ、僕はこれで失礼しますね」
先生は持ち場所に戻って行った。カワモトさんはあたしに手招きする。
「なかなか、気づかなくてごめんね。フェリ」
『キュ』
カワモトさんは苦笑いしながら、あたしの頭を撫でてくれた。母さんも心配そうに見ていた。