第3話 教育係
「おはようございます。テネブル様。」
朝、目を覚ますと、リータが話しかけてきた。
「おはようございます。」
寝ぼけまなこを擦りながら返事をする。
「今日は、"お父様"がお見えになります。」
カーテンを開ける音を聞きながら、体を起こす。
ーもう1週間か。ー
毎週決まった日に父親が会いに来る。
ちなみに一週間は7日、1日は24時間で、暦に関しては地球と変わらないらしい。
「わかりました。」
そう言うとベットから出て、立ち上がる。
すでに歩いて、会話もできるようになった。
年齢はおそらく3歳くらいだろう。
「お待ちください!テネブル様!」
寝巻を脱ごうとするとリータが慌てて止める。
「どうしたの?」
「どうしたの? ではございません!着替えは私たちにお任せください!」
「これくらい大丈夫ですよ。」
「いいえ!お任せください!」
袖から腕を抜こうと四苦八苦していると、リータがスッと服を脱がす。
「はい、手を上げてください。」
おとなしくバンザイをすると、リータがスッと服を着せる。
「はい!着替え完了です!」
「……ありがとうございます。」
リータは得意げな表情をしている。
まだまだ自分で着替えるのは難しい。
「朝食の用意ができました。」
外から声がかかる。
「それでは、食事に行きましょう。」
得意げな表情をしているリータをそのままに部屋を出る。
「ちょっと!お待ちください!」
後ろからリータが追いかける。
ほかのメイドたちは毎日繰り広げられるそんな様子をにこやかに眺めている。
ーーー
「いやー、本当に大きくなって、私もうれしいぞ。」
ハッハッハーとソファーに座る金髪の壮年男性が笑う。
この男性が自分の父親だ。
「ありがとうございます。お父様。」
自分はソファーの前で頭を下げている。
リータに何回も練習させられた。
この世界における礼儀作法らしい。
普段の父親との面会はこんなに硬い挨拶はしない。
どうやら今日はなにか特別なことが起きるらしい。
「テネブルももうそろそろ"教育係"をつけるべきだろう。」
父親はそう言うと隣に立つ初老の男性を一瞥した。
父親に見られたおじいちゃんは一歩前に踏み出し、自分の前にしゃがむ。
「はじめまして、エイリークと申します。」
にこやかに挨拶をする。
「テネブルです。よろしくお願いします。」
とりあえず挨拶されたので返しておく。
「うむ、さすが私の息子だ。礼儀作法がしっかりできておる。」
ハッハッハーとまたしても父親が笑う。
「それでは、エイリーク。これからテネブルのことをよろしく頼むぞ。」
「はい、お任せください。」
エイリークは父親の方を向くと頭を下げる。
「テネブルもエイリークの言うことをよく聞くように。」
「はい、わかりました。」
自分もエイリークと同じように頭を下げる。
今日から自分の世界にはあたらしくエイリークが加わった。