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プロローグ

20XX年 11月4日 午前9時54分

XX県XX市 国道XXX号線


 バスは雨が降りしきるなか西に向かっていた。


 修学旅行は最悪のスタートだった。


 今日は朝から土砂降りの天気で、学校を出発。


 最寄りのインターチェンジで高速道路に乗る予定だったが、その先の県境のトンネルで事故が起き、そのトンネルが通行止めに。


 そのためバスは高速道路ではなく下道で県境を越えるために国道を走っている。


ー本当は修学旅行なんか行きたくなかったー


 窓を見ると打ち付ける雨粒と霧がかった景色が見える。


 そもそも他校の行先は沖縄や台湾、韓国、グアムなのに、なぜかわが校の行先は近場の観光都市である。


 なんでも、昨年までは沖縄だったが、昨年の2年生が問題行動を起こしたらしい。


 体裁を気にする学校が今年は行先を変えたそうだ。


ーはぁ、とため息が出るー


 別にそこに行きたくないという訳ではない。

 が、他と比べてしまうと何となく悲しい。


 さらに、新幹線があるのに、何故かバスで向かっている。


 新幹線で行けば2時間半で行けるのに、バスでは5時間もかかる。


 そして、当日、この様である。


「雨、残念ですね」


 ため息をついたのが、天気を憂いていると思ったのか隣に座る隣の子が話しかけてきた。


「そうだね。」


 一言。気の利いた返しをせずに会話を終わらせようとする。


 高校に入学してからはまともに人と会話をしていない。


 他人と会話するのが苦手だ。人なんてなに考えているのかさっぱりわからない。


 中学生のときはそのせいで苦労した。


 できないことはするものではない。


 高校では誰にも話しかけず、話しかけられても当たり障りのない返答で会話を終わらせてきた。


 そのせいで友達と呼べるひとはいない。


 学校に行っても一言も喋らない日の方が多いくらいだ。


 クラスでは日陰者どころか殆ど空気と同じである。


 だが、面倒な人間関係からの解放は心の安寧にとても良い効果をもたらしていた。


「もうすぐ晴れるかもね。」


 少し気分が良くなったので自分から会話を続けてみた。


「そうだよね!」


 嬉しそうに返事をする彼の横顔をちらっとみる。


 始めて彼の顔をしっかり見たが、笑顔を湛えた彼の顔はとても輝いていた。


ーーー


「12時になりました。ニュースをお伝えします。」


「速報です。今日午前10時頃、XX県XX市の国道XXX号線でトラックがバスに衝突する事故がありました。」


ヘリコプターからの映像が流れる


土砂降りの雨のなか、道から外れて黒煙を上げて横転するバスとなぎ倒された木々、事故現場に集まる警察と消防がテレビに流れる


「このバスにはXX県立XX高校の生徒が乗っており、現在生徒の安否は不明とのことです。今も消防によって救助活動が続けられています。」


「警察は事故の詳しい原因を調べています。次のニュースです。今日午前8時頃XX駅で……


ーーー


1043年

レース王国 王城応接間


「これで本当にうまくいくんだろうな。」


豪華絢爛な装飾に包まれた部屋の中心で、修道服に身を包んだ集団に囲まれる老人に男は話しかける


「勿論でございます。陛下」


話しかけられた老人は陛下と呼んだ男に恭しく頭を下げる


「そうか。それじゃ……」「陛下!」


部屋に押し入った甲冑の騎士が男の声を遮る


「来たか。」


男は騎士のほうに振り返ると騎士は肯定するように頷いた


「では、始めよ。」


老人に向き直った男はそう老人に伝える


「御意。」


老人が両手を上げる


周りの人間もそれに合わせて手を上げる


すると、床に書かれた白線が光り始めた


「なんだこれは……。」


男は思わず言葉を漏らす


見えないが何か大きな力が目の前に存在するような感覚がしたからだ


「本当に存在するのか……」


男は誰に伝えるでもなく言葉をこぼす


次第に白線の光度が増して来る


「っ……」


あまりの眩しさに男は目を閉じ両腕で顔を覆う


ドサッ


何かが落ちる音がした


男は片目を開け、腕の隙間から様子をみる


ドサッ、ドサッ、と修道服を着た人が次々と倒れていく


男は何も言えずその場に立ち尽くす


最後まで立っていた老人がこちらを向いた


「ー。」


老人は口を動かした後、床に倒れた


白線の光りは消え、部屋には倒れた人間と男が立ち尽くすのみであった


数日後、王国は隣国に攻め滅ぼされ、男は一族もろども殺害された

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