悪魔の秘密
2017年 ハワイアンジェファソンシティ
「ここが奴らのアジトか?」とバイカーギャング「ソルジャーオブゼウス」の総長ホートマンはバイクの運転席から後方のバイクに問いかける。それに対してハワイを拠点とするバイカーギャング「サンズオブユピテル」のメンバーが「そうだ。奴らブラックアーミーズのせいで俺たちの顧客が困ってる」と応じた。
ホートマンは、「よし、行こう。」と言って「サンズオブユピテル」のメンバーのさらに後方に位置するバンに合図する。バンからはキューバ系ストリートギャング「ハバナ・ボーイズ」のメンバーが4人、降りてくる。
彼らは近くにあるさびれた立体駐車場に足を踏み入れる。
駐車場内ではオレンジ色のバンダナとシャツを身にまとったアフリカ系のストリートギャングらしき男女が酒を片手に、ラジオから流れる曲に合わせて踊っている。
「おい、ここはお前らの持ち物じゃねえぜ。持ち主に許可、取ったのか?」と「サンズオブユピテル」のメンバーが大声を上げながら駐車場に足を踏み入れる。
それに対し、煙草を口にくわえながら腰の銃に手を掛けた無精ひげの男が答える。「それはこっちのセリフだぜトミー、ここは4年前から俺等の縄張りだ。」「ほお・・・そうかい、そうかい。ここに昔あったショッピングモールが4年前に移転したあとここは市が管理していた筈だけどな?」「あん?市役所の奴らはここに一歩も入らなかった。奴らは仕事をせず、廃駐車場を放置した。使ってくれと言わんばかりにな!」そう言って彼らは銃を抜く。
「おいおい、そんなもの抜いちゃあ終わりだな!」とハートマンが叫ぶと同時、ハバナ・ボーイズのリーダーバラドが命令する。「奴らを一掃しろ!」
それに応じてハバナ・ボーイズの幹部バディダは肩からライフルを下ろすと、相手の後ろにある壁を撃ちまくった。その結果、衝撃音と共にコンクリートの破片が飛び散る。慌てたブラックアーミーズは「こいつらライフル持ちだ!チャカじゃあ勝てねえ!」と叫んで逃げ出す。
「あんたの助っ人、かなり心強いな!ボスに報告しとくぜ!ノースサイドコミッションの顔に泥を塗ることが出来て大喜びだろうな!」そうホートマンに声を掛けたサンズオブユピテルのメンバーがバイクにまたがったとき、1台のバンが入ってくる。
「わざわざ来たのか・・・」とサンズオブユピテルの男が困惑する中、止まったバンの中から黒いタキシードを身にまとい、顎鬚を三角に刈り上げたスキンヘッドの男が登場した。その両側には、腰に2丁ピストルを挟んだ3名の黒スーツ男女が並ぶ。恐らくボディガードのような存在だろう。
男は降りてくるなり、サンズオブユピテルの男に問いかける。「ギャングどもはここを引き払うか?」それに対し、バイカーが答える。「ああ。ボスがノースサイドコミッションの幹部連中と話を付ける。恐らくノースサイドコミッションはブラックアーミーズを切るだろうな。コミッションの指示を失った組織の末路は・・・破滅だけだ。」するとスキンヘッド男は満足そうに頷いた。「これで懸念点はなくなった。今日ももって書類上も実際も、ここはドリーさんの持ち物になるな。ところで・・・」
男はバディダ達に近づいてくる。「今回あんたが言ってた助っ人はこの人達か?」「ああ。ホートマンに手配してもらった。あんたは知ってるだろうが、こっちは明日のストリートレースの準備で手一杯でな。」「君達に感謝を申し上げなければな・・・おっと自己紹介がまだだった。俺はバーンズ。警備会社『ハワイアンジャガーコーポレーション』の代表をしている。株主のミスター・ドリーがここの駐車場を市から買い上げた話は知ってるか?」「ああ、すまん。俺等サンズオブユピテルとソルジャーオブゼウスは同盟関係にあるが手伝いを頼むときは互いに事情を詮索しないし話さない決まりでな・・・」「そうか。すまないが、今回はその決まりを破っても?」するとその問いに対し、ホートマンとサンズオブユピテルのバイカーは顔を見合わせ、頷き合う。「俺等は構わない。」「感謝する・・・」
バーンズがバディダ達に語ったのは『ハワイアンジャガーコーポレーション』の株主ドリーとサンズオブユピテルが関与する違法レースのことであった。
サンズオブユピテルは毎年1回違法改造された車で競い合うストリートレースの運営を行っており、そこに今年は「ファイヤーアーティスト」というチームがエントリーして出場が決まった。そのチームは運転の練習と車の保管場所を欲しがっていた。そこで彼らは趣味でチームに出資しているパトロンのドリーに相談した。このドリーという男、リムソンシティを拠点に活躍している実業家のビィルヘルムの息子で大金持ちであるようだ。彼はハワイアンジェファソンシティ役所の管轄下にある廃駐車場に目を付け、そこを買い取って改修しようとした。しかし彼が派遣した改修業者から聞いた話によると、役所の管理時代からその駐車場を根城にしているストリートギャングがおり立ち退かないようだ。そこでレースの主催者であるサンズオブユピテルが介入し、ホートマンとハバナ・ボーイズに頼んでストリートギャングを追い出したというわけだ。
バディダはうっかり「ビィルヘルム・・・ちくしょう!」と叫んでしまった。少し驚いたようにバーンズが眉をひそめる。「うん?どうした?」「ああ・・・なんでもない。俺とビィルヘルムには個人的な因縁があるだけさ。」
バディダは昔ビィルヘルムに雇われて汚れ仕事をしていた。しかしバディダを捕まえた警官ホランドがバディダが行った仕事をネタにビィルヘルムを脅したことでビィルヘルムはバディダと縁を切ったのだ。
「なるほど・・・だけど安心していい。ドリーさんはビィルヘルムとの間に確執がある。病弱なドリーさんをビィルヘルムは後継者として見ておらず、お気の毒なことにドリーさんはビィルヘルムの別邸に監禁中だ。一方のドリーさんはビィルヘルムを憎んで、財力を蓄えていつか復讐しようとしている。むしろミスター・ドリーとあんたはビィルヘルムと確執がある者同士として仲良くできるんじゃないか?」
一か月後
バディダはバンの運転席に座ってトランシーバーに話しかける。「ハバナ・ボーイズ、配置についた。」「了解。お前たちの警備区域はリトルジェファソン銀行までの500mだ。」「了解。」
いまハバナ・ボーイズは再び拠点であるリムソンシティからハワイアンジェファソンシティにやってきて、ストリートレースの警護を手伝っていた。レース中のコースの外側を走り、毎年レースを邪魔しようと企むサンズオブユピテルのライバルバイカーギャングを排除する役割だ。
その様子を近くのビルの屋上から双眼鏡で眺める男がいた。「ドリー様、ハバナ・ボーイズが動き出しました。」そう報告するのはバーンズだ。
それに対し、バーンズが耳に当てている受話器の向こうから甲高い笑い声が響く。「そうかそうか・・・君の傭兵を動かしてくれるかい?こっちに奴らが帰ってくる前に始末してしまおう。なにせ・・・撲の大事な臓器売買ビジネスを潰してくれたんだからね。」




