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【非表示】私の秘密を婚約者に見られたときの対処法を誰か教えてください―資料・閑話―  作者: 白雲八鈴


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伯爵令嬢と辺境伯爵 4

 先程居たウィオラ・マンドスフリカ商会王都本店の建物は、元々グラナード辺境伯爵家の持ち物でした。

 しかし、奥様と共に管理されていた軍資金をごっそり盗まれて、その補填にグラナード辺境伯爵はいろんな物を売って防衛費につぎ込んでいたのでした。

 当時私は十四歳であり、車が欲しいと駄々を捏ねたとある方からかなりのお金をぶんどっていましたから、支援するお金は十分にありました。

 隣国と隣接するグラナード伯爵領が倒れると、この国は一気に戦争に傾くことは、私でも理解しておりましたので、勿論支援することに対して躊躇はありませんでした。


 そう、一番の脅威は隣国アヴェネキア帝国。ここ近年、軍事に力を入れ周辺国を次々と呑み込んでいっている脅国なのです。十年前に若干十五歳で君主についた、テュランアリストス皇帝が領土の拡大を望んでいるらしく、十年でかなりの国々が併合または属国となっております。

 だから、目の前にいるグラナード辺境伯爵に投資する意味は十分にあるのです。……投資。投資ですか。


 私は何故か落ち込んでいるグラナード辺境伯爵を見て、とても良いことを思いつきました。これはグラナード伯爵領にとっても、私のウィオラ・マンドスフリカ商会にとっても利になることを。


 私は私が立っても十分に高さを有した馬車の中を移動し、とても暗い顔色で落ち込んでいるグラナード辺境伯爵の横に移動します。


「グラナード辺境伯爵様。ではこれではどうでしょう?私がグラナード辺境伯爵様の元に赴くというのは」

「は?」


 グラナード辺境伯爵は横目で何を言っているのか理解できないという視線を私に向けてきました。


「私がグラナード辺境伯爵様の後妻になるのです。もちろん、私が辺境領に行くということはウィオラ・マンドスフリカ商会の主力工場は全てグラナード伯爵領に移ります。ということは、多くの者たちがグラナード伯爵領に移住することになるので、工場都市ができるほどでしょう。品物で頷いていただけないというなら、後は私には私自身と私の商会しかありませんからね。如何でしょう?グラナード辺境伯爵様」


 ウィオラ・マンドスフリカ商会の主力工場は全てマルメリア伯爵領にあるのですが、少々手狭になってきたので、良い土地を探していたところなのです。


「ちょっと待ってくれ、ヴァイオレット嬢。それは色々問題がある」

「問題ですか?ああ!わかっていますよ」


 私はそう言って微笑みを浮かべます。


「後妻といっても名ばかりで構いません。グラナード辺境伯爵様の恋人の方をどうこうしようとは思っていませんよ。跡継ぎもいらっしゃるかは耳にしたことはありませんが、恋人の方とのご子息で構いません」


 私が聞いた話ではグラナード伯爵領に恋人がいらっしゃるようなのです。しかし、結婚されないということは、身分が低い方なのでしょう。


「一ついいか?俺に恋人がいるとは初耳なのだが?」

「……あら?噂ではいらっしゃると」


 私はちらりとカリンに視線を向けます。するととても残念そうな子を見るような視線で私を見ています。その視線の意味はどういうことなのでしょう?


「王妃様と第二側妃様がいくら再婚を勧めても、断り続けていらっしゃるとお二人からお聞きしましたわ。それから、南のリーヴァコスタ辺境伯爵様から恋人がいらっしゃるとお聞きしましたわ」

「ガゼェフのヤロー!」


 リーヴァコスタ辺境伯爵の名をうらめしそうに呼んでいるということは、恋人の方はいらっしゃらないようです。では、何故王妃様と第二側妃様のお話をお断りになったのでしょう。

 はっ!もしかして、これは公然の秘密だったと!まぁ!どうしましょう?私は失礼にも直接グラナード辺境伯爵に言ってしまいました。


「はぁ。ヴァイオレット嬢。そもそも貴女がマルメリア伯爵を継ぐのではないのか?」


 マルメリア伯爵を継ぐ。父であるマルメリア伯爵には私と妹のエルノーラしか子供がいませんから、必然的に長女である私がマルメリア女伯爵となり、マルメリア伯爵領を受け継ぐことになるのですが、この話には条件がありました。


「私はマルメリア伯爵領を受け継ぐことに興味はありませでしたが、妹のエルノーラは母親に似て、ある意味貴族らしく身を着飾ることばかりで、マルメリア伯爵領を受け継ぐには問題があったために、私がアズオール侯爵子息と婚姻することで受け入れました」

「それはアズオール侯爵子息と婚姻することに意味があったと?」


 ロメルド個人と婚姻する意味は無かったでしょう。私が意味を見出したのはアズオール侯爵領の地形です。

 実はあの領地には火山があるのです。ということは温泉が探せばあるはずなのです。これは個人的な価値であって、そこまで重要視することではありません。


 しかし、何故そこは私の腕を掴んでまで聞いてくるのでしょうか?


「私が価値を見出したのはアズオール侯爵領ですわ。こちらもそれなりの条件を出す代わりに、領地の一部の開拓の許可を得たのですが、その条件は私の婚約が解消された時点で無くなりましたわ」


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