4.気付いてしまったのだ
「黒川。今、何隠した?」
安心じゃなかったぁぁぁぁぁ!!!!!!!がっつり先生に見られてたぁぁぁぁぁ!!!!!!
後ろから肩をポンッ!ってされちゃったよ!俺、かなり危機的状況じゃん!ここで大人しく付箋を差し出したら、確実に変な目で先生に見られちゃう!
……なぁんてね。ちゃんとこんな時もあろうかと対策はしてあるんだよ。それがこれだ!
「ああ。先生すみません。今日の買い出しのメモを入れてたので回収してました」
「ん?買い出しのメモ?」
俺は「盗まないでね」と書かれた付箋の入ってるポケットから、別の付箋を取り出す。それには、何日か前の買い出しメモが書かれたいた。
数日前のものなんだけどねぇ。誤魔化すのには使えるでしょ。
「じゃがいも。糸こん。牛肉……さてはカレーだな!」
俺の付箋を読んだ先生が、目茶苦茶キメ顔で言ってくる。先生は結構美形だから、こういう顔でも可愛く思えるんだよね。ただ非常に残念ながら、
「肉じゃがですね~」
「な,何だと!?」
カレーではない。というか、俺はカレーに糸こんを入れたことはないんだけど。入れる家庭もあるのか?隠し味とか言われると、あり得ないとまでは言えないからなぁ。
……なんてことがありつつ、荷物チェックは終了。俺も校則違反になるようなものは持ってきてないから、特に問題なく帰れた。帰り道の途中、さっき先生と話してカレーが食べたくなったので買い物に。
「ありがとうございました~」
買い物を終えた俺は、カレーの食材を持って店を出る。すると、
「ん?先生?」
「おっ。黒川か」
入り口の前でばったりと先生と会った。
あれ?先生の帰る時間っても少し遅いイメージだったんだけど。……働き方改革とかいうので早く帰れるようになったのかな?
「買い物か?」
「はい。先生もお買い物ですか?」
「ああ。そのつもりだったんだが………少し話をしていくか」
先生が俺の横に立つ。どうやら俺の帰り道に着いてくるつもりらしい。
「話って、何の話ですか?」
「ただの他愛もない世間話だ。………最近、いじめられてないか?」
「ええ。イジメはないですよ」
「イジメは?イジメじゃない何かがあったのか?」
「え?あ。い、いえ。……何にもないです」
「……そうか。それなら良いんだが」
あ、危ない!先生が鋭くてビックリだ。まさかちょっとした言い方で何かあったのを見抜かれるなんて。
……先生のことは信用してるけど、流石にパンツの件を相談するのもどうかと思うしなぁ。
「あっ!」
「あ?……って、先生!?」
俺がパンツの件を考えながら歩いていると、先生が前のめりに。俺が慌てて手を出すが、その手は空振りに終わって、
ドテッ!
「っ!……い、つつつつつ」
こけてしまった。しかし、問題はそこではない。こけた拍子にその短めのスカートがめくり上がり、
く、黒いレースのパンツ!
思わず俺はパンツを見てしまった。慌てて目をそらすが、なんだか引っかかりを覚える。そう。そんなパンツを最近どこかで見たよう、な…………
「いつつつ………ん?どうした?黒川」
「………先生。今日、夕飯俺の家で食べていきません?」
真実らしきものに至ってしまった俺の顔を見て、先生は首をかしげる。そんな先生を俺は夕食へと誘った。
「ど、どうした急に」
「いやぁ~。ただのお詫びですよ。先生がこけたときに、一瞬見えちゃったので」
「見えちゃった?……って、まさか!?」
先生の表情が変わった。普通は見られたら恥ずかしがると思うのだが、その表情には諦めが読み取れた。落ち込んでいるようにも見える。……俺の予想通りなんだろうな。
「……食べていく」
「はい。では行きましょうか」
ほぼ確定と言っても良いだろう。俺の予想だと先生は、例の変態集団の1人だ。捜索初日にして1人発見である。好調な滑り出し、と言っても良いのだろうか。
「ただいま~」
「お、お邪魔します」
家に帰り着いた俺は、先生と共に部屋へと入る。先生は緊張した顔持ちだ。
「今からつくるので待ってて下さい。先生のリクエスト通り、今日は糸こん入りのカレーですよ!」
「え?」
「あっ。そのソファーとかは勝手に使って構いませんので。勿論テレビもご自由に」
「え?あっ」
先生が困惑している間にキッチンへと向かう。暫く先生は呆然としてたけど、俺が料理を見始めたのを見てソファーへと座った。
ちょっと距離の置き方が強引すぎたかもしれないな。ただ、人の体操着を盗む人にどう対応すれば良いのか分かんなかったんだよ。しかも変態女子一同って書かれてたから、あのメンバーに先生が入ってるのは完全に予想外だったし。こうして料理を作っている間に、できるだけ心を落ちつかせる対応を考えるんだ。
なんて思ったんだが、完全に落ち着く前にカレーは出来てしまった。もう何日か心の準備期間が欲しかったな。心の準備が出来る頃にはカレーもしっかりしみていて、もっと美味しくなってる事だろう。
「はい。完成しましたよ」
「お、おう。ありがとう」
「「…………」」
俺が皿をテーブルに置くと、先生はお礼を言って席に着く。それから、少しの間気まずい沈黙が訪れた。居心地が悪いので、
「食べましょうか」
「あ、ああ。そうだな!いただきます!」
「いただきます」
俺たちは揃って食事に逃げる。野菜やらを食べて、こんにゃくにもチャレンジ。
「ん。悪くはないですね」
「そ、そうだな。こんにゃくも悪くないな」
「「…………」」
会話が続かない。空気が重い。先生だから食事中に喋らないってマナーを守ってるのかとも思うが、そう言う風にも見えない。
そんな気まずい中、みるみるうちにカレーは減っていき、
「ご、ごちそうさまでした!」
「……ごちそうさまでした」
食べ終わってしまった。空になった皿を見て、それから視線を上げると先生と目が合う。先生は俺と目が合うと視線を踊らせ、
「あっ。えっと、その、だな」
「はい。何ですか?」
「………食事を食べさせてもらったわけだし、お礼が必要だと思うわけだよ」
【???】
ぬおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!?????バレてしまったぁぁぁぁぁぁ!!!!!
絶対あいつらに後でいじられるぅぅぅ!!!!