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ユニークスキル

 既にレイナたちによって大鳥たちは全て倒されていたが、すぐにクランからの救援がやって来た。

 救援に来てくれた人の数は10人を超えていた。

 皆白地に黄色の縁取りをしたコートを着ている。

 回復魔法が使える救援者によって怪我をした人の治療や戦闘不能となった人の蘇生が行われた。

 一方前衛の救援者は周辺エリアの探索を開始し、負傷者の回収や敵の探索で何人もが草原を駆け巡る。

 俺は二十代前半ぐらいの青年の僧侶に治療呪文を掛けて貰っていた。

 ふちの細い黒縁の眼鏡を掛けていていて物腰が柔らかい知的な感じの青年だ。


「大丈夫ですか?」

「なんとか」

「背中の傷が深いですね。すぐに治療しますね」


 治癒呪文を掛けて貰うと一瞬で背中や腕の痛みが飛んだ。

 治療を受けた負傷者が続々とカオルと俺の周りに集められる。

 さっき俺に治療をしてくれた青年が俺たちに話掛けて来た。


「このイベントの主催者の方は居らっしゃいますか?」


 カオルが即座に答える。


「はい! 私です!」

「君が主催者のカオル君ですね?」


 頷くカオル。


「大変な災難でしたね。レイナ君より話を聞いて救援に来ました。参加者の人数を正確に把握してますか?」

「52人です」

「助かります」


 すると青年は辺りを見て救援済みの参加者の人数を数えると周りに知らせる様に叫んだ。


「残り3人です!」


 3人とは行方不明者の数らしい。

 その声を聞いた猛者たちが慌ただしく動き出す。


「見つけました!」

「ここにも!」

「こっちにも居ました!」


 すぐに残りの行方不明者3人が見つけられ、治療を受けた後に俺たちの元に連れて来られた。

 それを確認すると青年がカオルに向けて話し掛けた。


「52人の参加者全員の無事を確認しました。ここでの長話は危険です。さ、すぐにジェネシスの街の防壁の中に向いましょう」


 救援隊を先頭にして更に数が膨れ上がった集団の移動が始まった。

 カオルが青年に向かって丁寧な口調で礼を言う。


「助けに来てくださいましてありがとうございます」

「いえいえ。お礼ならレイナさんに言って下さい。彼女には何度も助けられたのでそのお礼みたいなもんですよ」


 その後、特になにも無くジェネシスに着いた。

 参加者一同から歓声が沸き上がる!


「着いたぞー!」

「今度こそジェネシスだ!」

「やったー!」


 先ほど俺を治療してくれた青年とレイナがクランに戻る様で俺たちに話しかけて来た。


「それじゃ僕たちはクラン会館へ戻りますので……では後ほど」

「はい! あとで伺います」

「お兄ちゃんまたね! 一時間後にクラン会館でね」


 カオルが救援に来てくれた人たちに礼を言うと、イベント参加者の前に立って締めの言葉を言った。


「皆さんありがとうございました! ここで遠足イベントは解散します! また機会が有りましたらよろしくお願いします! ホームポイントを設定するまでが遠足ですからね。忘れたらビレジの教会に死に戻りだからな~」

「あははは」


 なんか受けてた。

 冒険者はみなカオルに感謝していた。


「ありがとー!」

「またねー!」

「またよろしくー!」


 参加者たちは感謝の言葉を次々と口にすると、ジェネシスの街の中へ消えて行った。

 その中で俺たちに声を掛けてくる冒険者が居た。


「よう! お前ら! お前らもこれ交換に行くんだろ?」


 話し掛けてきたのは昨日パーティーを組んだ武闘家のカツヤである。

 そしてこれと言って手に持っていたのはギルドで貰った特別褒章であった。


「よう! カツヤ! お前も参加してたのか?」

「なに冷てー事言ってるんだよ! 今朝挨拶しただろ! 今朝!」

「そうだったっけ?」

「そうだよ! 挨拶してたろ! 忘れんなよ!」

「わるいわるい」

「道中はお前のツレのカオルが主催でテンパっちゃってるから話し掛けづらかったけど、解散してやっと話せたわ」

「あれ? お前の横に居るのは昨日パーティー組んだコトリと、サトさん、ウミさんじゃないか!」

「どうだい! 凄いだろ! ハーレムだぜ! ハーレム! もてる男は辛いねー! なあ羨ましいだろ?」

「ハーレム違うよ! ハーレムじゃない!」

「そうですよ。ハーレムとは違います!」


 必死に否定するのは盗賊のコトリと魔法使いのサトだ。


「だよな! こんなうるさいのだけが取り柄の奴に惹かれる女の子は居ないわー」

「そそ。昨日ギルドに戻ったらレイジとカオルとはぐれちゃってさ、そのあとカツヤが半泣きで『俺どうすればいい? どうすればいい?』って大騒ぎしだして泣きつかれちゃって……結局それから私たちずっと一緒なんだ」

「コトリ! バラすなよ! ところでレイジ、お前冒険者ギルドに入ったらどこ行ってたんだよ!」

「俺とカオルは有料カウンターに行った」

「ちょっ! おま! 有料カウンターって一回500ゴールドも取るとこだろ? そんな高いとこよく使う気になるな」

「高いけど疲れてたから、長時間並びたくなかったし」

「お前ひょっとしてすげー金持ちなのか?」

「いや全然」

「そんな無駄遣いしてたら装備買う金無くなるぞ」

「その時はその時でクエストやって稼ぐさ」

「まあいいや。取りあえずみんなで冒険者ギルドに行こうぜ!」

「おう!」


 ジェネシスの冒険者ギルドは冒険者でごった返していた。

 初期村の冒険者ギルドと違い非常に大きい。

 受付カウンターも300ぐらいは有るんじゃないかって位、横に並んでいた。

 それでも混んでいるあたりがこの街の規模の大きさを物語っている。


「すげー混み具合だな。こりゃ。村の時より行列が長いな」

「行列の先のカウンターが霞んで見えないよ」

「また一時間位、行列オンラインだね」

「俺行列に並んだこと無いんだけど、やっぱその位並ぶのか」

「報告はそれほど掛からないんだけどね。受けるのに時間かかるみたい」

「カオル、一時間ぐらい掛かるっていうけどどうする? 後にするか?」

「一時間後に用事があるからそんなに並んでられない。ここは有料カウンターだな」

「マジかよ! またお前らまた俺らを捨てて有料カウンターを使うのかよ!」

「と、言う事でまたな!」

「おい! ちょっと待てよ!」

「じゃあ、お前らも500ゴールド払って有料カウンターに来るか?」

「……いや、行ってら」

「じゃ、コトリと、サトさん、ウミさんまたなー」

「おう! またなー」

「またねー」

「またですー」


 有料カウンターへ行くと三人だけの待ちだったので五分ちょっとで俺たちの順番が廻って来た。

 

 笑顔の受付嬢が挨拶をしてきた。


「今日はどのようなご用件ですか?」

「これを交換して欲しい」


 俺がギルドカードと特別褒章を渡すと受付嬢は驚いた様な顔をした。


「クエストで手に入れられた褒章ですか?」

「はい」

「おめでとうございます!」


 ギルドカードを受け取ると、金管楽器ファンファーレと共にカウンターの上に設置された縦1メートル横幅100メートル以上有る電光掲示板に俺の顔と名前が映し出され流れる。

 自分の顔が大映しされるとちょっと照れる。

 そして俺の頭の中にもファンファーレが流れカットインメッセージが表示された。

 

 ──レイジはレベル28になりました。


 次はカオルの番だ。

 カオルがギルドカードと特別褒章を渡すと俺と同じように顔と名前が映し出される。

 カオルの素顔を見たこと無かったが予想通りと言うか想像以上に整った感じの黒髪で容姿端麗なまるで女みたいなイケメンだった。

 間髪開けずにカオルが叫んだ!


「うお! おお!?」

「どした?」

「おおおおおおおおおお!?」

「おい?」

「詠唱速度0のレアスキル、きたぁぁぁぁ!!!」

「おめでとー!! 魔法戦士向きなスキルだな」

「ありがと! ありがと! ありがとー! マジ俺ついてる!」


 普段は冷静なカオルがかなり興奮している。

 それ程に『詠唱時間0』は魅力的なスキルと言う事だ。


「レイジは?」

「なんだろこれ……?」

「どした?」

「サイクルスチールだって」

「聞いたことないスキルだな」

「説明が『敵のサイクルをスチールする』だって……意味わからない」

「ずいぶんといいかげんな説明だな。スチールだから敵のアイテムでも盗むのかな?」

「どうやって使うんだ?」

「さー? 聞いたことないし、そのいいかげんなスキルの説明からすると製品版から急遽追加されたスキルかな?」

「この説明じゃ使い方がさっぱり解らないぞ」

「『魔法』や『特技』の欄に何か新しいコマンドが追加されてないか?」

「ん~。見た限り全く追加されてないな」

「となると、常時発動系のパッシブスキルか……」

「パッシブスキルって?」

「コマンドを選ばなくても効果が常時発動してるスキルの事さ。俺の『詠唱時間0』も常時発動だからいつでもユニークスキルの恩恵を受けれるんだ」

「なるほどな。俺のスキルが常時発動らしいと言う事は解ったんだが、肝心の効果がさっぱり解らないから後で神聖騎士団のクラン会館に行った時に聞いてみるか」

「そうだな。じゃクランメンバーなら誰かは知ってるだろう。そう言えばもうそろそろクラン会館に行く時間だろ? クラン会館に行く前に宿屋に行ってシャワーでも浴びようぜ」

「そう言えば体中泥だらけだな。こんな埃まみれじゃ誰も近寄って来ないぞ」

「おまけに汗くせーもんな」


 宿屋に行き部屋を取ると俺はシャワーを浴びベッドに軽く横になった。


 色々有ったけどどうにかここまでやって来れたな。

 ネトゲっていう物も楽しい物なんだな。

 リアルの事が少し気になるが土曜日の午後二時に始めたんだから、土曜日がリアル時間で10時間、日曜日が24時間で合計34時間。

 それに時間加速の10倍を掛けると340時間でそれを一日が24時間だから24で割るとえっーと……14日で……、ゲーム内の時間で二週間ぐらいは遊んでても大丈夫だろう。

 そんな事を考えながら横になっていると、俺は眠りに落ちてしまった。

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