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第7話:4人の二次会

 かつてのクラスメイトに会えた同窓会は大成功に終わった。俺とシホ、ハガレンと旧姓加藤の4人は二次会に行こうということになった。


 きっと他のみんなは大々的に二次会に行ったのだろう。俺はカラオケって感じでもないし、はしゃぐのも得意じゃない。

 シホとハガレン夫妻は俺に合わせてくれたのだと思う。


 結局、居酒屋に行ってテーブル席でまったりしてる。もう、お腹いっぱいだし、いい具合に酔っぱらってるから、お酒を飲むためとか、食べるためじゃなくて、席代として、俺とハガレンはハイボールを注文した。シホは梅酒のソーダ割り、旧姓加藤もそれに倣った。


 俺の隣にシホ、向かいの席いハガレン夫妻が座った。大学時代の俺たちならこんな並びにはならなかっただろうけど、ハガレン達は結婚している。横並びが自然なのだろう。それだけでも、6年間という時間の流れを感じた。



「今日来た人たちの中で、『夢かなえられた人』がどれだけいたかなぁ」



 旧姓加藤が、お通しのモロキュウをボリボリ食べながらぽつりと言った。



「ほとんどいなんじゃね? みんな生きるので精いっぱいだよ」



 ハガレンが肘をついて答えた。

 そうかもしれな。俺も生きるので精いっぱいだ。みんな同じだ。



「ユウくんは、東京でなりたかった『設計』になったんやけん、夢がかなったね」


「……うん、そうだね」



 横でシホが話しかけてきたので、答えたけど「夢がかなった」イコール「幸せ」ではないような気がして、素直に返事ができなかった。



「どうなん? 東京での生活は」


「うん、仕事が忙しくて他に何も考えられてなかった。福岡に帰ってきて気づいた感じ」


「やっぱり東京はすごいね」



 何がすごいのか俺には分からなかった。



「シホは?」


「んー、一応、割と近くの商社の事務やっとーけど、私は毎日の繰り返し」


「そうなのか」



 事務をやっている話も初めて聞いた。



「そー、この間ワインもらったよね?」



 旧姓加藤が会話に割り込んできた。



「うん、輸入品の商社やけんワインとか多いみたい。たまにもらうけんお裾分け」


「あれ結構おいしかったよ」


「そうなんや。またもらったら取っとくね」


「うん」



 ハイボールのグラスの水滴でテーブルがびしゃびしゃだ。おしぼりで拭こうかと思っていたら、それに気づいてくれて何も言わずにシホが布巾を取ってくれた。



「ユウくんもワイン飲む?」



 ワインか。しかも輸入の。ワインを飲むときもあったけど、もっぱらスーパーで1.8リットル980円のやつしか飲んでなかった。紙パックに入ったやつ。



「あんまりちゃんとしたワイン飲んだことないかも」


「そか。つい、昨日新しいのもらったけん あげるよ」


「ああ、サンキュ」



 今日、集まったやつらは高校までは同じクラスだった。みんなスタート地点は一緒。そして、いまどうなっているか。


 クラスには約30人いて、大学に行ったのは10人くらい。当時の俺たちの学校はそれほど頭のいい学校じゃなかったみたいだ。


 自分の現在を自慢するやつ、嘆くヤツ。色々いたけど、幸せなやつはどれくらいいただろう。


 俺たち4人も大学まではみんな一緒だった。学校こそ違ったけど、割とよく集まった。


「理想と現実」って言葉が俺の頭をよぎった。



「ハガレン、いま幸せか?」



 ハイボールを飲んだ勢いで聞いてみた。



「まあ、家買うために節約したりして大変……」



 そこまで言いかけたところで旧姓加藤尾がハガレンを睨んだ。



「でも、可愛い奥さんがいて幸せに決まってるだろ!」



 二人の力関係も分かった。言わされている感はあったけど、それは本当に幸せだからできることかもしれない。俺はハガレンを、ハガレン夫妻を「すごい人」だと思った。


 なんだろう。俺はいつも劣等感を抱いて生きているのかな? 酔っぱらっているせいか、ちょっとネガティブになっていることに気づいた。

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