第九十三話 暗闇の中で待つもの
ヌルッと再開します。
再開を待っていてくれた方々には大変感謝です。
遺跡の大きさは高さがだいたい2階建てぐらい、面積は体育館ぐらいの広さだろうか。
今見ている正面に扉が二つある。
一応建物の外周をぐるっと回ってみたが、他に入口はなかった。
「こんな目立つ遺跡があったら、ここを通った人たちが中に入ってくるんじゃないのか?」
見た目はぼろいけど、特に崩落とかしなさそうな建物だ。
こんなに道の途中にあるわけだし、冒険者とかが探索に来るんじゃないのかな。
「・・他の人達には開けられないわ。ちゃんと封印がかかってるから大丈夫よ」
「こっちのひとがちきゅうにくるのはこまるの」
なるほどそりゃそうか。さすがにその辺りのことはしっかりしているのだな。
ただこっちの世界の人間が地球に来たらそれはそれで面白いかもしれないが・・
「・・多分もう片方の扉は下りの階段よ」
「何でわかるんだ?」
大精霊様から聞いているのだろうか?
それともちーちゃんはここを作った時に関係していたのだろうか?
「・・だってここに下りの階段がなかったら、この世界のどこかから探さなきゃいけないのよ?」
「こんなひろいところからさがすのはむりなの」
そりゃそうか。地下一階の草原フィールドとは違うのだ。
この世界のどこかから探せなんて言われたら、一生を費やしたって無理だろう。
さすがにそのあたりの配慮はしてくれているか。
「ならとりあえず右を開けてみるか」
罠が仕掛けられている可能性は限りなく低いだろうから、俺は躊躇なく右の両開きの扉を開けてみた。
そこには予想通り下りの階段があり――
そこには予想外にちみっ子が泣いていた。
「えっと・・なにこれ? 君どうしたの?」
うずくまって泣いているちみっ子に声をかけると、ビクッと反応してこちらを見上げてきた。
緑の髪のショートカットの中性的な顔立ちの子供だ。
白いワンピースを着ているのでおそらく女の子なのだろう。
「うわぁーん! やっと来たよー!」
ちみっ子はそう泣き叫びながら俺の足にしがみついてきた。
これはもしかして・・
「・・なんでこんな所にいるのよ、ふーちゃん」
「あ、やっぱり」
もはやその名前で察してしまった。どうやら3人目のようだ。
だっこちゃんの如く俺の足にしがみついて泣いているちみっ子の頭を撫でてやると、少しずつ嗚咽が止んできた。
「かぜのせいれいのふーちゃんなの」
「うん、多分そうだと思ったよ」
これで全く知らないただの女の子だったらかなりのホラーだ。
こんな薄暗い階段のある扉の内側にいるなんて・・
「そういえばふーちゃんは結局何でこんなとこにいたんだ?」
足にしがみついているふーちゃんを抱っこしてやり、頭を撫でながらそう聞いてみる。
俺の上着をぎゅっと握り顔を埋めたふーちゃんは、涙を浮かべたまま顔をこちらに向けて少しずつ話し出してくれた。
「・・あのね、僕ね、大精霊様からね、もうすぐみんなが来るから、ここで待ってなさいって言われて朝から待ってたの」
「え・・」
「でもね、いくら待っても誰も来なくて、周りはずっと真っ暗で、怖かったの・・」
大精霊様に文句を言いたい部分もあるが、ここに来た時点で俺たちがまず遺跡を調べていればすぐにふーちゃんに合流できてたってことか。
でもそのまま先に進んじゃったから、ふーちゃんは一日中ここに・・
「ごめんなふーちゃん。すぐに気付いてあげられなくて・・
」
「ううん、来てくれたからいいの」
これは家に戻ったらしっかりとご機嫌取りをしなければ。
とりあえずはおやつをたくさん出して、美味しい夕飯を出して、たくさん頭を撫でてあげよう。
エルフの村に一泊とかしなくて良かった・・
「僕もゆーちゃんと契約するね」
「ありがとう。よろしく頼むよ」
今更だがふーちゃんは僕っ子なんだな。
可愛くて大変よろしい。
俺はふーちゃんが契約しやすいように地面におろしてから、自身も膝立ちになった。
「ふーちゃんはこの者と契約します。期間はこの者が死ぬまでです」
俺の胸に触れたふーちゃんの右手から、前と同じように何かが入ってきた。
念のためにステータスウィンドウ開くと、しっかりと『契約・ふーちゃん』と表示されている。
「これからよろしくねふーちゃん」
「僕の方こそたくさんがんばるね」
鼻息も荒く拳を握って気合を見せてくれるふーちゃんだが、みーちゃんやちーちゃんに比べて頼りなく見えるのは気のせいだろうか。
そんなふーちゃんを俺は再び抱きかかえる。
「じゃあそろそろ家に帰ろうか」
「ふーちゃんばっかりずるいの! みーちゃんもだっこして!」
「・・私は肩車でいいわ」
まあ、後はポータルを使って帰るだけなのでみんなまとめて抱えて帰るか。
二人の希望通りふーちゃんは右手に、みーちゃんを左手に、ちーちゃんを肩車して俺は階段を降り始めた。
明日には例のごとくふーちゃんを『ファースト』で召喚してお披露目しなきゃな。




