第九十一話 おみやげ
さて次の魔導具は、
「これはあかるくなるの」
照明の魔導具のようだ。
こぶし大の木の箱の中に水晶のようなものがはめ込まれている。
試しに魔力を通すと結構な明るさで光ってくれる。
だがしかし、これなら100円ショップでも買えるだろう。
「地球の科学はとても優秀だな」
「・・否定はしないわ」
きっと100円ショップの物をこちらで販売すれば俺は大金持ちになれるだろう。
無論そんなことをする気はないけど。
「・・これなんてどうかしら?」
「これはなんだ?」
木製の水筒のようだ。内側の底の方に石のようなものがはまっている。
「これはみずがでるの。でもゆーちゃんにはみーちゃんがいるからいらないの!」
そう言ってみーちゃんは俺の手から水筒を奪って、陳列スペースに戻した。
自分の役割を奪われそうなものは許さないのだろうか?
もちろんみーちゃんがいればいつでも水が手に入るし、セーフエリアに行けばそこでも飲み水は手に入る。
そもそも俺自身も水魔法は使える・・が、
「これは買ってみてもいいかもしれないな」
その俺の一言にみーちゃんが崩れ落ちた。
魔導具相手にどれだけライバル心を燃やしてるんだ?
「ゆーちゃんがうわきしたの・・」
「人聞きの悪いこと言うな。別に俺が使うわけじゃない。蓮や龍二さんにどうかと思ったんだよ」
「それならいいの」
けろっと復活するみーちゃん。
自分の立場が安泰と知ればそんなもんですか?
「・・私たちはゆーちゃんの役に立つためにあなたのそばに来たんだもの。存在意義が奪われるのは困るわ」
ちーちゃんにはみーちゃんの気持ちが分かるらしい。
確かに大精霊様はそう考えて俺のそばに寄こしてくれたのだろうが。
「確かに二人がいてくれて助かってるが、もし精霊の力が無かったとしても、俺はお前たちを捨てたりはしないよ」
「ぷろぽーずなの!」
「・・末永くお願いします」
「なんでやねん!」
この二人に手を出したらアルカトラズ直行だ。
精霊なので実際の年齢など知らないが、見た目で言えば俺の娘同然だ。
社会的に死にたくないです。
「あと使えそうなものはあるかな」
とりあえずお土産探しを続行する。
とはいえ俺にはよく分からないので、ちみっこ達の解説頼りだが。
「・・使うかどうかは別としてこれは面白いわよ」
ちーちゃんが手に取ったのは先ほど水の出る魔導具に似てるが、こちらは底がなくただの筒状になっている。
中を覗くと中心部に石が嵌っていて、貫通していないようだ。
「・・水を入れると塩が取れるのよ」
「んー、製塩装置ってことか? しかも入れるのはただの水でいいのか?」
「おみずにもおしおははいってるの」
水に入っているのはナトリウムだろ? 海水と違って塩化ナトリウムではなかったはず。
大丈夫なのか?
「・・そのための魔導具よ。ちゃんと塩にして出してくれるわ」
「何でもありだな魔導具」
さすがファンタジー。世の中の不可解なことは、きっと全てこの言葉で片付くな。
「確かに面白い魔導具だが向こうではあまり使わないな。この世界なら日用品として使えるんだろうが」
別に日本では塩は高いものでもなく簡単に手に入る。
こちらの世界では必需品なんだろうが、日本ではあまり必要のないものだ。
「この箱は何だ?」
俺はふと目に入った木箱を手に取る。
特に装飾もない宝石箱ほどの大きさの木箱を開けると、中にはサイコロのような指先ほどの大きさのキューブがいくつか入っていた。
キューブの方にはおそらく魔導具の核となっている石が嵌め込まれており、木箱には何もついていないのでおそらくただのケースなのだろう。
「それはてーぶるやいすなの」
「これが?」
とても気になったので、俺は店主のおばあさんに許可を得てキューブの一つを起動してみた。
すると瞬時に形と大きさをを変えていき、木製の背もたれのない椅子になった。
「・・よく旅をする冒険者や商人が野営の時に使うものね」
「ゆーちゃんはあいてむぼっくすがあるから、いらないものなの」
確かに俺にはいらないものだ。
だが俺以外には最高にゴキゲンなアイテムだと思う。
おばあさんに聞くと、この中には椅子が四脚、テーブル二脚、簡易ベッドが四台入っているそうだ。
これで買う物は決まった。
「水の出る魔導具とこれを買おう」
値段を聞いたところ、どちらも銀貨10枚(約1万円)だそうなので、金貨1枚を渡して水の出る魔導具を四つと家具の魔導具を六つ購入した。
「・・稼いだお金ほとんど使っちゃったわね」
「どうせあまりこちらで使う事はないだろうし、必要ならまた狩りでもすればいいさ」
買ったものはダンジョンで出た事にして、親しい人達にでもあげよう。
さすがは異世界だ。エルフにはがっかりだったが、それ以外はなかなか楽しいことばかりだった。
じゃあそろそろ帰りますか。
「・・地下四階への階段を探さなくていいの?」
・・忘れてた。
でも今日は割と満足しちゃったんだよな。
宿に泊まってみてもいいが、お金をほぼ使い果たしたのでナシだ。
やはり今日のところは帰るとしよう。




