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我が家の地下にレアダンジョンができたんですが・・  作者: エクスボーン


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第ハ十七話 虚空

 ギルドの建物も他の建物と同じく木造だった。

 中の広さは近所にある郵便局ぐらい。窓口が三つあり、入り口側の壁にはクエストボードらしきものがある。

 とりあえず俺は、一旦肩車しているみーちゃんを下に降ろした。ちーちゃんもダイフクから降りた。

 ギルドハウス内には装備をつけた冒険者らしき男女が四名と、カウンター内側に職員らしき男女が二名いた。

 当然だが全員の目がこちらを向いた。こんなところで子連れの人間など目を引くだろう。

 すると冒険者らしき女性のうちの一人が、ふらふらとコチラに近づいてきた。

 テンプレだと普通こういう場合は、いかつい男が難癖つけてくるものだが。

 ・・このパターンはあれだ。


「か、かわいい!」


 二十代前半くらいのその女性は、みーちゃんとちーちゃんの前にしゃがんで二人に目線を合わせると、腰に下げていた袋から何か取り出した。


「お嬢ちゃん達、よかったら干し肉食べる?」


 桜木亭のお姉さん達だったらここはお菓子なんだがな。


「たべるの。ありがとうなの!」

「・・せっかくだし私もいただくわ」


 この子達は食べ物だったら何でもいいのだろうか?

 このパターンで誘拐とかされてくれるなよ?


「ありがとなお姉さん」


 二人がもらった干し肉をかじかじしてる間に、俺もその女性にお礼を言っておく。


「とっても可愛いお子さんですね! 思わずお肉あげちゃいました」


 赤髪のショートヘアの女性は立ち上がりながら、てへりとそんなこと言ってきた。

 身長は160ぐらいだろうか。革の鎧らしきものと腰には短剣と長剣をそれぞれ一本ずつ差している。


「私、シェリルって言います。あっちの三人とパーティを組んで活動してます」

「俺は豊で、この二人はみーちゃんとちーちゃんだ」


 ちみっこ達が自己紹介してなかったので、一緒に名前を教えといた。


「みーちゃんとちーちゃん? 変わった名前ですね」

「二人は精霊だからな」


 俺がそう教えてやると建物にいた全員がギョッとこちらを向いた。

 おや、ここにいる人達はエルフじゃなくてだだの人間なのだろうか?

 エルフなら気づくのだろうし。


「精霊ってこんな可愛いんだ⁉」


 突っ込むところはまずそこなのか?

 シェリルが驚いて二人を見ていると、その仲間達三人もこちらにやってきた。

 その中の一人の黒髪の男性が俺の方に進み出る。


「シェリルが急にすまない。俺は『虚空』のリーダーのトーマスです」


 トーマスはそう言って右手を出してきたので、俺も名乗って握手をしとく。

 『虚空』というのはパーティーの名前なのだろう。


「精霊連れてるなんてすごいな。と言うか人と一緒に行動するものなのか?」

「まあ成り行きで仲間になってるようなものだ。あまり深く考えないでくれ」


 とは言ったものの、成り行きで仲間になるはずはないだろう。

 しかし説明が難しいのでその辺りは割愛だ。


「その格好はユタカも冒険者なんだよな? 装備も変わってるな」


 トーマスが言うように俺の装備は両手のカイザーナックルとケブラー材のチョッキだけ。

 カイザーナックルを使うようになってからは盾さえ使わなくなったから、防具に関してはほぼつけてないように見える。


「冒険者ではあるんだが、事情があって冒険者登録をして身分証が欲しいんだ」

「登録してないのに冒険者なのか? まあ確かに新人って感じはしないけど」


 それは見た目の年齢のことか? 子連れのおっさんだと新人には見えないってか?


「ギルマス、冒険者の登録だってさ」


 トーマスがカウンターの中にいた男性の方に声をかける。

 ということはあの人がギルマスなのだろう。


「手続きはあの人がやってくれるよ」

「サンキューな。ちょっと行ってくる」


 『虚空』のメンバーにちやほやされているちみっこ達を置いて、俺はカウンターの男性の方に向かった。


「よぉ。精霊を連れて冒険者になるやつなんて初めて聞いたよ」


 カウンターに居た男性は右目に眼帯をつけた四十代くらいの大男。眼帯男のイメージとは違い、残念ながらスキンヘッドではなく青髪の短髪だった。


「俺はギルドマスターのカイエンだ。とりあえず登録でいいんだな」

「ああ、あの二人は登録できないよな?」

「さすがに聖霊様を登録したことはないな」


 無理を承知で聞いてみたが、さすがに苦笑いをしてそう言われた。

 仕方ないので出された羊皮紙に記入しようとするが、そもそもこちらの字も読めなければ文字も書けない。


「代筆は頼めるか?」

「分かった。じゃあ書くからこっちの質問に答えてくれ」


 代筆を頼むとカイエンが記入項目を読み上げてくれ、それに対して俺が答えていく。

 出身地を東京と答えたが、特にツッコミもなく記入してくれる。

 おそらく全ての町や村の名前など覚えていないのだろう。


「これで記入は完了だ。後はこっちの冒険者カードに血を一滴つけてくれ」


 カイエンが差し出した銀色のカードに、一緒に渡された針で指を刺し、血を出してカードに付けた。

 するとカードの表面に色々な字が浮かび上がってくる。


「お疲れさん、これで登録完了だ。冒険者の説明はいるか?」

「あー、じゃあざっくりと頼む」


 あまりこちらで冒険者として仕事をしないだろうが、一応聞いておいた方がいいだろう。


「冒険者のランクはAからEまで。クエストを受ける時はボードから受けたい紙を持ってくる。魔物素材の買い取りもやってるからそっちで金稼ぎする奴もいるぞ。ざっくりとならこんな感じだな」


 実に簡潔でわかりやすい。

 やはりクエストがあるというのは異世界っぽくていいね。

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