第七十三話 計画してる時が一番楽しい
レンはしんだ。
まあ死んではいないが、俺の横で鼻の穴に塩辛と口いっぱいにパサパサになった大根のつまを詰め込まれて倒れている。
みーちゃんとちーちゃんがそんなレンを箸でつついて遊んでいる。
女性陣はその様子をスマホの動画でモードで撮影していた。
イケメンもこうなったら哀れなものだ。
「本城さん。この袋の話なんですが確かハイエース一台分入って、時間経過はするんでしたっけ?」
レンの手からアイテム袋を確保した四人。今はとりあえず神の手中にある。
その神がアイテム袋を眺めながら俺にそう聞いてきた。
「ああ。量はとりあえず色々詰め込んでみて、だいたいそんぐらい入った」
「時間経過はどうやってみたんですか? あったかいものを入れたら冷めたとか?」
「それだと袋の中と外の時間が同じだけ進んでるかどうか分からないから、時計を入れたんだ」
「時計ですか?」
安藤もその実験に興味が出たようで、俺たちの話に乗ってきた。
「時計を入れて十秒後に出しただけだ。出した時計が十秒進んでいれば外と同じ時間経過、もし五秒だったら時間経過は外の半分となる」
「なるほど。時間経過ありなしだけじゃなくて、ゆっくりの可能性もあるんですね」
「まあ実際、ゆっくりタイプの袋があるのかどうか知らないけどな」
大精霊様ならどんなタイプの袋でも作れるのかもしれないが、出回ってる絶対数が少なすぎて他の袋の情報は全くない。
比較できるのは、このアイテム袋と俺のアイテムボックスのスキルのみだ。
「ちなみに本城さんのアイテムボックスの性能って?」
「俺のはおそらく容量は無制限。時間経過は無しだ」
「規格外すぎる・・」
安藤の質問に答えてやったが、アイテム袋とのあまりの格差に愕然とされた。
基本的にアイテムボックスはアイテム袋の上位互換と言っていい。
時間経過については有りのデメリットに比べて、無しのデメリットはほぼない。
と言うか荷物をたくさん入れられるというだけで既にチートレベルなのだから、多少のデメリットなんか気にするべきではない。
「いつでも出来たての料理を取り出して食べれるなんて羨ましすぎる」
「ダンジョンで食うカレーはうまいぞ」
「うぬぬ・・」
やはり食料事情はどこのパーティーでも同じなのだろう。安藤はハンカチでも噛みそうなくらい悔しがっている。
「しかしそうなると何を入れるかを考えなきゃいけませんね。食べ物はやはりカップ麺やレトルトや缶詰などがメインでしょうかね」
「まあそうだよな。それでも今までに比べればいくらでも持っていけるのだから大助かりではあるが」
「生モノを持っていきたいのなら、とりあえずクーラーボックスに入れとけばいいんじゃないか? 誰か氷の魔法が使えるのなら毎日補充すればしばらく鮮度は持つだろう」
『天才か!』
二人が尊敬の眼差しでこちらを見てくる。
だが少し考えれば分かることだと思うのだが・・
「これで俺達も肉の入ったカレーを作ることができる!」
「魚料理だっていけるぞ。調子に乗ってブイヤベースとか作っちゃうか?」
「なんだろう、冒険者というよりキャンパーを見てるようだ・・」
まあ実際ダンジョン内でキャンプをしてるのは事実だ。
最前線で頑張ってるこいつらにはせめて食事時ぐらい楽しんでほしい。
「そうなると、あとは暇つぶし道具とか持って行きたいな」
「スマホは繋がらないから今まではトランプぐらいだったが、ボードゲームとかでも持っていけるな」
「お前ら考えることがちっちゃいな」
「え?」
確かに電波は届かないからスマホは役に立たないだろう。
けどだからと言ってなぜアナログゲームばかりを考えるんだ?
「モニターと据え置き型ゲーム機やDVDプレーヤーでも持ってけばいいじゃないか? 発電機と一緒に」
『お師匠様!』
二人は土下座して俺に感謝の意を表明してくる。
二人の中の俺はどこまでランクアップするんだろう?
「そうなると発電機は工事なんかで使うタイプがいいな」
「ガソリンで発電するタイプのやつか。予備のガソリンもある程度持ってかなきゃな」
俺も神も安藤も話に花が咲き続ける。
こういうのは実際にダンジョン前で使う時よりも、計画してる今が一番楽しいもんだ。
こんな話を肴にいくらでも酒が飲める。
哀れ、参加出来ないレンは未だにみーちゃんとちーちゃんのおもちゃにされているが。
「装備品に関しても破損した場合を考えて、予備を持っていくことが出来るのもいいな」
「ああ。今までは荷物になることを考えてサブウェポンぐらいしか持って行けなかったが、防具一式持っていくことだって問題ないだろう」
「お前達は今まで台車を引っ張って行ったんだっけ?」
「そうなんですよ。いつもデカいからって俺が引っ張らされてました」
「お前の扱い大概ひどいな!」
安藤はこの中で奴隷的な扱いなのだろうか?
デカいって損な話だ。
「でも実際これでかなり攻略がはかどると思いますよ」
「そうだな。腹いっぱい食えてポーションだっていっぱい持ってける。ダンジョンに潜ってるストレスも遊び道具や嗜好品を持ってけば緩和出来るし、それでいて移動中の荷物は全くないのだから、これで攻略できなきゃ本城さんに合わせる顔がないぜ」
「まあ逆に、これが原因で気を抜き過ぎてやられないようにな」
アイテムボックスを持って初めてダンジョンに潜ったら、今までとの違いにきっとテンションは高くなるだろう。
浮かれて魔物にやられないようにしてもらいたい。
彼らが無事に二十階を突破できることを願う。




