第六話 開かれた口
いっぱい書くつもりだったのに夕方まで爆睡してしまった。
休みって怖い・・
少なくとももう一話はアップする予定です。
時刻は23時。
風呂に入って、寝る準備でもしようと思い、二階に着替えを取りに行こうとした時、
がしゃん・・
地下からだろうか、何かが倒れた音がした。
泥棒・・一瞬そんな考えが頭をよぎったが、家にはたいして金目の物はない。
だからといって油断は出来ない。
念の為にそばにあるショートソードを持って、地下に下りていく。
階段を降りきった先には扉があり、その中は20畳ほどの倉庫になっている。誰かいても逃げ場はない。
体を鍛えており、冒険者でそこそこレベルがある俺なら、ただの泥棒程度に遅れはとらない。
意を決して扉を開ける。
「・・・・」
中に人の気配は無い。
入口横にある電気のスイッチを入れる。
明るさに目が慣れたところで、室内を見渡してみる。
赤いカーペットが一面に敷かれた倉庫内には、使わなくなった家電品や、読まなくなった本を入れたダンボール箱。古着を詰め込んだプラスチックの収納ケースなどがある。
そして一番奥。スチールラックが倒れて、棚に飾ってあった観光地のお土産屋にありそうな置物が散乱していた。
原因を探るために近づいてみる・・何だあれ?
ラックのあった場所のカーペットが二畳分ほど沈下している。
この地下室は真っ平になっていたはずだ。
あんな大きな穴は開いていなかった。
考えられるのは地盤沈下あたりか? 役所とかに報告したほうがいいのか?
とりあえずショートソードを置いて、ラックを穴の開いてない場所に立てた。土産物たちも雑にではあるが棚にのせておく。
さて、一応穴を調べてみよう。
場所は地下室に入った扉の、ちょうど真向いの壁際。
なのでカーペットの辺の部分になっている。そこをめくってみる。
・・さらに突っ込みどころが増えた。
とりあえずカーペットを切断する必要がありそうだ。
この後のことを考え、念のために準備をしてきた。
まずは大ぶりのカッター。カーペットの切断用だ。
これで穴が開いている範囲を切っていく。
すると現れたのは穴・・と階段。
そう、地下に向かう階段がそこにはあった。いや、ここも地下だけどさ。
さらに問題なのは、その階段の先が明るいことだ。
さっきカーペットをめくった時に見たこの光景。頭によぎったのはダンジョンの特徴だった。
『ファースト』の入り口と同じ。階段があり、その先のダンジョン内部は光源もないのに明るい。
十四年もの間通い続けているのだ。頭にぱっと浮かぶ光景に酷似している。
ダンジョンの発生はランダムだと言われている。
今まで見つかっていないだけで、海の中や山間にもダンジョンがあるのかもしれない。
そして、当然個人所有の土地に発生することもある。
日本の場合は大分県と島根県にあるダンジョンがそれにあたる。
23年前、初めて大分県佐伯市で民間の土地にダンジョンができた時、所有権について国と地主でもめて、裁判が最高裁までもつれ込んだことがあった。
多大な利益を生み出すダンジョンだ。国としてはなんとしても確保したかったようで、地主に数十億での土地の買取りを提示したそうだが、地主側はそれを拒否したそうだ。
判決としては、ダンジョンの所有権は地主側にあるということになった。
その判例があったので、島根県のダンジョンの時はもめることもなく地主が所有者となった。
二つのダンジョンの地主は国ではなく市と協力し、町の発展に成功している。
また地主も多大な利益を得ることとなった。
まあ金の話はともかく、ダンジョンがここに現れる可能性はあり得るということだ。
とりあえず内部の様子を見てみよう。
カーペットをめくった時の直感に従い準備してきた装備品を身に着け、慎重に階段を下りていく。
約一階分階段を下ると金属製の扉とワープポータル、そして石碑が置いてあった。ここは『ファースト』とは違っている。
あっちは階段を下りたら即ダンジョンだった。ポータルがあるのは同じだが。
そしてポータルがある時点でここはほぼダンジョン確定だろう。
とりえず石碑を見てみる。
「・・日本語?」
そこには日本語で文章が書かれていた。ダンジョンで他の文字を見たことがないが、共通言語は日本語なのだろうか? それとも日本のダンジョンだからなのか? 相変わらず謎の尽きない場所だ。
石碑にはこう書かれていた。
『単独で戦い続ける者に捧ぐ』
・・これは何なのだろう。
何もかもが出来すぎているようで、とても気持ちが悪い。
誰かが俺を見ていて、こんなダンジョンを用意したようにしか思えない。
冒険者を諦めようとしていた俺の前に、辞めさせないために用意したダンジョン。
いや、そう思わせて油断している俺を誘い込む罠・・
考えすぎなのかもしれないが、いろいろと邪推してしまう。
入るべきか入らざるべきか。それが問題だ。