第六十六話 ちみっこ達の撮影
しばらく探索していたらお目当ての魔物が見つかった。
俺たちが来る時にも見かけたが、今回の撮影にうってつけの相手になる。
「いたぞ、レッサーデーモンだ」
先頭を歩いていた龍二さんが、小声でこちらに知らせてくれた。
レッサーデーモン・・ラノベでもおなじみの下級の悪魔的なやつなのだが、その見た目はブラッ○デビルにしか見えない。
頭も含めて全身が黒タイツで覆われているような見た目でシロタイツ・マッチョを彷彿とさせるが、こちらはかなり細身の体だ。
頭からは三本の触覚が生えており、両耳は翼のように大きくなっており、さらに武器として三又の槍を持っている。
「イィーっ!」
たまに今のように引き笑いのような鳴き声を出す。
とりあえずまだこちらには気付かれていないので、こっそり撮影の準備を始める。
「二人は準備大丈夫か?」
「いつでもいけるの!」
「・・問題無いわ」
ちみっこ達もステッキを片手にやる気満々である。
ちなみに台本などは特になく、基本的にはニ人のアドリブに任せるらしい。
NGが出たとしてもまたブ○ックデビル・・いや、レッサーデーモンを探して撮影すればいいだけだ。
「お待たせしました、準備オッケーです」
甲斐さんからお声がかかり、みーちゃんとちーちゃんは顔を合わせて頷きあった。
「いってくるの」
「・・ちゃんと見ててね」
二人は俺にそう言うと勢いよくレッサーデーモンの前に飛び出した。
「まおうのてさきめ! そこまでなの!」
みーちゃんの声にレッサーデーモンが振り返った。
「・・私たちが来たからにはこれ以上の悪事は許さない」
「イィーっ!」
レッサーデーモンも何故かこちらに合わせるように一声鳴いて、槍を二人の方に向けた。
「まほうしょうじょせいれい、みーちゃんさんじょうなの!」
「・・魔法少女精霊、ちーちゃん参上」
二人はステッキを掲げて決めポーズを取った。
魔法少女精霊・・ちょっと語呂が悪いな。
「だんじょんのへいわは――」
「・・私たちが守る」
「イィーっ!」
二人がセリフを決めたところで、レッサーデーモンが槍を突き出して襲いかかってきた。
「・・土の壁」
ちーちゃんがそう言いながらステッキを振るうと、地面から土の壁が現れレッサーデーモンの槍を防いだ。
同時にみーちゃんが壁の上へと浮かび上がる。
「すいだんなの!」
みーちゃんもステッキを振るいながら魔法を発動する。
三発の高密度の水弾がレッサーデーモンに直撃する。
そもそもこのフロアを徘徊している魔物なのでそんなには強くない。
二人は止めの一撃を決めるべく、並んでステッキをレッサーデーモンに向ける。
「ひっさつの――」
「・・マジカルシュート」
二人のステッキの先から石弾が入った水流が放たれた。
「イィーーーーっ!」
弱っていたレッサーデーモンはこの一撃に耐えられずに、断末魔を上げて消滅していった。
そして二人がカメラの方に振り向き最後のセリフを決める。
「わたしたちがいるかぎり――」
「・・このダンジョンは渡さない」
ビシッとラストポーズも決めた。
・・可愛すぎるだろ。
「はいオッケーです!」
甲斐さんの言葉に、二人はポーズをやめてこちらに戻ってくる。
短い戦闘ではあるが、二人だけであまり危険な戦いをさせたくない。
間違ってもシロタイツやメイジ・ウィーズルなんかと戦わせるわけにはいかない。
もしかすると家のダンジョンの方であれば大精霊様がちょうどいいのを見繕ってくれるかもしれないが、向こうに他の人間を入れるわけにもいかない。
「二人とも最高にプリティーでしたよ!」
アレンがやばいぐらい興奮している。
こいつがリアル魔法少女なんか見れば、そりゃこうなるだろうな。
「ゆーちゃん、どうだった?」
「・・上手くできてた?」
「もちろんバッチリだ。非の打ち所もない」
・・親の贔屓目と言うな。
ちみっこたちが頑張ったのだ。文句つける奴などぶっ飛ばす。
「実際にはこれにエフェクトなどをプラスして編集しますので、もっとカッコ良くなりますよ」
「是非お願いします」
もうこれは永久保存版だ。代々本城家の家宝にしてやる。
二人が大きくなったらみんなでこの動画を見るんだ。
きっと二人は恥ずかしがるのだろう。
・・ん? 二人は大きくなるのか?
「とりあえずこれで今日は終了だな」
「私は大満足です。日本に来て今日が一番幸せな日かもしれません!」
アレン落ち着け。
龍二さんの言うとおり、今日の目的は達した。
後は十一階のポータルから出ればおしまいとなる。
「では撤収準備始めますね」
リユニオンのメンバーが機材の片付けを始める。
少し時間もかかりそうだったので、みーちゃんとちーちゃんにオレンジジュースを出してやった。
「ところで豊、さっきのアイテム袋あれはどうするんだ? 売るのか?」
龍二さんがそう聞いてきた。
俺がアイテム袋を持っていてもしょうがないと分かっているからこその疑問だろう。
「レンにあげるつもりです。前に約束もしましたんで」
「なるほどな。一番有効活用してくれそうだ」
この袋の容量がどのくらいだかは分からないが、少しでも荷物を多く持っていけるようになれば、レンたちも助かるだろう。
俺が直接レンたちのところに行って手助けすることはできないので、せめてこいつに役立ってもらおう。
「撤収準備終わったんでそろそろ帰りましょうか」
しばらく話していたら甲斐さん達の準備が終わったようなので、移動開始することにした。
十一階に向かうために、再度ボス部屋を通ることになる。
一度ボスを倒した者の前にはもうボスは現れないので、すんなり通り抜けることができる。
そのまま階段を降り十一階のポータルを俺達はくぐり抜けた。




