第四十五話 アイテムボックス
一階のワープポータルに着いた俺たちはアイテムボックスからスキルブックを出し、桜木亭に向かった。
時刻はちょうどお昼ぐらい。
高倉さんに報告が終わったら、桜木亭でお昼を食べるとしよう。
その後はどうするか?
本当は狩りをする予定だったがアイテムボックスが手に入り、一度こうして外に出てしまったからもう一度潜るのもなぁ。
まあ、昼飯を食べながら考えるか。
受付で高倉さんに連絡をしてもらう。
許可をもらったので、俺たちは二階の高倉さんの部屋に向かった。
コンコン
「本城です」
「みーちゃんもいるの」
「どうぞ」
ノックして二人で名乗ると中からすぐに返事があった。
「失礼します」
「こんにちはなの」
中に入ると高倉さんは書類仕事をしていた手を止めて、こちらを向いてくれた。
相変わらずデスクワークばかりで不健康そうな感じがする。
高倉さんとはこの建物以外で会ったことがないな。
たまに食堂で見かけるがそれ以外はずっとここにいる気がする。ここに住んでないよね?
「どうかしたかい?」
「ちょっとご報告がありまして」
余計な考えを中断して、とりあえずここに来た目的を話すことにする。
「実はダンジョン内でとんでもないものを見つけましてね」
「ちょっと前にも似たようなことがあった気がするけど・・」
「今回はどちらかと言えば良い事だとは思いますよ」
そう言って俺は手に持ってたスキルブックを高倉さんに差し出した。
「これは・・え?」
高倉さんもすぐにこれが何なのかわかったらしい。
冒険者ではないが、伊達にギルドマスターやってるわけではないようだ。
「これはスキルブックだよね? 初めて見たよ」
高倉さんも現物を見るのは初めてのようだ。
実際『ファースト』でスキルブックが見つかった例は今まで報告されていない。
まあこのスキルブックにしても大精霊様からのプレゼントだから、偶然見つかったものではないけど。
「すでにスキルは覚えたのでその本自体はもう必要ないので、高倉さんいるかなと思って」
「確かにどこかに飾ってみてもいいかもしれない。他の冒険者たちにも見せてあげたいしね」
高倉さんの言うとおり大多数の冒険者はスキルブックなんか見たことはないだろう。
建物内のどこかに展示するのもアリかもしれない。
「ところでこのスキルなんだけど、名前の通りだとおもちゃ箱みたいな箱が出てくるのかい?」
ん?
高倉さんはアイテムボックスをよくわかってないみたいだ。
ラノベや漫画を読まない人だとこんな反応になるのだろうか?
「別の空間に持ち物を山ほど収納できるスキルです。ダンジョン内限定ですけど、手ぶらでダンジョンを進むことができます」
「・・それってとんでもないスキルなんじゃないか?」
さすがギルドマスターと言うべきか、このスキルの重要性をすぐに理解したようだ。
「そうですね食料なんかもいくらでも持ち込めますし、収納してる物の時間は止まりますので食材が傷んだりもしません。またドロップアイテムもいくらでも持って帰ることができます」
「最前線組が喉から手が出るほど欲しいスキルだろうね」
「まぁ一番役に立てるのは彼らでしょうが、このスキルは全ての冒険者が欲しがるものですよ」
下手な攻撃スキルよりアイテムボックスは役に立つ。
まさにチートといっていいレベルだ。
しかしこのスキルは俺にとってはさらに役に立てることができる。
なぜなら家にもダンジョンがあるからだ。
他の冒険者だとアイテムを出し入れするためにはわざわざダンジョンまで赴かなければならないが、俺なら家の中にダンジョンがあるわけで、好きなものを人目を気にせずに出し入れできる。
例えば家で作った料理を熱々のまま収納することができるのだ。
長期間潜る時にはベッドなんかを持ち込んでもいいかもしれない。食事用の椅子やテーブルもあったら便利だろう。
生肉や野菜なども、鮮度を落とさず保管もできる。
なんて夢の広がるスキルだろうか。
とりあえずはみーちゃんのための豆大福を山ほどしまっておくか。
「じゃあありがたくこの本はもらっておくよ。しばらくしたら受付の近くにでも展示しておくね」
「わかりました」
ちなみに展示してもらえれば俺がこのスキルを持っていることをみんなに知られることになる。
本来どんなスキルを持っているかを人に教える必要などないが、展示して俺がこのスキルを持っていることを周知してもらえれば、ダンジョン内でアイテムボックスを使ってもそこまで騒がれることはないだろう。
「じゃあ今日はこれで」
「ばいばいなの」
「わざわざ報告ありがとうね」
そして俺とみーちゃんは部屋を辞した。
その足で一階の食堂に向かう。
「とりあえずお昼ご飯にしよう」
「みーちゃん、きょうはおむらいすがいいの」
「なら俺もオムライスにするかな」
そう食べるもの話してると、ふとこの後にやりたいことが出てきた。
さっき高倉さんに話していたことだ。
「そうだ料理を作ろう」
「おりょうり? おひるはおうちでたべるの?」
「いやダンジョンで食べる分の料理だ」




